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フレンチバソンについて/僕に書ける範囲で

2021.09.24 13:30

↑現在作られているビュッフェ・クランポンのフレンチバソン。

後ろに並んでいるのはAJ musique というメーカーの楽器。

この楽器店には僕もお世話になりました。

(フランスの友人に提供して頂きました)

↑比較画像:右がフランス式のバソン。左がドイツ式のファゴット。このバソンは1890年代ビュッフェ・クランポン製。現在使われているモダンのバソンより古いファッションの楽器です。

(作編曲家・器楽奏者の中迫酒菜さんに写真をご提供頂きました)


ファゴット、バソン、バスーンの呼び名の違いは?という話題は色んな所で登場しますね。

みなさん色々な定義を持って話をされるので見解が分かれるところですが、僕の認識をわかり易く説明すると。


モダン楽器の世界において

「ファゴットもバソンもバスーンも同じものを指す。ただ、基本的に日本においてはドイツ式の物をファゴット、フランス式の物をバソン。この楽器を英語で説明するときはバスーンと呼び分けている」

という感じです。

みなさんはどのように認識しているでしょうか?


ちなみにヒストリカルの方面でいうとバロックファゴットのことを バロックバスーンと呼んでも、バソンバロックと呼んでも。バスーンと呼んでもバソンと呼んでも問題ないと思っています。なんならドゥルツィアンをファゴットと呼んでもバソンと呼んでも良いと思っています。個人的にこれらの楽器を世間がどう呼ぶかについてあまりこだわりはありません。




なぜこの話をしたかというと。ツイッターで次のブログの記事を何にするべきか質問をしたところ、フレンチバソンについて書いて欲しいと言ってくださった方がいたからです。


しかし僕はフレンチバソン奏者ではないのでこの楽器について我が物顔で記事を書くことは出来ません。


ヒストリカルな視点からこの楽器について書くことも出来そうですが、それに関しては関西在住のヒストリカルバソン、オールドフレンチバソン奏者の二口晴一さんがもの凄く解りやすく記事にまとめて下さっているのでそちらを転載させて頂きます。


そこで、自分に何が出来るかと考えたところ、留学経験を活かしてフランスでプロのバソン奏者として働く友人が僕に語ってくれた話を少しだけ書こうと思いました。

 

オールドバソンデュオ「音色で辿るバソンの系譜」 二口晴一

↑ちなみにこのサイトの扉絵で使われているのは

ドガ作:オペラ座のオーケストラ

真ん中にバソン奏者が大々的に描かれていますね。

パリのオルセー美術館に飾られている絵です






以下友人が僕に話してくれた内容を僕なりに解釈したものです。


まず、フレンチバソンについて「語る」ということが起きると話題にあがるのが、

この楽器の魅力、伝統、この楽器のためのレパートリー、ジャーマンファゴットとの違いなど。

また過去20世紀から現在にかけて活躍したフレンチバソンの名手たちの話に花が咲きます。

グスタヴ・デラン、フェルナン・ウーヴラドゥ、モーリス・アラール、ポール・オンニュ、ジルベール・オダン、ロラン・ルフェーブル、フィリップ・アノン、ジュリアン・アーディ。最近だとパリ・オペラ座やナショナルオケのメンバー等々、、



しかし、その話題の中に友人が気になるセリフがしばしば登場するようです。

それは


「バソンでここまで演奏できるのはすごい!」


というもの。


これを言うのは有識者、ファゴット奏者、バソン奏者、国際コンクール審査員、プロアマ問わず。


友人は話題を出している人たちがフレンチバソンという楽器、機能に関して着目していることが気になるんだとか。


それ以外の根本的なことにも目を向けて欲しい、、、

と彼は言います。



ファゴットのコンクールで「このジャーマンファゴット上手い」とは言わないよね。


なのになぜバソンに対しては「このバソン上手い」って言うの?


本当にファゴットとバソンが対等であるならば


「この人の音楽は素晴らしいよね!」


となるはずだと。



そういう風にバソンを捉えてもらえる世界になったら良いし、我々もそのような演奏が出来るようにならねばならない。




彼は僕にこう話してくれました。


↑ロートレック作:デズィーレ・ディヨー

Désiré Dihau(1862-1889 オペラ座)は、ドガが描いたバソン奏者と同一人物です。





それはとても納得出来る意見です。

僕もヒストリカルファゴットに対して同じように捉えられたら不本意ですし、彼の気持ちはよくわかります。


僕が世界的なヒストリカルファゴット奏者を紹介するのは、彼らがモダン楽器、古楽器という垣根を越えて。圧倒的な表現力で良い音楽を届けてくれるからです。


現状、彼らと違い僕自身は楽器を操ることに精いっぱいで、「古楽器だから」という表現の域を出ることが出来ていません。


ただ、いずれ。世界の人はこういう演奏をするんだよ!過去にはすごい名手がいたんだよ!僕は古楽器で頑張っているんだよ!ではなく


単純に

「良い音楽」

を届けたいと思っています。


今フランスで頑張っている同世代のバソン奏者達も同じ気持ちなのではないかと想像しました。






フレンチバソンの記事ということで、巨匠たちの紹介を期待された方もいるかと思いますがここはあえて、日本ではあまり話題にならない僕と同世代のバソン奏者の演奏を紹介します。

(動画の掲載に関しては全員に許可を取りました)


↑ラファエル・アングステール

シューマン:幻想小曲集より第3曲


↑ロミック・ラムルー

マックス・デュポワ:ソナチネ タンゴ


↑ロール・トマ

ルイジ・ケルビーニ:オペラ「メデ」よりネリスの歌

これは3年前の動画で彼女は当時14歳。今後が楽しみですね。

ケルビーニのメデは1797年に作曲された曲ですが、この「ネリスの歌」では当時の曲にしては珍しくバソンの最高音cまで出てきます。それはとても効果的で、モダン楽器でもヒストリカル楽器で演奏しても大変美しいです。僕も1800年ごろのオリジナルのフレンチバソンで練習したことがあります。日本でも広まって欲しい名曲!





バソン好きな人もバソンを知らなかった人も是非


彼らが届ける


「音楽」


に耳をかたむけてみようではありませんか!