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カルテット

2017.03.15 11:35

ドラマ「カルテット」を観ている。

次週で最終回。

ドラマを見る習慣がないので、久しぶりに全話観たドラマだ。

それだけ魅力的だったと思うし、実際に話題にもなっている。

視聴率もほどほどで、「観ている人はハマってしまう」タイプなのだろう。

とはいえ、好きだから観ているうちに、どうにも納得できない点が多数でてきて

しまう。

そこらへんをすっ飛ばして「いいドラマ」というのも違うのかなあと思って。

●まず、すずめちゃん。

演じる満島ひかりさんは、ぼくが一番好きな女優さんだ。

彼女は過去に、自らの意思ではないが「人を騙した過去」がある。それによって

人生が狂わされた人だ。なのに、ドラマ序盤から彼女は特に避けられな い事情

もなく人を騙すことを選択している。「絶対に嘘をつかない」キャラなら納得い

くのだが。

それと、彼女は恋愛に関してとてもピュアな描写があるが、実際の満島さんは酸

いも甘いも経験された女性だということを、観ている側はみんな知って いる。

いくら「役と本人は違う」と言っても、ちょっと無理があるかなと。

●別府さん。

松田龍平さんは、こういう役をやらせると、画面に映ってるだけで笑えてしまう

のが素晴らしい。

ただ、そのキャラとしてやっぱり「やってはいけないこと」をやったと思っていて。

なんで同僚の女の子に手を出してしまったんだ。

そりゃ言いたいことは分かる。

大人の恋愛の矛盾なんかを描くとああなるんだろうけど、

それが後半からノイズになってくる。

彼はマキさんに対し、よく言えばプラトニック、悪く言えば狂気的な愛を持って

いる。

音楽に対しても誰よりも真面目で、サボらないことを信条としている。

そこでノイズが邪魔するのは「でもどうせ、すずめちゃんをキープと思ってるん

じゃないの?」とか、「音楽もどこかで妥協するんじゃないの?」と思 うのだ。

物語中に、明確に別府さんが成長した描写はないため、彼のキャラに対し信頼が

おけないままなのだ。

●マキさん

第一話で彼女は「自分が生き残るためなら、他人に情けをかけている余裕はな

い」ことを主張した。

ところが、その後の彼女は特にその主張を守ることはない。

演奏前に「不安だ不安だ」と慌てたり、犯罪を犯した旦那に対し、逃げようと

言ったり警察に行こうと言ったりする。

行き当たりばったりで生きているようにしか見えない。

しかし彼女には、そうは出来ない過去があるはずだ。

より慎重に、より人の目を気にしながら生きなければならない事情がある。

そのへんがいい加減になっている。

というか、声が小さいとかいう設定は何だったのか。

●アリスちゃん

このドラマ最大の収穫は、吉岡里帆という女優の発見であると思っているんだけ

ども、確かに彼女は素晴らしい。

彼女が画面にいるだけで「いやな感じ」になるし、笑ってしまうこともたくさん

ある。

が、まっっっっっったく必要ないではないか!!!

物語にどう絡んでくるのかと思ったら、何も絡まないまま退場していった。

脇役だからそれでいいとは思わない。

そういうのは「余計なキャラ」だと思う。

彼女を通じて成長をした人もいないし、損をした人も実はいない。

これだけの逸材を引っ張り出してきておいて、それはないだろうと思ってしまう

のである。

●全体に対すること

結局のところ、このドラマは背骨がないまま終盤に来てしまった。

音楽という夢を実現する話なのか、複雑な恋愛感情を描く物語なのか、過去を清

算する話なのか、どっちつかずなのだ。

そしてそれらの要素に対して特にリンク付けはされていないため、「音楽は音

楽」「過去は過去」「人生は人生」と別パートで描かれる。

となると、どちらに対しても誠実であるように見えてこない。

物語を飽きさせないためだろうが、マキさんに最初は「殺人者疑惑」があった。

そのケリのつけ方も特に必然性は無かったし、ましてや今の「偽戸籍疑惑」も、

唐突すぎてポカンとするだけだ。

何の伏線もないものをクライマックスに持ってこられても、それがどのような結

果になるのかに興味をもてない。

●最大の失速

このドラマの最初にあった魅力は、個性を持った人間が四人集まったことによる

化学反応だったはずだ。

それは、主演の四人の役者がいずれも実力者であるため、ただ喋っているだけで

も推進力があった。

ところが、物語は後半になるにつれその魅力は無くなっていく。

キャラクター同士が仲良くなるにつれ、個性が消えてしまったからだ。

具体的には第九話、家入さんやすずめちゃんが自分の思いを語るシーンがある

が、正直なところ、それらのセリフは誰が言っても問題ないセリフとなっ ている。

セリフのためのセリフであって、キャラクターからこぼれてくる言葉ではないと

思うのだ。

となると、もともと「過剰なセリフ」が持ち味の脚本が、途端に「くさい」ドラ

マという弱点に変わってしまう。

「人間ドラマ」から「人間性」が欠けてしまったことがドラマの失速であったと

思う。

●ここまで文句をつけておいて、さぞ面白くないドラマなのだろうかというと、

「いや、すごい面白いよ笑」と人には勧める。

ジェットコースタームービーだとかではない。

コーヒーカップムービーみたいなところか。

ぐるぐると目眩を起こすような展開に対して「あーあ、気持ち悪かった、また乗

ろう」と思えるかどうか、という話である。