超人ザオタル(33)道の喪失
2021.09.14 01:14
「それでは、まだ私は準備が出来ていないだけということでしょうか、ザオタル。
そして、私もいつか道を行く日が来るということでしょうか」
タロマティの言葉にはまだ懐疑的な響きがあった。
だが、小さな興味が見え隠れしていた。
「そうだよ、タロマティ。
もうあなたはこの草原にいるのだ。
ここまでの道を歩んできたのだ。
だが、ここで道を失ってしまった。
そうではないのかな。
それでここでの暮らしに道を見つけようとしたのだ。
それはとても満たされていたため、それが終着地だと思った。
だが、本当はここが終着地だとは思っていないのだ。
それがあなたの心に引っかかっている。
そして答えが出ないことに苛立っている。
今の暮らしが終着地だと証明できないことに焦っている。
道を失い、道を見つけられないでいるのだ」
「確かにその通りかもしれません、ザオタル。
私はここを終着地にしたかった。
この幸せが終着地であれと願ったのです。
でもその証は現れませんでした。
そしてどこにも他に道はありませんでした。
私たちふたりも長い間、この草原をさまよったのです。
そこで倒れて、ここの村人に助けられました。
恩返しにと働いているうちに、ここでの暮らしが始まってしまいました。
そして道のことなど忘れようとしてきました。
それでもその道を行く人があなたのように時折現れるのです。
その時、私の道への思いがあらわになります。
そうすると忘れかけていた古い傷がうずくのです。
私が道を見失ってしまったとい事実。
そのことが私を苦しめます」
タロマティは薄っすらと目に涙をためていた。
私たちは黙って、静かな時に身を委ねた。