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オールド・キャンパーの独り言

木の芽起こしの雨

2017.03.14 09:22

 安曇野市穂高川の畔に早春賦の歌碑があります。「春は名のみの風の寒さや」まさにそのとおり、朝の気温はまだ低く霜が降りる日が続いています。

 季節の言葉を探していると「木の芽起こしの雨」と言う言葉がありました。「春先に降る冷たい雨のこと」という説明もありますが、「春になって気候が暖かくなり始めた頃に降る雨で、静かに降る、穏やかな雨のこと」という説明が一番気に入りました。

 春先の雨と言ってもみぞれ混じりの冷たい雨では、「木の芽起こし」とは呼べないような気がして「静かに降る、穏やかな雨」という言葉が必要だと感じています。

 二十四節気七十二候によれば雨水・末候を表す言葉に「草木萌動」と言うのがあります。今年の暦で見ると「雨水・末候」「草木萌動」は2月28日になっていますが、「啓蟄・初候」「蟄虫啓戸」が3月5日となっていて、どうやら草木の芽が動き出した後に土の中に潜っていた虫たちが動き出すという順番のようです。

 いずれにしてもやがて春分。草木が一斉に動き始めるのに先駆けて「あれ?雨かな?」と思わせるように「静かに」「穏やか」に降る雨を先人たちは「木の芽起こし」と呼んだのでしょう。

 同じように「花を催促する雨」という「催花雨」と言う言葉もあるようですが、この雨は春とは言ってもナタネの花が咲く頃の雨で「菜種梅雨」とも呼ばれる長雨のことのようです。

 季節の言葉の説明では、「木の芽起こし」も「催花雨」も同じものだというものもありましたが、「春先に降る冷たい雨のこと」という解釈で「木の芽起こしの雨」も「催花雨」も言葉として同じように使われていると思われたのでしょう。

 農村の日々の暮らしを農作業と結びつける「二十四節気」も今では、季節を表す言葉として生き残っているだけで、言葉遊びとしか考えられていないのかも知れません。

 「木の芽起こし」のような味わい深い日本語もやがては一般の日本人に理解してもらえない言葉になってしまう運命なのかも知れません。