まともじゃないのは君も一緒
独身・彼女なしの予備校講師・大野康臣(成田凌)は、ずっと 1 人で大好きな数学の世界で生きてきた。
今の生活に不満はないが、このままずっと1人なのかと不安になった大野は普通に結婚したいと思うが、普通が何かわからない。
女の子とデートをしてもピントがずれているような空気は感じるが、どうしていいのかわからない。
恋愛経験はないが、恋愛雑学だけは豊富な教え子の秋本香住(清原果耶)は、そんな大野を“普通じゃない”と唯一指摘してくれる。
大野は香住に、どうしたら普通になれるのか、教えてほしいと頼み込む。
受験に失敗してクラスメイトの陰口を言う同級生に辟易している香澄は、詰め込み教育の弊害と新しい教育を訴える学習塾の社長の青山(小泉孝太郎)に憧れていたが、彼にホテルチェーンの社長の娘の美奈子(泉里香)という婚約者がいることを知りショックを受ける。
香澄は、恋愛の練習と称して大野に美奈子にアプローチさせようとする。
異性から「好きです」と言われても「どのくらいの定量で?」と言い返すくらいに理屈っぽく、相手の感情を理解出来ず、上手くコミニケーション出来ない数学大好きな大野。
受験に失敗して陰口ばかり言うクラスメイトに辟易し、普通に収まりきれないまま普通に収まっている恋愛経験ゼロの香澄。
周りから浮いてるふたりの噛み合わないオフビートな掛け合いが面白いし、香澄の恋愛指南を受けている中で魅力的になっていく大野に惹かれてしまった香澄が戸惑って片想いを拗らせてクラスメイトの家がやっているバーで常連客にクダ巻くシーンなど拗らせて普通になれない人間をユーモラスに描きつつ拗らせている人間への優しさが込められたシーンが多くて、ほっこりする。
まともに見えた青山の信じられないクズさが、明らかになってからのクライマックスは、「普通の人間のズルさなどの不純さを許すより変でどこが悪い」という作り手の思いが込められていて、爽快な後味の、シリアスな演技が得意な清原果耶や成田凌の振り切ったコミカルな演技が、絶妙なラブコメディ映画。
「君の普通は何かを諦めるためのものか?」