それぞれの季節移動
目視を続けている調査地の中で、アカミミガメが頻繁にみられる地点がある。
コンクリートで囲まれたそこは、一時的に水位が深くなっていて、流速も緩やかだ。
ここはまるで、プールのようになっている。
しかもこの地点、調査を始めてからの7ヶ月間でみられた種類はアカミミガメだけ。
ほんの少し下流へ下ると、スッポンやクサガメが同所的に生息しているにも関わらず、だ。
なぜ、アカミミガメだけが好んで生息しているのか。
よく分からない。
そんな場所に、一昨日。
クサガメの姿を発見した。
クサガメは、どうやらこの場所で、日光浴をしていたようだ。
クサガメは、若い個体のようだ。
ただし、3~4齢は経過しているよう。
季節は着々と秋へ向かっている。
このタイミングでクサガメがみられたのには、何か意味があるのだろうか?
実は、調査地内の他の場所でも、カメたちがじわじわと移動しているのを感じていた。
上流ではイシガメが、下流ではアカミミガメが。
どうやら季節移動を始めているようなのだ。
イシガメは、冬眠期にみられていた個体が、初夏から夏場の間、姿を消していた。
そうした個体が、8月の下旬に、再び姿を現した。
アカミミガメは、春、局所的に集う様子がみられていた。
ところが、初夏から真夏にかけてはバラバラに、点在して生息していた。
それがまた最近になって、集まり始めているのだ。
そして、集まった場所では、オスがメスに求愛している行動なんかが見られたりも…。
「秋の季節移動」と一言でいっても、それぞれの種によって、移動の理由が異なるのかもしれない。
居心地の良い生息場所へと移るため…エサを求めて…または、求愛のため…。
それぞれの理由で、今、河川に暮らすカメ類は季節移動をしている。
その「動き」を実感できる瞬間って、ごく稀だ。
今、カメたちが「動いている」ことに気がつけたのは、大きな喜びだ。
カメを追いかけていると、こうした嬉しい事がある。
だから、やめられない。
カメ追っかけの中毒性は、こんなところに隠れている。