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まごころの対話によるメンタルケア

介護のキーワードは、ユマニチュード

2021.09.19 07:10

こんにちは!

 聴いて癒す専門家、鈴木美保子です。


 あなたは、ユマニチュードという言葉を聞いたことがありますか? 


 フランス語のHumanitude =「人間らしさ・人間らしくある」という意味の語に語源をもち、高齢者ケアとりわけ認知症の人のケアの技法として、近年注目されているのです。 


 人とは何か・ケアをする人とは何かという哲学が、その技法のベースにあります。


 私が、初めてユマニチュードという言葉に出会ったのは、メンタルケアスペシャリストになるための講座でした。


 慶應義塾大学看護医療学部の先生による「高齢者や認知症の方々とのかかわりと生活支援」という授業のなかで、その考え方・技法を知り、大いに関心をもったのを機に、本を買い込み夢中になって勉強しました。


 その内容をひと言で言い表すならば、次のようになると思います。


 ケアする人もされる人も人間同士であって、互いに認め合わなければならない。

 ケアする人は、される人の尊厳に徹底的に配慮し、人間らしくコミュニケーションをとることによって、その人が人間としての自信と誇りを取り戻す(維持する)よう努めなければならない。


⇒ではここで、 写真の本のなかにも挙げられている入浴を例に、具体的に説明してみましょう。

 (*世界中の多くの介護現場において、このような実態があり、変えていこうという機運が高まっているというお話を本で読み、ここに紹介します。現場を知り尽くしているわけではない私個人が、日本の介護現場での出来事を具体的に指摘し非難するものではありません。) 


 認知症により、物事の理解がしにくくなった方を入浴させることが難しいということは、高齢者施設のスタッフさんからよく聞く話です。 仮に、高齢者施設に入居している認知症を有する対象者をAさんと設定します。


 ⇒介護者は、 


 ・Aさんのために、清潔を保たなければならない 

 ・他の人の入浴時間計画が詰まっているから、急がなくてはAさんをお風呂に入れてあげられなくなる 

 ・スケジュール通りに入居者全員にケアを行き渡らせることが、自分に課された職務である 


 そんな風に思って、当たり前の日常として、同意が得られないまま入浴させようとします。


 ノックとともに入室し、「お風呂の時間ですよ」と言うが早いか、Aさんを車椅子に乗せ、バスルームに連れて行って衣服を脱がせます。


 Aさんが抵抗すればするほど、できるだけ早く終わらせようと、数人がかりで急いで体を洗い、流し。。。。Aさんに話しかけることなく、目を合わせることもなくテキパキと作業を進めます。


 あるいはまた、本人の危険を避けるために、あるスタッフがAさんが暴れないように体を押さえつけ、その間に他のスタッフが体を洗い流してあげます。正確に手際よく、作業に集中して黙々と。


 ⇒これを今度は、Aさんの立場になって考えてみましょう。


いきなりやってきた人に浴室に連れて来られ、無理やりに衣服を脱がされ、力づくで体を押さえつけられた挙句、お湯を浴びせられる。


 そういった認識であれば、Aさんにとってこの入浴は、乱暴されているのと同じ。 


 不安や恐怖を感じ、自分を防御するために攻撃的になるのも、無理はありません。


 ⇒では、これをユマニチュードに則って行うとどうなるのか。 


 ノックをし、返事を待ってから入室するのが基本。 

 返事があるまで待つことで、Aさんに人に会う心の準備をする時間を与えます。


 入室したら、Aさんの目を正面から見て、挨拶を交わします。 

 「こんにちは、Aさん。ご気分はいかがですか?今日は良いお天気ですね?」などと。


 通常私たちは、用事があって人のお宅を訪問した際に、いきなり要件を切り出しませんよね。

 まずは挨拶をしてから、本題に入るのが普通です。


 ところが病院やホームなど、ケアする側とされる側がハッキリと分れている場合には、ケアする人はされる人のプライベート空間・時間を軽視しがちであり、そこに踏み込んだら即座に要件を持ち出し、行動に移ることをしがち。 

それが、多くの現場の実態だといいます。


 ユマニチュードケアでは、まずはAさんに対して「あなたに会いに来たのだ」というメッセージを伝え、人と人のコミュニケーションが成立してから、「Aさん、一緒にお風呂に入りませんか?私がお手伝いさせていただきますよ。」と切り出すのがルール。


それでもAさんの同意が得られなければ、「そうですか。では、また後で来ますね。」といったん引き下がり、時間をおいて再び同様に試みます。


数回繰り返してみても拒否が強い場合には、介護者は引くことが大切だそうです。


うまくAさんの同意が得られたら、脱衣もできるだけご本人がやるよう促し、見守りつつ、タイミングよく手助けを加えます。 


 入浴中も、「Aさん、右腕を洗いますよ。右腕を上げてくださいますか?」そうお願いして数秒待つ。 

「温かいですね、気持ちがよいですね。」などと、Aさんの顔をみて目を合わせ、終始話しかけながら入浴を進めます。

こんな具合です。


強制的なケアを極力なくすこと。


これが、互いに人と人として認め合い、ケアされる人の人間としての尊厳を守ることの基本。


これが、ユマニチュードです。


このユマニチュードに関連して、私自身が、母の入居先ホームを決める際に体験したことについてお話したいのですが、すでに話が長くなり過ぎました。


続きは、次回にいたしましょう。 


それでは皆様、ご機嫌よう!