量子力学について8枚のスライドでまとめてみたら
時空について記述するのが相対性理論ですが、その時空上で物や力がどう記述できるかというのが量子力学です。まずは、物や力がどのような状態にいるかを説明する際に必要な、ベクトルについてお話したいと思います。
完全規格直交系とは、普通の基底のことです。例えば、2次元の平面上の位置を説明する場合、まず横と縦をどうとるかが重要です。横をこの方向と決めたら、普通は縦をそれと垂直の方向に決めます。基準となる方向を互いに垂直にとる条件のことを、直交条件と言います。また、位置を伝えるためには、横にいくつ、縦にいくつ動いたところと言う必要があるので、基準となる大きさ(cmなど)を決めておく必要があります。この基準となる大きさを全ての方向(今の場合横と縦)で1に揃える条件を規格化条件と言います。また、この基準となるベクトル(今の場合、横に大きさ1のベクトルと、縦に大きさ1のベクトル)を基底と言います。更に、次元の数だけ独立な基底があることを完全系をなすと言います。例えば、3次元で話をする場合には横と縦では完全系は張れず、高さ方向にも基底が必要になります。
次に、状態についてお話します。1次元の状態というのは、状態が1個しかないので、状態の重ね合わせというものを考えることができませんが、2次元なら、2個の状態の重ね合わせで記述することができます。この状態の重ね合わせというのが、量子力学の重要な概念です。例えば、電子のスピン(自転のようなもの)が右回りの状態と、左回りの状態を半分ずつ重ね合わせた状態だとすると、スピンの向きを測定した時、半々で右回りか左回りだと測定されます。ただし、仮に右回りだと測定された場合、1度測定されると状態が確定するので、続けて測定しても右回りのままです。
エルミート共役とは、行列の複素共役をとって転置したものです。状態をベクトルとして記述すると、ベクトルをベクトルに写す役割を持つ行列は、状態を状態に遷移させたり、物理量を表したりすることになります。エルミート行列が数で言う実数、反エルミート行列が数で言う虚数に対応していると大雑把に考えておくと、後の理解が楽になります。
量子力学が前提としているのが交換関係です。位置xと運動量pの交換子[x,p]=xp-pxが虚数として残ると、その分だけ物がぼやけて、大きさを獲得します。この時、運動量は位置の微分で書けるので、空間的な変化を表していることが分かります。同様に、エネルギーEは時間的な変化を表していることが分かります。
エネルギーは時間変化を表しているので、これと対応する運動量と位置の関数を導入すると、時間的な変化と空間的な変化を関係付けることができ、これをシュレーディンガー方程式と言います。
ネーターの定理によると、並進対称性があれば運動量が保存するし、時間発展対称性があればエネルギーが保存することが分かります。ここで、並進は移動、時間発展は時間の経過の意味で使っています。先ほどの逆を言うと、どこかで運動量が変われば、そこで変なことが起こっているし、ある時点でエネルギーが変われば、その時変なことが起こっているということで、そういうことを対称性が破れていると表現しています。
ハイゼンベルクの運動方程式は、状態の時間依存性を演算子に移すことで得られます。
状態を位置の関数として表すこともできますが、運動量の関数として表すこともできます。この変換をフーリエ変換と言います。ところどころで係数として出てくる2πを導出するためには、フーリエ級数展開というものを導入して、級数展開の範囲として無限大の極限をとる必要があります。
量子力学は結局交換関係だと知り、そのおかげで物が大きさを獲得し、運動量やエネルギーという把握しづらいものを位置や時間という直感的に分かりやすいものの微分で表せると知った時は、この世界をよりいとおしく感じるようになりました。