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M-Cross International Corporation Column

アメリカ市場分析「店舗型大手小売りの今後の動向」

2017.03.04 22:04

アメリカ進出で重要となる店舗型小売りの現状と業態予測

 アメリカにおける小売りは、店舗販売からAmazonなどのEC(電子商取引)販売に主導権を奪われると言われております。

 Amazonは小売りにおけるEC革命と言われているためです。

 しかし、我々は革命とまではいかないと考えます。

 革命とは主導権の移行であり、店舗販売からEC販売に完全に移行するという意味になります。


 店舗購入の時代から、インターネット購入という選択が増え、商品購入における選択の多様性が生まれたという視点であれば、AmazonというECに特化した小売りが業界に一社増えただけの単純な話になります。


 完全なる移行ではなく、多様化したとの見方は、既存小売りも今後巻き返しするものとみてます。


■既存大手小売りの現状

 米国上場企業のうち代表的な小売りの現状をみていきましょう。


●(BBBY)ベットバス&ビヨンド

 米国やカナダを中心に「Bed Bath & Beyond」「Christmas Tree Shops」「Harmon Face Values」「buybuy Baby」などの店舗を展開。

 主な商品は中低価格の生活雑貨や寝具や家具、バスキッチン用品を販売する雑貨小売大手企業です。

 カリフォルニア(187店舗)、テキサス(117店舗)、フロリダ(96店舗)、ニューヨーク(96店舗)、ニュージャージ(90店舗)、イリノイ(56店舗)、オハイオ(50店舗)、バージニア(46店舗)、ノースカロライナ(45店舗)、ペンシルベニア(45店舗)、ミシガン(44店舗)、マサチューセッツ(43店舗)、アリゾナ(42店舗)、ジョージア(38店舗)を展開。

 売上高

  2014/2:11,503.96mUSD

  2015/2:11,881.17mUSD

  2016/2:12,103.88mUSD


●(COST)コストコ・ホールセール

 アパレル、薬品、家電、玩具、オフィス用品、家庭用品、工具、精肉や鮮魚、生鮮食品、冷凍食品など倉庫店舗形式で大量の商品を低価格で提供する、会員制倉庫型店舗販売大手企業です。

 米国とプエルトリコに501店舗、米国地域の売上構成比率は72.9%。

 売上高

2014/8:112,640.00mUSD

2015/8:116,199.00mUSD

2016/8:118,719.00mUSD


●(CVS)CVSヘルス

 ドラッグストアや専門薬局を展開し、小売部門はドラッグストアチェーンや化粧品、季節商品、写真プリントも行うドラッグストア大手。

 米国、コロンビア、プエルトリコ、ブラジルで9655店舗を展開。

 M&Aで業容を拡大して、大手小売りターゲットの店舗内薬局・診療所事業を買収して売上に大きく貢献している。

 売上高

2013/12:126,761.00mUSD

2014/12:139,367.00mUSD

2015/12:153,290.00mUSD


●(HD)ホーム・デポ

 住宅リフォーム向け建築資材、家具、電装品、ガーデニング用品を扱うホームセンター世界最大手。米国本土を中心に世界に2274店舗を展開。

 住宅リフォーム業者や住宅保有者をターゲットとして、1店舗あたり3~4万点の商品を揃えている。

 売上高

2014/1:78,812.00mUSD

2015/1:83,176.00mUSD

2016/1:88,519.00mUSD


 他にも多数小売り企業がありますが、Amazonの拡大によって主導権を取られるほど急激に売上を落としている企業が多いとも言えません。


■メイシーズの戦略

 EC販売の拡大による市場激変によって、多数の店舗閉鎖に追い込まれたように見られていますが、新たな戦略のための体制作りとの見方もできます。

 百貨店チェーン(メイシーズ、ブルーミングデールズ)やアウトレット店舗を運営している百貨店大手企業。

 全米45州に870店舗を運営している。

 売上高

2014/1:27,931.00mUSD

2015/1:28,105.00mUSD

2016/1:27,079.00mUSD

 

 2016年に売上が3.65%下がっていますが、100店舗を閉鎖するほどAmazonにやられているといえるまでの数値ではありません。

 2016年8月の100店舗閉鎖計画は、オムニチャンネル戦略を一段と加速させるという、攻めの戦略ですので、店舗販売企業がEC専門企業に対して仕掛ける、リアル店舗の逆襲の始まりと言えます。



■オムニチャンネル戦略

 インターネットの登場により、EC販売が拡大しました。この時代の考え方は、店舗販売かEC販売かといった議論で、店舗はショールーム化されて実際の購入はECに完全に移行するとの都市伝説が流れていました。

 この時代の考え方が、マルチチャンネルです。

 人商品を購入するときに、店舗かECかといった全く異なる形式で、人々はどちらかを選択するという単次元視点での考え方です。

 実際はもっと複雑で、人は様々な商品を色々な媒体を通して購入してます。

 この多様化した商品購入を企業が最大限取り込む考えがオムニチャンネル戦略です。

 この戦略は、同じ企業での各店舗毎の売上競争は無意味となり、その考えを拡大解釈すると店舗とECの販売競争は無意味になり、企業全体で1人の顧客の商品購入量を最大化すればよいという考えになります。

 もし、EC販売での受け取りを店舗にすれば、更に店舗で新たな商品を認識し、今後の購入への営業活動になります。

 正にリアルな店舗を保有する強みを最大限に活かし、ECを巻き込むという店舗小売りの逆襲が始まります。

 

 Amazonも製品販売の伸びより、ネットサービスの伸びが著しい状況です。Amazonが小売店を出店する計画も実際はオムニチャンネル戦略への移行かもしれません。

 

 既存大手店舗小売りがECを活用し、EC専門小売りが店舗小売りを展開した時点で、店舗かECかといった議論は過去のものとなり、実際は大手小売り同志の単純な競争になります。


 情報入手の選択肢が増えると、顧客にある商品を購入させるために誘導するといった考えもこれからは通用しなくなります。

 顧客視点に立ち、顧客の要求に商品を合わせていくことが、重要な要素となります。


 本質は今も昔も変わらず、顧客に合わせるという基本思想が必要になります。