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こんぶトマト文庫のふみくら

見放題と言われてもだ

2021.09.10 13:25

ここんところの映画、もといインターネット上で閲覧できる動画は「見放題」が完全にスタンダードなものになっている、気がする。

アマゾンプライム、ネットフリックス、Hulu、ユーネクスト、などなど。

まだネットで動画をバンバン見るのが当たり前じゃなかった頃の、テレビの有料チャンネルみたいな位置づけなんだろうか。WOWOWとかMTVとかみたいな。

昔WOWOWで小栗旬が主演していた『カリギュラ』を観たことがある。22時から放映されていて、なんとなくテレビつけたときは20分くらい過ぎていたけれどそのまま観続けた。眠くなったら消すかァ、と呑気に構えてたけど、結局1時過ぎまでガッツリ見入ってしまった。凄かったよ小栗旬。


見放題、一応加入はしている。アマゾンプライム。

映画もたくさん見ることが出来るし、今期のアニメも遅れることなく好きな時間に見ることが出来る。当然定額。まぁ便利ですよ。えぇ。

でも、じゃあアマプラで映画をバンバン観るかと言われたら、あまり観る気が起きない。

そこまで映画好きじゃないんじゃないの、と言われたらシュンとなっちゃう、が否定も出来ない。確かにさほど映画好きじゃないがゆえに結局観ないだけなのかもしれない。

しかしなんでしょうか、「いつでも好きな時に観れるよ!」ってされると、必死さがなくなりません?「観るぞ!ウオオ!!」というような。座して構える、というような。

ましてや画面上のボタンをクリックしたらスタートする、という、なんともアッサリとした感じで。まー飯でも食いながらちらちら観るかね、という、なんとも気の抜けた感じになってしまう。それはひとえに僕の物事に対する姿勢が悪いことにも起因してますねわかってる石を投げないで。


良いものを良いように味わうには、本来それ相応に手続きが必要なのだと思う。映画に限らず、音楽や読書にしても。

映画館てものがわかりやすい。家から出て映画館まで行って、一回の映画を観るのに相応の金額を支払って他者と空間を共有して、映画が始まったらそう易々とその場を離れることはしない、というかできなくなり、その間映画を観続けることになる。家にいながらボタン一つで映画を観ることに比べたらかなりの段階を踏んでいるしお金もかかる。でも映画館で観る映画は家で観るそれよりも格別に良い。館によって違いはあれど、環境の全てが「映画を観ること」に特化している。

fuzkueさんやリチルさんのような場が称揚され重宝されるのも、あそこらが「読書のための場」として整えられていて、お店側はもちろんの事、他の来店者も皆そのつもりでやってきている。あの場に行くことは「読書をするぞ」という心構えがある、という前提がある。そこいらのカフェへ行っても静かに読書出来る保証は何一つない。しかしそこにはそれがある。そしてそこに対価を支払う。


話が逸れるけど

この"前提"ってのも結構難しいものだと思ってる。

例えば、「ライブハウスは音楽を聴きに行く場である」という、一見全くもって尤もらしい前提を提唱してみる。「カフェは読書する場である」よりよほど一般性があるように見えるし、相当数に通用する前提ではあると思う。

しかしこれが実のところ絶対的な前提とは言えない。

「音楽を聴くことは聴くけれど、どっちかと言えばライブハウスはそこに来る友達との遊び場だ」という前提でライブハウスに来る人も、そう珍しいものではない。そういう人は目当てのバンド以外の時はバーカウンターに腰かけて、轟音の中で横にいる友達と酒を飲みながら歓談している。もちろんこの辺もライブハウスごとによってまちまちだと思うし、しっとりとした曲を演奏してるときにも馬鹿みたいに騒いでいる人はまぁマナーがなってないなと思う。ただ良識の範囲(これまた曖昧な指標)ならば、音楽を聴くよりも友達との交流を優先するシーンがあったって別に構いやしない。

この辺はライブハウスの大小問わずそれぞれたっくさんの主義主張がない交ぜになってて、いにしえのSNS(当時んな言葉なかった)mixiで皆思い思いに(そしてなんとも盲目的に)ライブハウスのマナーはかくあるべしと書き綴っていたなァ…懐かしい。



閑話休題。

つまり見放題で『サタンタンゴ』観るなんて絶対集中力もたないだろって話です。

7時間18分だぞ、恐ろしく長い。

ジム・ジャームッシュとガス・ヴァン・サントが好きですと曲がりなりにも言ってんならこれは観に行かないと嘘だろ!(というかこれ借りてきて家で観切る自信がなかった)(というかDVDとかBlu-rayとかになるかどうかもわからんかった)ということで映画館に観に行ったけど、お昼前に入って出てきたら夜だった。映画三本分だもの、そりゃそうなる。

ただ、あれは映画館で観て本当に良かった映画の一つに数えられる。圧倒的に没入出来る。途中で二回休憩が挟まったけれど、ずっとそわそわしてた。余計な事に思いが向かなかった。


しかし

この見放題ってやつ、考えようによってはあの三分割されている映画を切れ目なくぶっ通しで最後まで観ることが出来る唯一の方法、とも言えるのか。Blu-rayも三枚組らしいし。

そう考えたら、アッだめだこれもしかしたら観る価値あるのかもしれない。何ならもっかい観たくなってきた。

というか見放題って『愛のむき出し』とか『七人の侍』も一本化されてるんだろうか。


余談も余談だけど、アマプラでも『サタンタンゴ』は観れるようだった、が、有償レンタルのみ。お値段1,650円。ちょっと笑っちゃった。映画館行けるじゃないか。