【働く天使ママインタビュー】#1 まきさん
様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。ご自身の大切なご経験を、悩んでいる仲間の役に立てばとシェア頂いた働く天使ママさん、ありがとうございます!!
《#1 まきさん》
【プロフィール】
まきさん(20代)
・お仕事:フィットネスクラブのインストラクター
・雇用形態:パートタイム
・ご経験:2020年4月に次男と出産後半日でお別れ
1.現在のお仕事について教えてください。
フィットネスクラブでパートタイムのスポーツインストラクターをしています。主に成人の方に運動指導・子どもに体操やスイミングを教えています。経験後は、このパートタイム勤務に加えて、フリーランスでのインストラクターもしています。
2.あなたのご経験について教えてください。
2020年4月に次男を出産後半日で亡くしました。妊娠中・出産時は全く問題がなく、先天性の病気などの診断もなかったにも関わらず、突然亡くなってしまいました。
午前10時に出産、立ち会っていた夫が産まれて泣いている次男を最初に抱っこしました。私も産まれた後に、次男を隣へ連れてきてもらいました。
分娩後の処置が終わり病室にいた13時から16時の間に、何度か看護師さんから、ちょっと呼吸が不安定なので保育器に入っていますと報告がありました。16時頃には歩行の許可が出たので心配で次男を見に行きました。
18時頃、血相を変えた看護師さんから「ご主人を呼んでください」と言われました。もうその時には、次男は心肺蘇生をされていたのだと思います。NICUのある病院へ搬送となりましたが既に搬送時には心肺は止まっていました。搬送先の病院でも心肺蘇生を試みましたが、20時40分に医師から死亡を告げられました。この時初めて私は次男を抱っこしました。
今思うと産後のホルモンバランスの急激な変化で産後ハイになっていたのかもしれません。次男が亡くなった後、悲しいけれどもそれを上回る「うまれた!やったー!」という達成感の方が強かったです。そのため、次男とのお別れまで、写真を撮ったり、沐浴をしたり、次男との時間を楽しんでいました。一方で、夫は産まれて元気に泣く次男を抱いていたこともあり、私よりも悲しんでいるように見えました。
3.ご経験後、仕事はどの程度お休みしましたか。
2ヶ月の産後休暇を取得後に職場復帰しました。会社からは妊娠出産に関する会社の制度等が記載されたガイドブックを渡されていたので、産後休暇が2ヶ月取れることは知っていました。会社からは、2ヶ月の産後休暇後も復帰が難しい場合は疾病休暇で休むことができるとの提案がありましたが、ちょうど新型コロナによる緊急事態宣言解除後の復帰だったので、コロナ対応で職場で忙しく利用者もあまり戻っていない中で、しれっと復帰したほうが良いと判断しました。コロナで保育園も休園になり、夫も仕事がなくなり家族が家に居た為、安心感があったことも大きかったです。
休暇中は上の子の育児や家事で日常の生活リズムに戻せました。またコロナで夫の仕事もなくなり、生活を立て直すことに必死だったこともありました。もしコロナがなく、これまでの日常と変わらなかったならば、2ヶ月での産休では復帰できていなかったかもしれません。
4.ご経験後、職場復帰する際に考えたこと、感じたことを教えてください。
復帰の際には、接客業だったので一緒に働くスタッフはもちろん、会員さんにはどのように次男のことを伝えようか悩みました。
当初は、次男のことを隠そうかなとも思いました。しかし、私の場合、お腹が大きい臨月近くまで働いていたので、私の妊娠を知らない人はいませんでした。隠すといつかボロが出ると思いました。また会員さんの間で変な噂が立つのも嫌だったので、聞かれた人には隠さず説明することにしました。
実際に会員の方からは「もう戻ってきたの?」と聞かれました。聞いてきた方には、次男を出産したことと、お別れしたことを隠さずに説明しました。親しい方とお話する時は涙が出ることもありましたが、その他の方には普通に話すことができました。次男のことを隠さず話せたこと、産んだということを言えたことで、むしろスッキリしました。吐き出せて良かったと今は思います。
お客様の中には、「実は私も…」と話してくださる方もいました。年配の方々や人生の先輩方から色々な言葉を頂き、味方になってくれたような気がしました。
5.職場復帰後はどのように働いていますか。
復職時に元の職場に戻ることが辛い場合は、別の店舗への異動も検討できるとの提案もありましたが、知らない人ばかりの新しい職場で働くよりは、知っている人のいるところの方が良いと思い、元の職場に復帰しました。
また子どもを授かりたい、自分の身体を大切にしたいと思い、働く時間を短くしようと考えました。コロナで職場も大変だったので、復帰したら100%の仕事を求められると分かっていました。しかし、臨月での出産でまだ産後2ヶ月。スポーツインストラクターは身体を使う仕事なので、復帰前の週5日8時間勤務から、週5日5時間に減らして復帰しました。
今は、更に日数も減らし、週3日5時間で働いています。この働き方については上司にも理解頂いています。
6.ご経験後、働き方やキャリアについて考え方が変わったこと、感じることを教えてください。
産後半年弱くらい経った頃から、もっと自分がやりたいことをやって過ごしたいと思うようになりました。今の仕事にとらわれず自分で事業を展開していきたいと考えるようになり、資格を取ったり、勉強を始めました。
私と同じように子どもを亡くしたお母さんが沢山いる世界を知り、そういったお母さんのために何か行動したいと思うようになりました。
何か一つ自分に武器が欲しいと思い、ヨガ・ピラティスインストラクターの資格を取りました。今後は天使ママさん向けに、身体や心を整えていくプログラムを展開していきたいです。
7.職場へのご経験の伝え方やその後のやり取りについて、大変だったこと・自身で工夫したこと・改善してほしいことがあれば教えて下さい。
育児休暇が取れなくなり復帰が早まることになったため、退院後、次男の火葬が終わってからすぐ、出産したことそして次男とお別れしたことを電話で報告しました。泣かずに淡々と報告できました。今思うと産後ハイで、出産した達成感があったので不思議な感覚ですが、産まれたことを伝えたいという思いだったかもしれません。上司は出産報告かと思ったら、お別れしたという事実にびっくりしていたと思います。復帰の際も私の職場は幸いにも流産や病気でお子さんを亡くされた方がいらっしゃる職場だったので皆さん温かい雰囲気で迎えてくださいました。特に大変だったことはなかったです。
8.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
職場内では話題に出すことがおそらくタブーになっていて、職場のスタッフの方は、みんな気を遣って次男のことに触れることはありませんでした。私にとっては次男のことが無かったことにされたようで違和感がありました。次男のことを喋りたいのに喋らせてもらえない辛さもありました。
スタッフの中に同じような経験をした方がいてこっそり話を聞いてくれたり、クリスマスや誕生日に次男へプレゼントを頂くこともありました。「忘れていないからね」とこっそり声を掛けてくれる人もいました。
次男のことを話す時は、相手がどのように感じるかまでは考えていなかったかもしれません。私の話で泣いてくれる人もいました。次男の話に対する反応は人それぞれで、言葉で傷つくことはありませんでした。私は職場や会員の皆様に恵まれていたのかもしれません。
9.同じ働く天使ママ、これから職場復帰する働く天使ママさんへ伝えたいメッセージがありましたらお願いします。
天使ママの心と体はご自身が思っているよりボロボロです。復帰後は元気でも少し経ってから辛くなったり、「今日は頑張れない」と思う時も必ずあります。
「辛い、しんどい、休みたい、休みます」をしっかりと伝えられる、理解される職場選びがとても大事だと感じています。天使ママの中には「また赤ちゃんを授かりたい」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。新しい命をまた授かるためにも、職場復帰で気持ちと体をすり減らすようなことはせず、自身の体と心のケアを大事にしてほしいです。
具体的なケアとしては、しっかりと食べて寝てほしいです。天使ママさんの中には、生きていることに罪悪感を感じる人もいるかもしれません。何故悲しいのに食べられるのだろう、寝られるのだろうと思う人もいると思います。しかし、悲しむことにも体力が必要です。「食べる。寝る」そこに罪悪感を感じないでほしいです。また、体のためにストレッチもいいと思います。悲しい気持ちについては、とにかく吐き出すことです。日記に書く、誰かに話す等、溜め込まないでほしいです。天使ママさんにはぜひ自分の体、心、命を大切にして頂きたいです。
次男くんとの思い出の写真を頂きました。
【インタビューにご協力いただける方を募集しています】
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