どうしても語りたい一冊/時を戻してでもやりたいこと。【コラム02】
先日、ネットを見ていたら面白いコラムを見つけました。
“どうしても語らせてほしい一本”
これは映画の作品コラムでライターさんたちが好きな映画について語っているものです。
それで前回ちょうど一冊、絵本についてブログで語った私は“どうしても語りたい1冊”というコーナーとして今後連載していこうと閃いて、今回は既に第二回として語っていきたいと思います。
今回はエドワード・ゴーリーの『思い出した訪問』という一冊から。
テーマは「時を戻してでもやりたいこと」です。
私には今でも忘れることの出来ない後悔があります。
それは学生の頃まで戻ります...
「ある日突然、実家のポストに手紙が届いた。
送り主は高校時代の同じクラスの女の子。
特に仲良くしていたわけではなかったので、手紙を読みながら、なぜ?今?私に?という驚きと、彼女に何かあったのかなという妙にザワザワした気持ちが入り混じったのを今でも鮮明に覚えている。
内容は取り立てて彼女の身に何かあったとかではなく、「元気ですか」といったもの。
素直に嬉しかったので直ぐにでも返事を書こうと思った。本当にその時はそう思った。
なのに私は、返事を出さなかった。
なぜだろう。
今考えても理由はわからない。
なんて書こうと考えているうちに月日が経った。たぶん、そういうことだと思う。
今思えば、直ぐにでも引き出しから便箋を出してペンを手に持てばよかった。そうすれば、何かしらの言葉は思いついて、そこから始まるものがあったかもしれないのに。」
あの時からもう10年以経っています。
今、その子は元気にしているだろうか。
なぜあの時、私にお手紙をくれたのですか。
今となっては聞きたいことが山程あります。
私は今でも忘れていません。
『思い出した訪問』
作・エドワード・ゴーリー
訳・柴田元幸
河出書房新社
あらすじ:一度だけ会った奇妙な老人との約束。それを思い出した女の子が、まさにそうしようとしたことで、老人の死を知る―。