進出階層を絞る「アメリカは収入による階層格差が明確な社会」
アメリカは世帯収入によって目で見える形で階層化された社会
日本と異なり、アメリカは世帯収入毎に階層化された社会です。
そのため、アメリカ進出においては商品を販売したいターゲット層の現状を知っておかなければ、アメリカ進出を失敗する恐れがあります。
アメリカにはどのような階層があるのかを明確にしっておく必要があります。
■世帯収入における階層
米国ビューリサーチ社による中間層の定義2014によれば、中間層を以下のように定義しております。
この定義を超える世帯収入はアッパーミドル層、この定義以下の世帯収入を低所得者層として、以下の表にまとめました。
この世帯収入における階層により、アメリカのスーパーや生活雑貨店などの小売店は、商品構成や価格など、小売企業はターゲット層に的を絞った店舗展開をしております。
■小売り階層別展開
例えばスーパーに関しまして、アメリカでは階層別にターゲットを絞り、商品構成や店舗の雰囲気など明確に分けられて展開してます。
●ホール フーズ マーケット(アッパーミドル層向け)
テキサス州オースティンに拠点を置き、米国42州に436店舗を展開している、自然食品や有機食品を中心としているスーパーマーケットです。
カリフォルニア州認定オーガニック農家(CCOF)や米国農務省(USDA)など、オーガニック認定プログラムのガイドラインに沿って検証した商品を取り扱っています。
店舗内の雰囲気は明るく清潔で、店員も高度な接客教育を受けているため明るく対応してくれます。店舗内雰囲気はアッパーミドル層が好む心地よい空間となっております。
【売上高】
2014/9:14,194.00mUSD
2015/9:15,389.00mUSD
2016/9:15,724.00mUSD
●ウォルマート・ストアーズ(低所得者向け)
低価格戦略(エブリデーロープライス)を掲げ、大型倉庫型ディスカウントストアの形態を取り、売上高は小売業界で世界トップ規模。
食品、衣類、家具、家電などを扱う総合スーパーです。
最近ではガソリンスタンド併設型のコンビニ事業(Walmart Fuel Station)も新たに事業展開しています。
【売上高】
2014/1:476,294.00mUSD
2015/1:485,651.00mUSD
2016/1:482,130.00mUSD
●ターゲット(中間層向け)
アメリカで売上高5位の小売企業で、ウォルマートに似た店舗内商品構成となっておりますが、店舗内雰囲気はウォルマートより少し上品な陳列となっております。
商品価格もウォルマートより少し価格が高めの商品構成ですが、ディスカウント百貨店チェーンですので、全体的には中間層が購入しやすい価格帯となってます。
全米に1800店舗を展開。
■クリエイティブ階層
リチャード・フロリダ著の新クリエイティブ資本論によれば、職種により階層化された事により、賃金格差も広がり、階層別に分かれた社会がより一層明確になってきております。
クリエイティブクラス、ワーキングクラス、サービスクラスによって所得差ができているとの理論です。
クリエイティブクラスの定義は、スーパークリエイティブコアとクリエイティブプロフェッショナルに分けられ定義されてます。
●スーパークリエイティブコア
・コンピューター及び数学に関連する職業
・建築及びエンジニアリングに関連する職業
・生命科学、物理学、社会科学に関連する職業
・教育、訓練、図書館に関連する職業
・芸術、デザイン、エンターテイメント、スポーツ、メディアに関連する職業
●クリエイティブプロフェッショナル
・マネジメントに関連する職業
・業務サービス及び金融サービスに関連する職業
・法律に関連する職業
・医療に関連する職業
・高額品セールス及び営業管理に関連する職業
ワーキングクラスやサービスクラスは、
●ワーキングクラス
・建設及び採掘に関連する職業
・設置、保守管理、修理に関連する職業
・製造に関連する職業
・輸送及び資材運搬に関連する職業
●サービスクラス
・医療支援に関連する職業
・調理及び飲食サービスに関連する職業
・建物及び土地の清掃及び保守管理に関連する職業
・介護に関連する職業
・低価格品のセールスに関連する職業
・事務及び業務補助に関連する職業
・コミュニティ及び社会福祉に関連する職業
・保守サービスに関連する職業
■各クラスの平均所得
各クラスの平均所得(2010年)は
・クリエイティブクラス 70,714ドル
・ワーキングクラス 36,991ドル
・サービスクラス 29,188ドル
となっており、クリエイティブクラス内の平均所得抜粋は以下の数値となってます。
・マネジメントに関連する職業 105,4403ドル
・法律に関連する職業 96,940ドル
・コンピューター及び数学に関連する職業 77,230ドル
・建築及びエンジニアリングに関連する職業 75,550ドル
・医療に関連する職業 71,280ドル
このことから、クリエイティブクラスの上位層がアッパーミドル層、クリエイティブクラス下位層及びワーキングクラス上位層が中間層、ワーキングクラス下位層とサービスクラスが低所得者層になっていると予想されます。
更にアメリカでは、クリエイティブクラスとサービスクラスの占める割合が増加傾向であり、ワーキングクラスが劇的に低下しております。
クリエイティブクラスは、1970年は19%でありましたが、2010年には32%まで増加してます。
サービスクラスは、1970年は20%でありましたが、2010年には47%まで増加し、最大集団を形成しております。
ワーキングクラスは、1970年は40%以上を維持していましたが、2010年には21%まで減少しています。
■地域別格差
職業別格差は、地域産業との関連から、都市別でも格差が広がってます。
クリエイティブクラスの賃金が最も高い都市は、IT産業が強い サンノゼ=サニーベール=サンタクララ(カリフォルニア州)で、平均年間賃金は101,827ドルとなってます。
この地域のクリエイティブクラスの占める割合は46.9%となり、全米での割合の32%を大きく上回ります。
2位のサンフランシスコ=オークランド=フリーモント(カリフォルニア州)の平均年間賃金は91,361ドルとなっております。ITなどのベンチャー企業に投資をする企業など金融機関につよいサンフランシスコならではの賃金構成です。
都市別GDPで、一人当たりのGDPが最も高い地域はサンフランシスコで、2位はボストン、東京は19位(2008年)です。
このように、アメリカ進出においては、商品を販売する階層別ターゲットと加え、地域も戦略に考慮しなければなりません。
このようにアメリカでは、様々な格差を有する国であり、日本とは違った見方で進出を検討する必要があります。