営業予定+今週の1冊
【営業予定】
9/6(月)12時〜18時営業
9/7(火)12時〜18時営業
9/8(水)定休日
9/9(木)定休日
9/10(金)12時〜18時営業
9/11(土)12時〜18時営業
9/12(日)12時〜18時営業
【今週の1冊】
それまでSF小説をほとんど読まずにいたのだが、ここ1年くらいで少し読むようになり、ようやくその楽しみ方が分かるようになってきた。
というよりも、自分好みのSF小説にどういう傾向があるかが分かるようになったと言った方がいいかもしれない。
SF小説で描かれる、科学技術や社会的な状況等が今とは大きく異なっている未来。
自分の場合、そこで描かれる世界観よりも、登場人物たちの関係性や振る舞いから垣間見える「人間性」を感受できるような描写があるかどうかが好みの基準になっている気がする。
その「人間性」というのは、たとえ世界が激変した未来だとしても、人間は今と変わらずにいるよねといったある種の普遍性という意味ではなく、明らかに今とは異質な人間だなと思いながらもそれでもこれは一つの(異なる)「人間性」だよなと確信できるような何かだ。
大きい変化によって変えられてしまった「人間」が描かれつつも、でもそこで「人間」であろうとする(というか人間であることしかできないのだろうけれども)行為や意思に僕は惹かれるのかもしれない。
一般的かどうかは分からないが、SF作品の魅力のひとつではないかと思う。
さて、今回紹介するのは、
『日本SFの臨界点 【恋愛篇】死んだ恋人からの手紙』伴名練 編(早川書房) ※9/6(月)新刊本で在庫有り
9名の日本作家の短篇SF小説を収録したアンソロジー本で、本書は「恋愛」をテーマに組まれている。
表題作にもなっている中井紀夫の「死んだ恋人からの手紙」が個人的にかなり好みの作品だった。
異星人との戦争のため地球からとても遠い星にいる恋人。
その恋人から送られてくる手紙という体で物語が描かれている。
恋人は地球からとても離れた星で戦争をしていて、加えて亜空間によって時間の流れが不確かで、手紙は時系列順には届かない。
戦地の状況や異星人とは何者なのか、そして恋人への思いが入り乱れて語られる。
愛のカタチを手紙という媒体で表現していながら、僕たちが知っている手紙とは異なる仕方で愛を表現していて、それがまた美しい。
普段SFを読み慣れていない方にもおすすめできる1冊。
【関連しておすすめしたい本】
・『日本SFの臨界点 【怪奇篇】ちまみれ家族』(早川書房)伴名練 編 ※9/6(月)新刊本で在庫有り
→上記紹介本と同じくアンソロジー本で、こちらは「怪奇」をテーマに組まれている。SF入門としても手に取りやすい1冊なのでおすすめ。
・『ポストコロナのSF』日本SF作家クラブ編(早川書房) ※9/6(月)新刊本で在庫有り
→まず日本SF作家クラブ会長の池澤春菜によって書かれた「まえがき」がとても熱い。
「事実は小説より奇なり、なんて冗談じゃない」と一蹴する。
新型コロナウイルスの流行により日常が退屈なものになってしまった。
もう一度小説に現実を追い越してもらおうという意気込みで組まれたアンソロジー本だ。
今活躍している日本のSF作家はパンデミックという題材を使ってどのような世界観や人間観を構築するのか。遠いようで近いような、近いようで遠いような「日常」が垣間見える瞬間があって面白い。
・『世界SF作家会議』早川書房編集部(早川書房) ※9/6(月)新刊本で在庫有り
→「未来を考えるプロ」であるSF作家がパンデミックをテーマに会議を行う。
SF作家らしく大きい視点であると同時に、各々の作家のこだわりや指向性のようなものが小さな視点からも語られていて面白い。SF小説には馴染みにくいという人にはこちらから手をつけるといいかもしれない。