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#126.音楽大学 その4(音楽大学で学べること)

2021.10.18 22:07

前回は「音大生は忙しい」というお話をしました。

それも含めてこれまでの過去記事は以下からご覧いただけますのでぜひ。

単位

大学は必要な単位数を取得することで進学できたり卒業できたりします。


大学ではたくさんの授業が毎日行われていて、自分が興味を持ったものを選ぶ選択科目と、その専攻生は絶対に履修しなければならない必修科目があります。それらの授業に毎週参加して、講義を受けたり演奏したりし、最後に試験を受けて合格ラインに達すれば単位取得となります(試験がない授業もあります)。この「単位」を年度末までに取得すると進級ができ、最終的には卒業できるというわけです(大学によっては単位数不足のまま進級だけして、最悪5年生とかになるパターンもあります)。


また、欠席が多かったりすると試験までたどり着けずにアウトになり、翌年度に後輩と一緒に授業に出ることになります。高校生までは登校時間が決まっていたので、「授業ごとの単位」という感覚がなかったと思いますが、大学は自分の意思で決まった時間に講義が行われている教室まで行かなければならないので、寝坊して欠席扱いになってしまうことが起きやすいわけです(音大の実技系は遅刻欠席をすると他の人に多大な迷惑がをかけてしまうので、あまりそういう人はいません)。


と、大学はこのような仕組みで授業が行われています。


さて、では実際に音大生はどんな授業を履修しているのかお話してみたいと思いますが、以下に挙げたのは東京音大の器楽科と吹奏楽アカデミー専攻の必修科目(一部選択必修科目)です。専攻や大学によて履修する授業やその名前が違いますので、ひとつの例としてご覧ください。ちなみに、吹奏楽アカデミーというのはひとつの独立した専攻で、同じ楽器を学んではいますが、器楽科の人とは所属も、担当講師も違います。


専攻実技(器楽科、吹奏楽アカデミー共通)

いわゆる個人レッスンです。音大の最も中核となる科目と言えます。ペースとしては1週間に1度(もしくはその程度の回数分)のレッスンを受ける必要があり、年度末に実技試験としてソロ作品を演奏し、単位取得となります。


管弦楽(器楽科)

オーケストラの授業で基本的に毎週行われます。授業で取り上げる曲のほとんどは、その集大成となる本番に向けてのプログラムです。4年生中心のオーケストラは、東京芸術劇場など大ホールでの定期演奏会が年に1回行われます。学内のホールでも演奏会を行います。


吹奏楽(器楽科、吹奏楽アカデミー)

器楽科は1,2年生中心の吹奏楽と3,4年生中心の吹奏楽授業が別れて実施されていて、上級生の吹奏楽は東京芸術劇場など学外の大ホールでの本番があります。その他学内での本番があります。吹奏楽アカデミーも現在は前期後期に1回ずつ学内での公演があり、練習に参加し、本番の舞台に乗ることで単位取得となります。

吹奏楽アカデミー専攻は各パートの教員が合奏にも参加します。これにより合奏授業中に指揮者の先生だけでなくパートの専門の先生にアドバイスを受けつつ、実際に一緒に演奏できる貴重な経験を積むことができます。


合奏(管打アンサンブル)(器楽科、吹奏楽アカデミー)

室内楽(アンサンブル)です。様々な形態のアンサンブルを行います。吹奏楽アカデミーの場合は2年生からの授業となり、こちらもすべての楽器の講師が参加しての授業で、一緒に演奏したり、指導を受けることができます。


副科ピアノ(器楽科、吹奏楽アカデミー共通)

器楽科や吹奏楽アカデミーなど、専門としている楽器に対してピアノは副科と呼ばれます。こちらも基本的には毎週レッスンがあります。ちなみに私が学生の時の先生は弾いているとイスを蹴ってきたり楽譜をぶん投げてきたりとめちゃくちゃ怖いバイオレンスおばあちゃん先生でした。今の時代は問題になっちゃうのでそういう先生はいません多分。


ソルフェージュ(器楽科、吹奏楽アカデミー共通)

ソルフェージュ関連は入試で終わりではなく、当然入学してからも続きます。ちゃんと単位を取得するためにもやっぱり入学するまでにどれだけ基礎力をあげられるかが重要です。


和声(器楽科、吹奏楽アカデミー共通)

和音が連なってひとつのストーリーになることを「和声」と言います。この和声の最もベーシックなところを学習するわけですが、なんだか面倒だったり難しく感じる人も多かったりして、いろいろとカオスになる授業のひとつです。しかし学生の皆さんは卒業生の常套句「和声きちんと勉強しておけばよかったー!」を覚えておき、二の舞にならないように気をつけてほしいところです。


西洋音楽史(器楽科、吹奏楽アカデミー共通)

和声と並んで単位取得に苦労する人が多い授業です。え、ただの音楽の歴史なのに?と思いますよね。でも確かに私自身も西洋音楽史が大変だった記憶があります。それがなぜなのか、もう忘れてしまいましたが、多分、音楽の歴史=中学校の音楽室に並んでいるバッハとかヴィヴァルディとかの時代からスタートすると思っていたら、もっとずっと前からの話が始まって、五線譜でもないし作曲家の名前も初耳で、「なんちゃら楽派」とかいっぱいあるし知らないし音階も今と違うし「え、これ何の話?」と混乱しているうちに猛スピードで授業が進むからではないか、と思います。合ってます?


バンドディレクション(吹奏楽アカデミー専攻)

吹奏楽アカデミーは、吹奏楽を通して実技だけでなく、教育に関して深く学ぶ専攻です。吹奏楽指導者としての知識、スキルを身につけること、教育現場と吹奏楽の関係などを理解するのが最大の目的のひとつで、バンドディレクションという授業がその核になっています。外部から吹奏楽指導の有名な先生をお招きしてお話を聞いたり、3Dバンドブックなど吹奏楽で使用する教則本の研究をしたり、そして4年生になると自分で吹奏楽作品を決めて、アカデミーの学生と教員で構成される吹奏楽団をモデルバンドとして実際に指揮、指導します。


指揮法(吹奏楽アカデミー専攻)

吹奏楽指導者には指揮の技術も重要になるため、この授業も毎週実施されます(3年生から)。合奏授業で指揮を振ってくださる下野竜也先生、小林恵子先生、横山奏先生から直接レッスンを受けられるのは大変に貴重な経験です。合奏授業で実際にアカデミーの学生と教員相手に指揮を振る経験もできます。なお、器楽科にも指揮法はありますが吹奏楽アカデミーとは授業スタイルがだいぶ違います。


マーチング概論/演習(吹奏楽アカデミー専攻)

マーチングについて学べるのは吹奏楽アカデミー専攻の大変ユニークな特徴です。このスキルを持っていると様々な現場でお仕事ができるようになると思います。


その他、吹奏楽アカデミーでは、吹奏楽ポップスや吹奏楽作編曲、スコアリーディングなども学ぶことができ、器楽科とは一線を画した魅力があります。


大学というのは研究機関なので、自分が何について学び、研究したいかを明確に持っていることが大切です。高校時代までと大きく違うのが、受け身になっていると何も手に入らないという点でしょう。音大受験を志す人に、なぜ音大に入りたいのか聞くとほとんどの場合「楽器が好きだからもっと続けたい」とか「吹奏楽が好きだから」と言います。これはもちろん本質的なところで重要になるので素晴らしいことではありますが、それだけに止まらず、入学前の段階でもっと掘り下げて「自分は音楽を通して何ができるようになりたいのか」など、自分の将来をイメージしておくと、充実した大学生活が送れると思います。


それではまた次回!



荻原明(おぎわらあきら)

[トランペットオンライン講習会(最終回)]
10月23日(土)『指揮者や指導者がよく使う言葉の翻訳をしよう』参加者募集

ついに最終回のトランペットオンライン講習会。最後は指導者や指揮者からの言葉を募集し、それらが実際にどのような意味で使われ、奏者としてはどのように対処することがベストなのかを考えてみたいと思います。


オンライン講習会の様子はこのような感じです⇩

講習会は最終回となりますが、1回分お安くなっているフリーパスでこれまでのすべてのアーカイブが視聴でき、もちろん最終回のリアルタイム参加もできます(リアルタイム参加は自由です)。フリーパスの購入、ぜひご検討ください。お求めはBASEにて。

今回のみの単発購入はPeatixにて承ります。お支払いが完了すると当日の参加URLが自動的に発行されるので非常に簡単です。


オンライン講習会2021総合サイトはこちらです。

オンライン上ではありますが皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

ぜひご参加ください!