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超人ザオタル(34)終着地の疑惑

2021.09.21 00:27

しばらくして、ふたりは就寝の挨拶をして部屋を出ていった。

夜も更けていた。

ひとりになった部屋には深い静けさだけが残った。

私は眠る気にもなれずに、椅子に座ったまま目を閉じた。


そのまま瞑想に入っていった。

意識の深くへと沈んでいき、静寂の世界とひとつになった。

私は確かにそこにいて、覚めた感覚をまとっていた。

その感覚は大きさとか時間とかで推し量れない。


それでも、意識を確かめれば、私はそこに在る。

ここが道の終着地なのだ。

だが、ここにいったい何があるのだろうか。

もし何もなければ、ここに意味はあるのだろうか。


いくら静寂を見つめても、何も起こらない。

ここから去ってしまえば、それで終わりになるだろう。

そして私は世界に終着地を見つけようとするかもしれない。

だがしかし、そこに終着地を見つけることなど出来ない。


だから、何かに夢中になり、それを終着地にしようとするのだ。

これいでいいのだと、きっとそれで自分を納得させようとする。

それはそれで理解できる話だと思う。

ここには終着地としての証となる何もないのだ。


そのとき、意識の中で何かが変わった。

世界の景色がぼんやりと姿を現した。

あの岩山だ。

私は岩山の上に座っていた。


夕暮れの光が草原を照らしていた。

優しい風が私を撫でていく。

何かの花の香りが運ばれて心地いい気持ちになる。

とても懐かしい感じがした。


となりに黙って誰かが座っている。

すぐに私はそれが誰だか分かって横を向いた。

そこにはアムシャがいた。

久しぶりにアムシャに会った。


「随分と草原の世界でのんびりしていたようだな、ザオタル」

アムシャはそう言って冷やかすように笑った。

「ええ、その通りです、アムシャ。

それも私の道だったのですよね。


草原の家で瞑想もせずに生きていくことさえ必要だった。

それでも、私はここに戻ってきましたよ」

私もそう言って少し恥ずかしそうに笑った。

アムシャに聞きたいことがたくさんあった。


だが、こうして並んで座っているだけで満ち足りていた。

質問などどうでもいい気がした。

「いや、質問は大事だよ、ザオタル。

いつでも疑問を持ち、それに取り組むのだ。

あそこに何もないということが理解できないのだろう。


それはとても大切な疑問だよ。

その疑問を持てなければ、あそこを去ったら最後、決して戻ることはない。

そうして多くの人々が道を失っていくのだ。

そこが終着地として間違いはない、だが何もなかった。


そう人は結論づけようとする。

そして、その体験を世界に持ち帰って、役に立たせようとする。

それは役に立つかもしれない。

心は落ち着きと平安を得て、世界の中で特別な存在になる。


あの世界に行ったことのある人間として、誇り高く生きるのだ。

だが、それではあの世界を完全に理解したことにはならない。

何しろあそこには何もないわけではないのだ。

それを見つけなければ、道はいつまでも完結しない」