外は道

荷物の中身を確認してチャックを閉めたら

真っ白なスニーカーを履きながら

外に出る私にさあ、行こうと声をかける

ドアの鍵を閉め歩きながら空の動きを確かめる

お世話になっている薬局を通り過ぎるとき

いつも心の中で、いってきますと挨拶する

一人暮らしの寂しさが垣間見える瞬間だけど

引っ越してから私のルーティンになっている

横断歩道での信号待ち

どこを見てどんな佇まいでいればいいのか

戸惑うことがよくある

横を通る人

ベビーカーを押す人

車椅子に乗る人と押す人

腕を組んで並びながら歩く恋人たち

歩道を疾走する子を乗せた自転車

道の真ん中で立ち止まる人

交差していく人の避け方

車の動き方

電車の車両の決め方

窓の空いた走行音

トンネルに入ったときの

暗さの長さを数えたり

目的地までの心の行方を気にしながら

生まれ出る刺激に頭が疲れる

名前を知らない人が生きている

もう会わない自分にも会っている

出来ないことを知りその場に座る

制度に自分を擦り合わせたくない

来た道をまた戻るころ

建物の影は忘れて

銀行やスーパーの存在も

シャボン玉みたいに

淡く消えていく

薬局の横を歩くときの、ただいまは

行くときよりどこか暖かい

私にとってのお母さんの代わり

みたいなものだから

大したことはないと

不安な指先でドアの鍵を開けて

外の世界からの境界線をこの脚で跨ぐ