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Buddy's English College

ちゃんと分かる❗クジラ構文をそのまま理解❗

2021.09.18 13:46

 たまに生徒さんから解説してほしいと言われる「クジラ構文」。今回はこれをテーマに、おっちゃんぬ独自の訳し方(これがめっちゃいい❗)を紹介したり、文法的に解説してみたりしたので、ぜひ読んでくださいね❗ただし、英文法学習にあまり慣れていない人には少々難しいので、せっかちな人は以下の 4 項目のうち、1 と 2 だけ読んでください

 また解説の一部は、僕が高校生の時に理屈が合うように作ったものなので、個人的には学術的な裏付けを持っていません。ただし理屈は合うのでご安心くださいませ。

(英文法に詳しい人は「あとがき」も読んでください)



⭐ 1. クジラ構文とは

 まずは知らない人のために、一般的に言われているクジラ構文の解説を記します。


 A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
 クジラが魚ではないのは、馬が魚ではないのと同じ。


これは何のために言う文かというと、クジラが魚ではないことを、馬が魚ではないという例を引き合いに出して説明するためです。


 構文としては、A is no more B than C is (D). という形で、「A が B ではないのは、C が D ではないのと同じだ」と訳します。明らかに C ≠ D と分かる例を引き合いに出して、同様に A が B ではないことを示しています。


 多くの参考書でこのような解説がされています。

 しかしながら「C が D ではない」という否定文が英語には入ってないし、例文にある a horse is a fish(馬は魚である)という部分は否定文として訳さないと意味が通らない。だから非常に分かりにくくて、よく話題に上がる構文なんです。


 しかし❗この構文が使われる英文の内容によって than 以下を否定文として訳すと間違うことがあるんです❗その例も後ほど紹介します❗


 今回のブログでは、日本語の感覚よりも英語の感覚を持ってこれをスッキリ分かるようにしましょう❗だって、この文は英語ネイティヴによって生み出されたのですから、無理にきれいな日本語に書き換えるのはそもそも別スキル、翻訳という分野です❗英語を理解するところまでができれば良いわけです❗この乖離を理解した上で学びましょうね❗



⭐ 2. はじめに結論❗

 説明がなかなか長文なので、せっかちな人のために先に結論をお伝えします。ただし解説がないと何でこの結論に至るのかが分からないので、できれば最後まで読んでね❗


 A is no more B than C is D. は次のように理解しましょう❗


「A が B である度合いは、
C が D である度合いよりまったく高くない」


つまり than の後ろの例を使って、than の前で述べていることとは「差がない(=同じだ)」と説明しています。つまり、


「A が B だって言うのは、
C が D だって言ってるのと同じだよ」


という感じです。


これをクジラの文に適用すると、


 「クジラが魚である度合いは、馬が魚である度合いよりまったく高くない」

→「クジラが魚だって言うのは、馬が魚だって言ってるのと同じだよ」という感じ。


 これさえ分かっていれば十分。日本語で理解するときには「馬が魚である度合いはそもそもゼロだし、クジラが魚である度合いがそれを越えないということは、クジラが魚である度合いもゼロだ」と考えれば OK です。

 もしきれいな日本語に翻訳する必要がある場合には 1 で記した訳を当てれば OK です。上手に和訳する力を見るためのテストでなければ、意味さえ分かればいいですよね。


 また、形容詞や副詞の比較級(taller、more beautiful など)は、そもそも原級(tall、beautiful)より「程度や度合いが高い」ことを表します。何より高いのかが than の後で述べられているので、A is no more B than 〜. のように比較級と than がセットで出てくる、またはセットになっていなくても意味されている場合には、no は比較級を否定しているのであり、A ≠ B と言いたいのではありません。クジラの文の場合、「クジラは魚ではない」と文字で書いているわけではないんですね。


 ex) He is no taller than me. (彼は僕と同じ身長だ)


 この文では、He is not tall.(A ≠ B:彼は背が高くない)と言っているのではなく、taller(もっと高い)ということは全くない、と no で程度の差を打ち消しています。その基準が than 以下の「僕」の背の高さにありますが、そもそも「僕」がどれくらい高いのかは「僕」の身長を知っている人にしか分からないですよね。このことが理由で、クジラ構文が使われているいろいろな文では、基準を表す than 以下の部分が、そもそもどれくらいなのかが聞き手や読みてにとって分かりにくく、でも実際の関係者には分かることがあります。


⭐ 3. 理解のための下準備

 ではなぜ 2 のような結論になるのかを理解するために材料を揃えます。


 関係ない話?って思うかもしれないけど、あとでスッキリ理解できるようにするためにちょっと我慢してA から C の 3 つの解説を読んでね❗



✅ A. 比較を表す文には省略されているものがある!

 まずはよく見る英文で、省略されているものがどれだけあるか見てましょう。それぞれ、矢印の後が省略せずに全部書いたバージョンです。


 I am as tall as he (is).(僕は彼と同じくらい背が高い)

→ I am as tall as he is tall.(元は I am tall. と He is tall. を使ってまとめた文)

 I am taller than he (is).(僕は彼より背が高い)

→ I am taller than he is tall.(これも元は I am tall. と He is tall. を使ってまとめた文)


 be動詞については省略してもしなくてもいいですが、どちらも背の高さ tall について述べているのが明白なので、2回めの tall は言う必要がない

 このように、比較するときの基準(この場合は tall)は一回しか言わない。しかし元をたどれば、比較対象を示す文の中には含まれている。クジラ構文にもこの比較の基準が本当は入っていますが、省略されています。

 なお、「基準」と言っているのは、どちらの文も「私は背が高い」と言っているのではなく、「高さ」に基準を置いているだけだから。つまり、例文の「私」も「彼」も、背は低いかもしれない。



✅ B. 「度合いの高さ」を表す much の使い方

 I’m very much a fan of Harry Potter. (僕はハリー・ポッターの大ファンです)

 この much は a fan を修飾する副詞で、「どれだけファンであるのか」の度合いが高いことを表しています。very を伴ってその度合いがとても大きいことを表し、「大ファン」や「めっちゃファン」という意味になります。


 ついでに否定文だと次のようになる。

 I’m not so much a fun of Harry Potter. (否定文の場合 very はあまり使わない)


※ 補足

 I'm much a fan of 〜 のような使い方は、されることもあるけどあまりされず、I can't say I'm much a fan of 〜 のように否定的な文ときに much が単体で使われる。これが理由で上記の例では very much としました。


✅ C.  more A than B


 more A than B「B よりも A 」という構文があります。これについて考察してみましょう。


 Tom is more a friend than a boyfriend.(トムは彼氏というより友達だ)

 日本語を見てみると「トムは彼氏」という部分は否定になっていない。でも彼氏ではないことが文意から明らか


 分かりやすく説明すると「トムが彼氏である度合いより、トムが友達である度合いのほうが高い」と言うことで、「トムは彼氏ではない」と「文の形ではなく、意味の上で否定」していますね。クジラ構文も同じで、意味の上で否定しているんですね。


 ここで much の意味と、「基準」を思い出しましょう!


 much は「度合い」を表しますね。じゃ、「トムが友達である度合いが高い」、そして「トムが彼氏である度合いが高い」という英語を作ってみましょう!ただし、これから示す英文は理解を助けるためのもので、通常は言わない英文です。完成した英文はちゃんとした英語です。


 Tom is much a friend. Tom is much a boyfriend.

 

 ではこれらの英文をつなげて、トムが友達である度合いの高さと、彼氏である度合いの高さを比較し、友達度のほうが高いことが分かる英文にしましょう。この場合、比較級を使うので、原級の much が more になります。


 トムが友達である度合いのほうが高い、トムが彼氏である度合いより。

 Tom is more a friend than Tom is much a boyfriend.


 A で学んだように、同じ意味を表す単語は通常省略しますし「基準」(この場合は度合いの高さを表す much で more として使われている)は一度しか言わないので、完成した英文は次のようになります。


 Tom is more a friend than a boyfriend. 



 これでクジラ構文の more a fish の部分が分かりましたよね?



 ところでこの英文の意味を前からとってみましょう。

 トムが友達である度合いがもっと高い、トムが彼氏である度合いより。


 この英文はよく、more A than B「BというよりはA」という構文として学ばれていますが、その成り立ちは説明したとおり、「度合いの比較」で、much を「基準」として扱ったものです。


 また、この訳についても少し考察してみましょう。トムはもしかしたら、ギリギリ彼氏候補かもしれないし、まったく彼氏候補ではないかもしれません。この英文だけではそれは分かりません。



⭐ 4. クジラ構文をそのまま理解しよう❗

 「そのまま」とは、英文には現れていない「馬が魚でないように」という否定文を使わずに、英語で示されたままに理解するということです。英語で考え、英語で話すときには日本語に訳さないですからね❗


 しかも「そのまま理解」しようとすると、


否定文を使ったら間違うじゃん❗という例があることに気付きます❗


 ではクジラ構文をちょっと変形させて、さっき学んだ more A than B にして英文を作ってみよう!

 A whale is much a fish. (クジラが魚である度合いは高い)と  A horse is much a fish. (馬が魚である度合いは高い)を比較します。


 A whale is more a fish than a horse is much a fish.

 クジラが魚である度合いはもっと高いよ、馬が魚である度合いよりも。


 あえて間違った文を書きましたが、文の形は分かりやすいと思います。


しかしこのままでは、クジラが魚である度合いが、馬が魚である度合いを越えてしまいます。度合いの差を完全に打ち消してゼロにするために more を否定しましょう! 否定語にはゼロを表してくれる no を使います。


 A whale is more a fish than a horse is much a fish.

→ A whale is no more a fish than a horse is much a fish.

 クジラが魚である度合いがもっと高いなんてことは絶対にないよ、馬が魚である度合いの高さよりも。


 つまり、


 「クジラが魚である度合いは、馬が魚である度合いと同じだ。」


という意味になります。


これが本来の意味です。



同じであるというためです。


クジラと魚の関係は、馬と魚の関係と同じだ」と言いたいんです。



 さて、ここまでは英文の形とその形から生まれる意味を考えてきましたが、クジラ構文に登場する「動物についての常識」を入れて解釈してみましょう。


 馬は魚じゃない。だから馬の魚度(さかな度)はゼロで、クジラの魚度は馬の魚度より上ではない (no more) のだから、クジラも魚ではないよ。


 これで意味が完璧に分かりましたが、あくまでもこの有名な構文に「馬と魚の関係」を盛り込んできれいな日本語に訳すと、たまたま than 以下の意味が否定になるだけです。クジラ構文を使った他の英文では、than 以下の内容が常識で判断できるものや、関係者のみが分かるもの、否定はできないものなど様々なものがあります。


意味が分かったところで、省略すべきものを省略しましょう❗



A whale is no more a fish than a horse is much a fish.

→ A whale is no more a fish than a horse is (a fish).


 完成❗

 

 ここまで読んでお分かりいただけたと思いますが、このクジラ構文は「度合いの比較(much → more)」をしていて、さらに「度合いには差がない (no) 」だから「同じだ」と言っているんですね。


 英文を読んで、no more a fish と来た時点で、度合いの差について言っているんだというのが分かります。


 元は much a fan の例と同じなんです。そして、元々入っていた than の後の much も、A で学んだように省略されています。

 

 しかしここから最終的に読み取れる意味とその和訳は、「クジラって魚じゃないし、それは馬が魚じゃないのと同じだよ」で、これがクジラ構文の一般的な和訳として、いろんな参考書に載っています


 つまり、プロセスをすっ飛ばして、日本語で理解しやすいように結論だけ出してしまうので、「馬は魚じゃない」を意味するはずの a horse is not a fish がどこにも現れず、学習者が混乱する元となっています



✅ 否定で訳すと間違う❓

 ここでクジラ構文に親しんでもらうために、参考文献も用いて他の単語を使った例をいくつか挙げてみましょう。混乱の元となってしまう伝統的な和訳を入れます(入れないほうがいいかもしれないけど)が、矢印のあとに僕の解釈の仕方を入れます。また参考例と僕の解釈が異なる場合には、その解説を付します


・Tom is no more a father to me than he is to you.(自作)

 トムが僕にとって父親ではないのは、彼が君にとって父親ではないのと同じだ。

→ トムが僕にとって父親である度合いのほうが高いということはまったくない。彼が君にとって父親である度合いよりも。

→ トムが僕にとって父親だって言うのは、彼が君にとって父親だって言ってるのと同じだよ。

[解説]

 もしトムが you にとって少しは父親のような存在であるならば、自分にとっても少しは父親のような存在であると言えるので、伝統的な訳し方では間違う可能性がある。何が真実かは発話する人にしか分からない。しかしそもそも no more のように、程度の高さを打ち消して伝える文なので、多少否定的な見方をするが普通とも言えます。



・He is no more able to speak Chinese than I am.(改訂三版英文法解説)

 彼は私と同じで、中国語を話せません。

→ 彼が中国語を話せる度合いのほうが高いということはまったくない。僕が中国語を話せる度合いよりも。

→ 彼が中国を話せるって言うのは、僕が中国語を話せるって言ってるのと同じだよ。

[解説]

 英文法解説と僕の訳が大きく異なります。その訳は場合によって正しいと言えますが、必ずしも「私と同じで、中国語を話せません」とはなりません。あくまでも程度が同じとだけ言っているので、「私」が少し話せるのであれば、それを基準にして「彼も同程度だけ話せる」となります。つまり真実を知っている人にしか正確な訳がしにくいということになります。この点、クジラを使ったクジラ構文では、馬が魚ではないことが明白なので、否定文として訳しても問題ないことになりますが、あくまでも偶然です。



・A man can no more live without sleep than he can live without food.(英文法詳解)

 人が睡眠なしで生きられないのは食物なしで生きられないのと同じである。

→ 人が睡眠なしで生きられる度合いのほうが高いということはまったくない。食物なしで生きられる度合いよりも。

→ 寝ないでも生きられるって言うのは、食べないでも生きられるって言ってるのと同じだよ。

[解説]

 この場合、睡眠なしでも食物なしでも、多少の差はあってもどちらもそれほど長くは生きられないだろうから正しい訳と考えていいでしょう。



・He is no more popular than you are.(英文法詳解)

 彼はきみ(が人気がないの)と同様に人気がない。

→ 彼の人気がある度合いは、僕の人気がある度合いより上ということはない。

→ 彼に人気があるって言うのは、僕に人気があるって言ってるのと同じだよ。

[解説]

 これも you に少しは人気がある場合も想定できるので、英文法詳解の訳が必ずしも正しいとは限らない。芸能人同士での話であった場合なら、どう考えても一般人よりはかなり人気がありますしね。



・A home without love is no more a home than a body without soul is a man.(改訂新版ロイヤル英文法)

 愛のない家庭が家庭でないのは、魂のない体が人間でないのと同じである。

→ 愛のない家庭が家庭である度合いは、魂のない体が人間である度合いより上ということはない。

→ 愛のない家庭がそれでも家庭だって言うのは、魂のない体でもそれは人間だって言ってるのと同じだよ。

[解説] 

 詩的ですね(笑)反論する術がなく間違っているとは言いにくいので、正しい訳と言えるでしょう。



以上です❗ 長文を読んでいただきありがとうございます❗お疲れさまでした❗  また次のブログでお会いしましょう❗




⭐ あとがき


 クジラ構文の解説をするにあたって僕がこだわったのは、a horse is a fish の部分です。いろんな参考書で「明らかに C ≠ D と分かる例を引き合いに出す」と解説されていますが、高校生のときにこれがど〜〜〜〜〜しても納得できなかったんです。 


 そこで原点回帰し、3.A で解説したように、本来 than の後にあるはずの形容詞や副詞が省略されているはずと考え、more の原級の much を使うことを思いつきました。また than 以下を否定文で訳すことへの大きな疑問もありました。

 冒頭で述べた「個人的には学術的裏付けがありません」の理由はここにあります。しかも高校生の頭脳ですので、信じていいのか、、、かと言って自分で納得してしまったし、それ以上に納得できる解説も思い浮かばなかったし、さらにはそれ以上には大して研究しなかったということです。


 他により良い考えをお持ちの方がいらしたら、何かの機会にぜひ一緒に話しましょう❗