『少女色見本』
初音ミクボーカルのシンプルなピアノ曲です。
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レンズの向こう、視界に捉えて薄く目を閉じた
睫毛がひかりに溶けてゆく
わたしにない色をもつあなたをいつもながめて慕う朝
あなたに唯一足りない黒は かわりに髪に揺れている
何も知らない顔をしてかろやかに生きるあなたは
少女であるほど生きやすい世界の 色見本
わたしはずっと あなたのようになりたかった
レンズの向こう、立ち尽くすあなた、
薄く目を閉じた
それすらも光に見えていた
”いっそ白に戻りたいと思っていました”だなんて
何も色のないわたしをみつめてほほえんだ
何も知らない顔をしてかろやかに生きるあなたも
少女であるほど生きやすい世界のなかで ゆれる
わたしはずっと 気づかずにただうらやんでいた
朽ちたバス停は心許なく
わたしにだって朝日はさします
ずっとあなたに憧れていたい
そしてあなたはずっとわたしに憧れていて
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作者には、親が仕事で使っていた「色見本」を、借りてきてもらって、ひたすらながめている頃がありました。「色見本」とは英単語帳程度の細長い厚紙にさまざまな色の見本が印刷されたものです(デジタル版もあります)。ながめていると、同じ「赤」や「青」に見えるものでも、実は細かい色の違いがあることがわかって、楽しかったです。
「少女」。
外から見ると、みんなおなじ「少女」に見え、またそう括られる運命にあります。
さてその中身はどうでしょう。
色見本のような細かい色調のちがいには、気づいてもらえていないのかもしれません。
ゆれながらも凛と立つ「あなた」と、そんなあなたに憧れる「わたし」、
レンズ (眼鏡かもしれないしカメラかもしれない) を隔てて向かい合う ふたり、
秋風が肌にふれるころの、やさしいふたりのお話です。
作者は告知の文章に「ガールミーツガール」と書きましたが
だれとだれでも、なんとでも解釈できるなあと思っています。
「あなた」と「わたし」のことを想いながら聴いて頂けるとうれしいです。