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帰化植物

2018.09.16 03:01

http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/nplant.html 【身近な生活にある薬用植物 帰化植物】より

 帰化植物は、外国から伝来し、野生状態になった植物のことをさします。帰化植物の歴史は、遣唐使の時代にさかのぼります。ジュズダマやトウゴマなどは大陸から入ってきたといわれています。これらの植物の多くは、もともと野菜・薬用植物・採油など栽培を目的として持ち込まれたものが多く、そこから野生化したようです。江戸時代以前に持ち込まれたものだけでも700種類以上あり、現在でもまだ増えていると思われます。

 比較的最近の帰化植物の中では、川原に繁茂するブタクサやセイタカアワダチソウのように、一時的に増え、一斉に花粉を飛ばすものは“悪役”とみなされることが多いようです。

 その一方で、オランダから荷物の詰め物としてやってきたシロツメクサは、“四つ葉のクローバー”のおかげでしょうか、歓迎されています。

 高校時代の生物の先生が、教諭の仕事のかたわら、帰化植物の調査を名古屋港でなさっていました。先生のお話では、外国から輸入品として、また荷物に紛れてやってきたものが港湾地区でまずはびこることが多いそうです。先生は休日に港へ出かけては、草むらを調べるという地道な作業をなさっていました。

 港湾以外でも、空港近辺、毛織物工場、牧場なども、飛行機や輸入物に種子が付着して到来し、広がりやすいそうです。また、宅地造成や山火事などにより、山や林が切り開かれて裸地ができると、一年草の帰化植物があっという間に繁茂してしまいます。

 いわゆる雑草というものには多年草が多く、本来あるべき自然の姿が維持されていれば、なかなか外来種が入り込みにくいとのこと。つまり、帰化植物は、自然が維持されているかどうかのバロメーターであり、普段から地域の植物について注意しておくことは大切なことといえるでしょうまた、捨て猫ならぬ、“捨て園芸植物”や、庭のハーブが“脱走”して道伝いに拡がるケースも最近では多いようです。丈夫で交配しやすい外来植物は庭に直接植えずに鉢植えにすることで、日本のもともとの植生を守り、ひいてはそれを食べ物や住処にする虫や動物たちを守っていきたいですね。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B0%E5%8C%96%E6%A4%8D%E7%89%A9 【帰化植物】より

帰化植物(きかしょくぶつ)は、植物に属する外来種である。普通、維管束植物の範囲で考える。

帰化植物は、単に国外から入った植物の意味ではなく、人為的な手段で持ち込まれた植物のうちで、野外で勝手に生育するようになったもののことである。意図的に持ち込まれたものも、そうでない(非意図的な)ものも含まれる[1][2][3][4]。

外来種にはさまざまなものがあるが、ヒトが移動の際に伴う生物の種数としては植物の方が多いようである。例えば作物と家畜の種数を比べればその差は大きく、意識的に運ぶものでは植物がはるかに多い。植物は景観を構成するので一般の注目を引きやすい面もある。そのため、帰化植物は広く人目につきやすい。

作物以外にも園芸や牧草、林業などの目的で植物は運ばれる。それに付随し、あるいは無関係に意図せぬ形で持ち込むものもある。いわゆる雑草にはその例が多い。用語としては栽培植物が野生化したものに対しては逸出帰化植物(いっしゅつきかしょくぶつ)という言葉もあるが、栽培逸出(さいばいいっしゅつ)と称して帰化植物と見なさない場合もあり、その場合には、より狭義の使い方として帰化植物は意図せずに持ち込まれて野生化したものだけを指す。しかし、この両者は区別し難い場合もあり、大抵はまとめて扱われる。

帰化植物は人間の活動とともに存在したと言ってもよいほど非常に古い歴史があり、世界的に分布する雑草はほとんどその可能性がある。近世以降、人間の移動が飛躍的に広く早くなるに伴って、生物移動もはるかに多くなった。

帰化という言葉から分かるように、この語は国外から入って自生的に生育するようになった植物を指す言葉である。しかし自然にとっては国境には大きな意味はない。日本は他国と領土が連結しておらず、その内部においては比較的まとまった生物相を持つため、その外から侵入したものを判別するのは簡単であり、その異質性も理解しやすい。しかし、国内においても本来異質な植物相を持つ地域の間で移動させた植物は帰化植物と言っていい状況が見られる。日本では小笠原諸島に持ち込まれた植物にそのような例が多い。

帰化植物と言えば普通は維管束植物の範囲で考えるが、海藻にも帰化種があり、イチイヅタのように問題となる例も出ている。

日本の場合

日本本土の植物(シダ類まで含む)が約4000種、そのうち帰化植物は1200種と言われている[5]。

恐らく最も古いものはヒトの伝来にまで溯らねばならない可能性がある。少なくとも、農耕文化は多くが国外からもたらされたものであり、それらは同時に多くの帰化植物をもたらしたと考えられる。現在も農村や畑周辺に見られる雑草にはそのようなものが多いのではないかと前川文夫は考え、これを史前帰化植物と呼んだ[6]。ただし、彼がその例として挙げたものの中には自生ではないかと言われているものもある。古代以降、江戸時代までは時代によって様々ではあるが国外との物流は持続し、帰化植物の種数は増えていったと考えられる。しかし、江戸末期からは物流は一気に激しくなり、帰化植物は急増する[7]。そこでこの時期以降の帰化植物を新帰化植物[8]、それ以前のものを旧帰化植物[9][10]と呼ぶこともある。一般的に帰化植物と言えば主として新帰化植物を指し、帰化植物図鑑などもほとんどがその範囲である。

特徴

帰化植物のほとんどは草本である。それも一年草が多い。これは、後述するようにその生育環境が人里であることもその理由のひとつであるようだ。しかし、樹木に例がない訳ではない。日本ではいわゆる帰化植物ではモクマオウなど、日本国内移入種で九州から中部地方へのアオモジの例があるくらいであるが、いわゆる史前帰化植物[11]ではクスノキやナギなどの例がある。海洋島では樹木の移入種の例も多い。これは一つの理由としては、原産の樹木が少ないため、木材生産用に持ち込まれる例が多いためである。日本国内ではあるが、琉球列島から小笠原諸島へアカギとリュウキュウマツが持ち込まれ、在来の植生を圧迫している。

分類上の位置は非常に広範囲にわたるが、群によって帰化種の多いものとそうでないものがある。キク科[12]とイネ科[13][14]の種が多いのが目立つ。これにマメ科を加えて「帰化植物の3大科」との声もある。これらはそれぞれに高等な分類群であることが知られている。しかし、同じように高等な群とされているラン科植物には帰化種がほとんどない。

侵入と定着

侵入の経路としては、植物の持ち込みを意図した場合とそうでない場合がある。全くそうでない例は、様々な機材に種子などが付着して持ち込まれる場合である。完全に意図して持ち込まれるのは栽培植物として持ち込んだものが野外に逃げ出す場合である。動物は、普通は逃げ出さない条件下で飼育されるが、植物はそのような配慮がなされないから、逃げ出すのは簡単である。おおよそは以下のようなものが挙げられる。

作物(ハマダイコン、クレソンなど)

薬用植物(チョウセンアサガオなど)

牧草(コヌカグサ、ナピアグラスなど)

園芸植物(ムラサキカタバミなど)

材木用の樹木(小笠原におけるリュウキュウマツなど)

その他:緑化用(シナダレスズメガヤ、ギンゴウカンなど)

この両者の中間として次のような場合もある。

栽培を意図して持ち込んだ植物に紛れて入る場合

作物には、その畑に生育する雑草が付随する。これらを特に随伴植物という場合もある。そのような雑草は作物の種子に紛れて収穫され、次回も一緒に播種されるように適応したものがあり、当然のように作物の種に紛れて運ばれ、一緒に持ち込まれる。牧草や被覆植物などではそれほど混入を気にしない例もある。

植物質ではあるが栽培を意図しないものに紛れて入る場合

例えば培養土とともに入る例である。日本では検疫で土の持ち込みが禁止されているが、ミズゴケなどは認められているので、それと共に入ることもある。その他、乾燥した植物を荷造り時の詰め物にしたものから入った例(シロツメクサが有名)もある。

普通は人為的に撹乱された場所に侵入しやすい。例えば都市のさら地などでは、放置すれば帰化植物ばかり生えてくることが少なくない。外国との物資の出入り口である港や空港には特に帰化植物が多く見つかる。同様に工場や駅などの物資の出入り口にも帰化植物が入りやすい。鉄道線路のバラストを敷き詰めたような厳しい環境であっても、むしろビロードモウズイカなどは好んで生育する。沖縄県などの米軍基地が所在する地域では、軍事物資にまぎれて帰化植物が侵入する事がある。沖縄県全域に生育する帰化種のシロノセンダングサ(タチアワユキセンダングサ)は、1969年代に嘉手納基地に侵入し、そこから広がったとされている(土屋・宮城、1991)。

多くの植物はそのような場所で繁殖するものの、すでに古くからの雑草で埋められている農村や、より自然環境の保存された場所にはあまり侵入しない。日本のタンポポに関しては、在来種とセイヨウタンポポの間にそのような関係があるとされ、都市化の指標生物としてセイヨウタンポポが指定され、その分布調査が行われたこともある。

帰化植物の優占する路傍

白い花はヒメジョオン・高く伸びたのはタチスズメノヒエ

しかし、日本では河原や湿地、池沼などでは外来種が侵入し、在来種に置き換わる例が少なくない。そのような環境はもともと一定の撹乱を受けつつ成立している側面があること、それに現在の日本では水環境に富栄養化などの環境悪化が進んでいることなどが原因とも言われる。

長期にわたって栽培されていながら、ほとんど逸出していない植物もある。例えばコスモスなど、河川敷などに大量に栽培される例も多いが、野生状態で見ることはまずない。高度に品種改良が行われたものも逸出しない。たいていはその過程で野外での競争には弱くなっているからと考えられる。それでも、交配で作出された園芸品種から野生化したヒメヒオウギズイセンのような例もある。

消長

セイタカアワダチソウ

国外の植物が新たに野外で生育しているのを発見された場合、それは新しい帰化植物と見なされ、報告記録される。しかし、それがそれ以降も生育を続けるかどうかは定かでなく、しばらくして姿を消すことも多い。かと言って消滅したとは限らず、実際に別の場所で発見されることもあるから、それがすぐに帰化しなかったとは判断できず、帰化植物として記録されたままであることが多い。したがって、帰化植物として記録されたものが、すべて現在も生育しているとは限らない。

侵入した帰化植物が大繁殖する例がいくつか知られている。日本ではセイタカアワダチソウが1970年代に大繁殖をしてあらゆる空き地を埋め尽くす勢いであった。逆に日本のクズのように、日本国外で大繁殖して問題になっている例もある。植物に限らず、移入種が大繁殖する例はよく知られており、これはその地域になじんでいない生物であるだけに、天敵がいないなど、生物群集としてその種の個体数増を抑制する仕組みが存在しないためと言われる。

一般的には、島嶼で帰化植物による弊害が大きい。特に海洋島では在来種が圧迫される例が少なくない。そのような島では在来の植物相が豊かでない例も多く、例えば有用植物の不足から多くの植物を持ち込んだ例も多い。海洋島では在来の植生がバランスを欠いている場合も多く、空いたニッチを数少ない種で埋めているから、侵入種の繁殖を可能にしているとも言われる。ガラパゴス諸島ではアカキナノキ(Chinchona pubescens)がマラリア治療薬として持ち込まれ、山頂部の景観を変えるまでに繁殖している。

繁殖するには、その場にその種の生存可能なニッチが存在しなければならない。移入種が繁殖するのは、原産の種でそのニッチを占めるものとの競争に勝つからであろう。一概には言えないが、一般に島嶼では原産種の競争力が弱いものと考えられる。人為的撹乱のある場所では、そのようなニッチを人間が明けているので侵入がたやすいと見られる。

他方、一旦は定着したかに見えても、その状態が続くとも限らない。セイタカアワダチソウの場合、現在では高さが2mにもなる群落を見ることは少なくなり、道端に見かける雑草の一つになった感がある。これは、この種を攻撃するアブラムシなどの天敵が出現したことや、従来の植物が根の伸び方の関係で使用できなかった肥料成分をセイタカアワダチソウは深い位置まで根が伸びる性質によって使用できたことにより大きくなっていたが、時間を経てその肥料成分を大方使ってしまったこと[15]、などが要因である。オオマツヨイグサやオナモミなどは、一頃は日本中にごく普通に見られたものであるが、現在は見ることがほとんどなくなっている。オナモミについては、その代わりにオオオナモミなどがよく見られるので、より強力な新しい帰化種に置き換えられたとも考えられる。

上記のセイタカアワダチソウの場合、日本の生態系の一員として収まったという見方もある一方で、それによって生息域を奪われた植物(タコノアシなど)、及びそれに関連をもっていた動物群集のことを無視できないとする意見もある。

帰化率

ある地域の植物相のうちで、帰化種の率を帰化率と言う。日本では地域によって差はあるが、1930年代には数%と推測され[16]、1960年代では10%以下[16]、2000年時点では10%前後とされ、都市部では20%を越す地域もある。

日本国外ではアメリカ合衆国が帰化率が高いことで知られ、在来種17000種に対して帰化種が5000もあり、平均した帰化率でも29%、州によっては45%に達するところもある。海洋島ではハワイのマウイ島が47%とやはり高い値となっている。逆にアフリカはタンザニアのンゴロンゴロでは3%と非常に低いことが知られている。

(略)