平和を語り平和のために働く
翻訳:佐藤 靖子
非暴力キャンペーンは暴力に勝る - その方法
2016年12月22日午前11時50分、ドナルド・トランプがアメリカ合衆国の大統領に就任する前、彼は私たちに一足早いクリスマスプレゼントをくれました。
「世界が核について正しく認識する時が来るまで、アメリカは自国の核能力を大幅に強化、拡大する必要がある。」とトランプはツイッターで発表しました。
新たな軍拡競争の到来を告げるように見えるトランプのツイートは、無理からぬ不安を引き起こしました。彼は本当は何を意味していたのでしょうか?専門家の一人が指摘したように、それは兵器と配備の一方的な拡大を提案する米国の政策を単に言い直しただけ(寛大な見方をすれば)と解釈できるかもしれません。確かにそのツイートは、ロシアのプーチン大統領による、ロシアは自国の核能力を強化する用意があるという発言に追従するものでした。その後、トランプはインタビューで「核兵器は縮小すべきだ」と発言しており、方向転換を示唆したように思われました。しかしその曖昧さ、慎重さを欠く明瞭さの欠如、その場限りの意見表明が無条件反射的な反応を煽り得る今日のソーシャルメデイア世界へのアピールという面で、彼の最初のコメントは危険です。もしツイートにより核兵器政策を策定する時代になったら、私たちを助けるのは天国でしょう。
こうした混沌とした時代に最後に必要なのは宣言です。しかし、それは意図せずして国家間の緊張を高める恐れがあります。リサージェンスは半世紀前、冷戦の最中に平和のためのキャンペーン運動の一環として生まれました。私たちはそのコミットメント(目標)を持ち続けています。暴力的な言葉は暴力を生みます。
タイミングよく、本誌の基本理念のコーナーでマーク・カーランスキー (Mark Kurlansky) が非暴力の歴史を考察しています。平和的な政治的変革をもたらし、社会正義を促進する上で非暴力キャンペーンは今なお成功し得るという彼の結論は、暴力に代わる選択肢が常に存在することを思い出させてくれます。
そのメッセージは、本号を通じて鳴り響いています。例えば、環境活動家の多くはずっと以前から非暴力の原則を受け入れてきました。また、フィオナ・レイノルズ (Fiona Reynolds) が、地方の保全に関する2世紀にわたるキャンペーンや、私たちの町や都市の環境保護の記事の中で詳述している通り、「美のための戦い」は終わりのない献身を必要とします。
別のキャンペーンでも、私たちの自然とのつながりや自然への恩義について認めているものがあります。これは、ジュールズ・プリティ (Jules Pretty) とエセックス大学の同僚たちにより公開されました。彼らの環境意識 (Green Mind) に関するマニフェストは、より健康的、より持続可能で、もっと愉しい生活のための処方を提示しています。
さらに分野を離れて、環境や社会正義のキャンペーンが暴力に打ち勝つのに実際どう役立つのかについて2つの記事が光を当てています。ジャネット・マロ (Janet Maro) - Thembi Mutch (テンビ・マッチ) の人物紹介の対象者 - はタンザニアの農業活動家です。彼女の活動は、持続可能な方法により零細農家の生活向上を助けるだけでなく、農家と畜産業者間の衝突も減らしています。一方、マリで働くイギリス人生物学者のスーザン・キャニー (Susan Canney) はオリバー・ティッケル (Oliver Tickell) に、テロや政治的混乱の克服を試みている国において、共同保全が象を密猟から助けるのにどう役立っているかを語っています。
本号には刺激的な読み物がたくさんありますが、この巻頭言がツイートで始まったので、別のもの - たくさんの、現実的な記事 - で締めくくりましょう。鳥の鳴き声の美しさについてのマーク・コンスタンチン (Mark Constantine) の記事は単に保全を呼びかけるものではありません。それは、聞きさえすれば、自然の性質を高め、回復させることを私たちに思い出させるものです。
リサージェンス & エコロジストの本号をお楽しみ下さい。平和でありますように。
グレッグ・ニール(Greg Neale)はリサージェンス & エコロジストの編集長です。
Speaking Peace and Working for It • Greg Neale
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301: Mar/Apr 2017