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kiinaco*キナコのホシヨミ

冥婚

2021.09.05 07:54

台湾のある風習のお話です。


中国や台湾では、「紅包」と言って、

真っ赤な封筒にお金を入れる風習があるのですが、

これはいわゆる「ご祝儀袋」です。


一時、SNSで、

「道端で赤い封筒(ご祝儀袋)を拾った人は、霊と婚礼を挙げなければいけない」

との噂が広まったそうなのですが、


これは、女性が未婚のまま亡くなった場合に、

その遺族が、路上に赤い封筒を置く。それを通行人が拾うと、監視していた遺族が現れ、死者との結婚を強要するという、いわゆる「冥婚の風習」の噂でした。


ここから先は、

田中美帆さんという、台湾在住のライターさんの記事から、抜粋させて頂きますが、田中さんが、

実際に「冥婚」を題材に修士論文を書いた人から聞いた話によると、


実際に赤い封筒が路上に置かれているのを見たことあるか?という質問に、「ある」と答えたのは、

20代〜70代の10人中、70代の1人だけだった。


だが、「もし路上に赤い封筒が落ちていたら拾うか?」と聞いたところ、

全員から、「拾わない。あなたも拾ってはいけないよ」との答えが返ってきたといいます。


なぜ、ほとんどの人が実際に見たことのないこの話をこれほど信じているのかと言うと、


実は、映画とテレビドラマで、この「冥婚」を題材としていた作品があり、とても反響が大きかったそうなのです。


じゃあ、そもそも、

この「冥婚」という風習は実際にあるのか、無いのか?というと、「ある」。


台北のような大都市よりも、農村部に色濃く残っているそうなのです。


ですが、「路上にご祝儀袋を置く」といった事は無いそうです。


また、冥婚の話を実際にはあまり耳にしない理由としては、地域性もあるけれど、やはり家族にとっては辛い話である事と、非常に特別な儀式である事から、執り行う事が出来る人も多くない」のだそうです。


にも関わらず、

これだけ多くの人が「冥婚」について知っているというのには、先程のテレビドラマと映画で、この風習がショッキングな描かれ方をしていた事が大きいのではないかといいます。


じゃあ実際の冥婚とはどのようなものなのか?


ベースにあるのは、

中華圏にある、男性重視と父系社会の考え方。

台湾と言うと、なんとなく母親の存在が強いように感じていましたが、実は父系社会なんだそうです。


男性の場合は、生まれると、家族の中で「房」を持つことを許されますが、女性は「房」を持つ事は出来ません。日本で言うなら、男性は分家を名乗れるが、女性は分家出来ないというのと同じだそうです。女性宮家が無いのと同じですね。

台湾の父系社会では、「男性は仕事で大成し、女性は嫁に行く、これが人生で成し遂げるべき大事である」との概念があるそうです。


そこで問題になってくるのは、

未婚の女性が亡くなってしまった場合。


台湾の伝統を重んじる家庭では、位牌を置く祭壇が設けられており、そこに故人の位牌が並べられるそうなのですが、

ところが、未婚で亡くなった女性は「房」が無いため位牌も無く、祀ってもらう事ができない。


台湾では、

死者も生きた人と同じように歳を取るので、適齢期になると、親はやはりきちんとしてあげたいと考える。そこで、未婚で亡くなった女性を冥婚させて、

相手の房に入れて、行き先を与えるのだそうです。


他にも冥婚を行う理由としては、台湾ならではの験担ぎのような考え方があります。


陰陽五行に基づく算命という占術があるのですが、

台湾では、冠婚葬祭や日常の暮らしに、この算命が深く関わっているそうです。日本の大安や仏滅に似ていますが、それよりももっとこの結果に左右されるようです。


例えば、

新郎新婦の生年月日などから、両者が結婚するのにふさわしい日を選んだりもしますし、

また、あるカップルの男性の方に「妻が2人いる運命にある」という結果が出た場合、

妻からすると、その人とは離婚の可能性があるとみなされます。

そのようなときにはどうするのか?


なんと、夫に一回「冥婚」(死者との婚姻)をさせて、自分との離婚の可能性を断つのだそうです。

これで、夫は2人の妻を持ったという事になります。

日本人の感覚からすると、かなりびっくりですが、

でも、未婚のまま亡くなった女性の遺族からしても、これはありがたい事なのかもしれない。


そして、一般的には、

冥婚をした男性は運気が上がるとも言われているそうで、大きなメリットととらえられるのだそうです。

そして、そうやって嫁がせてあげる事で、遺族は死者としっかりお別れするという意味もあるのだそうです。


冥婚とは、台湾の家制度のひずみを補おうとする工夫と、子を亡くした親心から生まれた風習であると言えそうだとありました。


最初は、なんて呪術的なオカルトな話なんだ、、

という好奇心から、色々調べてみると、、、


実際には、

全く違うもの。


簡単には変えられない制度や風習の狭間で、

亡くなってしまった人に対する想いから生まれた

風習でした。


END