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Classic Music Diary

LE TEMPS PERDU

2021.09.16 00:20

Imogen Cooper , Piano     (Chandos) FLAC 44.1kHz/16bit

プルーストの名著『失われた時を求めて』を題名に謳っているイギリスの叙勲ピアニスト、イモージェン・クーパーの新譜。今年72歳になる大ベテランで、ここ数年は毎年コンスタントに1枚ずつアルバムをリリースしている。

これまで多くの愛されるアルバムを出してきているが、今回はとてもパーソナルなアルバムだと言う。若かりし頃パリで学んだ曲、ウィーンでアルフレッド・ブレンデルに師事した際に薫陶を受けた曲など。名曲揃いだ。

曲順別の作曲家は、ラヴェル、リスト、ラヴェル、リスト、フォーレ、リスト、レスピーギと並べてある。パリで活躍した作曲家達の作品が中心だが、ラヴェル、フォーレ等プルーストと同時代の作曲家のひと世代前の、明らかに作風の違うフランツ・リストの作品を入れ込んでいて、これが曲の流れの中で良いアクセントとなりリスナーを最後まで引きつけておく。

イモージェンは長い経歴を持っているが、今までこれら名曲を演奏曲目に取り上げることはしなかった。今回のアルバムではその自分なりの再発見がテーマだという。

当時の、書き込みをした古い楽譜を取り出し、先生達の言葉も思い出しながらの作品検討だったに違いない。それは1961年ー1967年にパリで学んでいた12ー18歳ごろのこと。誰だと思っていたがアルバムジャケットの額縁の中の少女は当時の彼女自身だったのだな。

きっと、このアルバム制作は『失われた時を求めて』の冒頭に出てくるような、「マドレーヌを浸した紅茶を飲みながらよみがえってくる幸せな記憶」をたどりながらの至福のひと時だったのだろう。

2021-752