#123.音楽大学 その1(入試)
クラシック系の音楽家として活動してる人のほとんどは音大を卒業した人であることかもわかるように、(クラシック系の)音楽の道に進みたい!と考えた場合、音楽大学への進学を目指す流れが一般的です。
このブログをご覧になっている方の中にも、現在音大を目指している方や、音大進学を視野に入れている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は音楽大学の入試内容や、入るために必要なスキル、大学に入学してからのことなどを複数回に分けてお話ししてみたいと思います。
ただ、ここでの内容は全ての音大に共通する話ではありませんから、具体的な進路を決める際は、様々な音大のホームページや入試要項をご覧になってくださいね。
では、今回はまず音大の入試についてのお話です。音大入試は一般大学の入試とだいぶ違います。どんな試験があるのでしょうか。
音楽大学の入試とは
先ほども申しましたが、ここで紹介する内容はごく一般的なものです。また、大学や専攻によってはこれらすべてを必要とするわけではなかったり、ここに挙げていない課題が含まれる可能性もあります。
[実技試験]
器楽専攻の場合でしたら、自分が専攻する楽器を試験官の前で演奏します。演奏する課題は決まっていて、複数の作品の中から自分で選んだり、当日試験官の先生が指定する場合もあります。何にしてもこれが最も重要です。
[副科ピアノ]
どの専攻であれ音大に入ればピアノのレッスンは必須ですから、ピアノの実技試験もあります。ただ、器楽科(管弦打楽器)の副科ピアノのハードルは結構低い場合が多く、そんなに難しい作品を演奏するわけではありません。
[楽典]
いわゆる音楽のペーパーテストです。音楽理論の正しい理解や、楽譜を適切に読む能力を問われます。
[ソルフェージュ(音楽実技の基礎力考査)]
聴音
主にピアノなどで演奏したメロディや和声(和音の連続)を聴いて楽譜に書き出す試験です。
視唱
その場で渡された単旋律の楽譜を歌ったり、「コール・ユーブンゲン」などの歌の教則本の中から当日試験官が指定する場合、リズムを取りながら歌うなど形態は様々です。ちなみに、その場で楽譜を渡されて歌う試験を「新曲視唱」と言います。
[一般教養]
よくある通常の試験です。音大では英語や現国など語学を重視する傾向にあります。大学独自の試験を実施しているところもありますし、大学入学共通テスト(センター試験)を実施する場合もあり、受験生がそれらを選択できる大学も多いです。TOEICなどでの実績があれば試験自体を免除される場合もあります。
その他、面接や小論文が課題になる場合もあり、こうして見てみるとやはり一般大学に比べるとかなり特殊な試験内容だとわかります。
入試の形態
入試の形態も近年変化してきました。ひとつ覚えておきたいのは入試の時期です。志望校の入試がいつなのかを把握しておくことで、逆算して目標が立てられますので、きちんと調べて、シミュレーションしておきたいところです。
[総合型選抜(AO入試)]
音楽大学もこの受験方式を取り入れるところが増えてきました。秋頃(10~12月)から実施されることが多く、それぞれの大学や専攻によって課題や実施方法が異なり、もちろん実施されない専攻もあります。入試課題は専攻実技と、あと何かひとつ程度など後述する一般入試に比べて課題が少ないのが特徴です。受験生にとっては負担が少ないので、ぶっちゃけ非常に楽です。しかしその楽さゆえの落とし穴があります(後日書きます)。
[一般入試]
一般入試は主に2月にメインのA日程が実施され、その後3月中にB日程が実施されることが多いです。
一般入試になると総合型選抜とは異なり、専攻実技、副科ピアノ、楽典、ソルフェージュ、一般教養などほとんどすべてが課題になります。
ところで、私が音大を目指す頃(30年近く前!)はAO入試なんてありませんでしたから、一発勝負で大層緊張したのを覚えています(しかも滑り止めにしたい他の音大が試験日程をかぶせているのも多分わざとだったと思います。だからそれもできませんでした)。専攻実技ももちろんですが、聴音と新曲が全然できなかったので、どちらかと言えばそれが最も心配の種でした。
[オンライン受験、録画審査]
昨年よりコロナ禍の対応として、オンラインでの実技試験及び面接などを取り入れる大学も増えました。リアルタイムで演奏する場合や、あらかじめ録画したもので判断するなど、形態は様々です。遠方に住んでいる受験生にもありがたいシステムだと思います。
講習会・オープンキャンパス
ほとんどの音楽大学は夏と冬に受験講習会を開催しています。これらは主に受験を控えた高校生が参加し、その学校の受験対策や実際にその大学で教えている先生に個人レッスンを受けられるイベントです。受験対策というだけでなく、大学の雰囲気やどのような施設があるのかを知り、少しの間だけ音大生気分を味わえます。
また、大学の雰囲気やそれぞれの専攻の紹介、進路相談、現役音大生のコンサートなどを聴くことができるオープンキャンパスというイベントや、高校で言うところの文化祭(芸術祭)もあるので、参加してみるのも楽しいかもしれません(コロナ禍で中止する大学が多いのがとても残念ですが)。
ということで今回は音大入試ってどんなことをするのか、ざっくりと紹介してみました。
「楽器を演奏するのが好きだから音大に行く」のはもちろん志としては悪くありませんが、現実的に見るとそれだけで音大に入れるわけではなさそうだ、というのが少し見えたかな、と思います。
次回も音大のお話、続きます。ぜひご覧ください。
それではまた来週!
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