メガソーラー関係の陳情について(参議院浜田聡議員のお手伝い)
しゅくじった・・・。祝日だった。休みだったら、や睡眠してたかった。。。
昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり下記の件について考えてみました。
先日、NHK党党首立花孝志氏および参議院浜田聡議員に全国再エネ問題連絡会という団体から陳情があったということです。その内容について少し検討してみたいと思います。この団体はNHK党に限らずすべての国政政党に陳情しているようです。私はエネルギー問題や環境問題の専門家ではありませんからあくまでも一般的な視点に立って考えてみたいと思います。
さて、陳情書を見てみます。
下記資料:全国再エネ問題連絡会の陳情書より(以下、共通)
まず、陳情の「はじめに」を見てみます。大規模太陽光発電施設や風力発電施設の建設が進められるようになったのは地球温暖化防止、カーボンニュートラル、再生可能エネルギーの普及の為だとあります。確かに2009年に電力の固定価格買取制度(FIT)が出来て以来、一般住宅の屋根の上やビルや工場の屋上に太陽光発電用のパネルの設置が進み、自分で使用した電力の余剰分を売電することが出来るようになりました。FITによって国民から買電費用の原資(省エネ割賦金)を広く徴収することでFITによって比較的高い価格で一定期間の余剰エネルギーの買取が可能となり、太陽光発電設備の設置が進みました。
また、太陽光発電施設は1万箇所以上の設置が進み今後9年間で現状の3倍近くになる計画だと書かれています。今と比べて3倍の設置個所になるかは定かではないような気がします。むしろ、設置ペースは減少するような気がします。10Kw以上の施設の場合(産業用)の売電単価は2012年は40円だったのが2020年には11円にまで下がってしまっています。これまで時間をかけて徐々に売電価格が下がって来ましたが開始当初より凡そ四分の一の価格になってしまっては果たして採算が取れるのでしょうか。これまでは施工会社や太陽光パネルメーカーの企業努力でコストダウンを図りつつ事業を後押ししてきたのだと思いますがそれにも限度があると思います。
更に、再生可能エネルギーの開発を進めることが自然の生態系を壊すとともに土砂災害、水害などを引き起こしていると書かれています。表面的にはそのように思えます。ただ、再生エネルギー事業自体に起因しているのではなく、再生エネルギー施設の用地の開発や造成方法に問題があるのだと思います。
再生エネルギーの開発が森林の大規模な伐採に繋がり、カーボンニュートラルの政策に反しているという指摘もされています。森林の大規模な伐採はご指摘の通り脱炭素政策に逆行しているのかもしれません。しかし、それは再生エネルギー施設の設置場所の是非を問う指摘であり再生エネルギーの推進を進めることとは関係がありません。再生エネルギー施設は山林にのみ設置されているのではなく、耕作を放棄された農地などにも数多く設置されています。よって、一概にカーボンニュートラルの政策に逆行していると結論付ける必要はないと考えます。
陳情書の2枚目の法改正について考えます。
(1)のFIT法の改正についてです。陳情書では売電権の転売を問題視しています。売電権を高額で売却することを目的に再生エネルギー施設の設置を行うケースがあり、事業者の投機意欲を招いていることは問題であり規制するべきだという内容です。投機意欲を駆り立てることが森林の大規模な伐採に繋がるので売電権の転売を制限できるように法改正をする必要があるとしています。また、売電価格も適正な価格に変更する必要があるとしています。
さて、先にも書きましたが、再生エネルギーの推進はカーボンニュートラル政策に適っており必要な施策だと思います。再生エネルギー施設の設置は森林に限らず休閑地の再利用にも繋がります。農地の耕作放棄地は今後益々増加する見込みですから、有効利用のために再生エネルギー施設を設置することは良いことだと思います。
売電権の売買と再生エネルギー施設の設置場所とは関係はないと思います。投資家の投資意欲の高揚と森林伐採とを直接的に結びつける必要はないと思います。国家が進める再生エネルギー政策にとって事業者の参入意欲、投機意欲こそ必要不可欠なものであり、それがなければ再生エネルギー政策の推進は成し得ません。
また、売電価格ですが、直近10年間で単価が凡そ4分の一にまで下がっています。新規の参入に関しては魅力的な売電価格ではありません。ですが、2012年から2017年においては現在の2倍から4倍の単価で20年間の売電契約です。それらの売電権に関しては投資家にとって魅力的であるのかもしれません。さすがに時期を遡って売電価格を見直すことは法治国家としてありえませんので、単価が下がった2021年以降は投機的な事業案件では最早なくなっているように思えます。
(2)の森林法の改正についてです。土砂災害、水害、水源涵養、環境保全の恐れのない場合は、都道府県知事は開発行為を許可しなければならないというという法律です。陳情書では「許可しなければならない」を「許可することができる」に変更する法改正を望んでおられます。私は「許可しなければならない」でも「許可することができる」でもどちらでも良いです。というのは、開発による弊害が上記の以外に思いつかないからです。許可を受けた事業者が許可を受けた内容の通りに開発を行ったにも関わらず、土砂災害や水害や水源涵養や環境破壊を引き起こしたとすれば、それは許可をした自治体の長に責任があるのだと思います。「許可することができる」というのはその責任の所在を曖昧にする黄色信号になるような印象を私は受けました。
また、陳情書には昨今の異常気象を鑑みて林地開発の許可の基準の見直しを提言しています。まったくその通りだと思います。近年の異常気象は単年の現象ではないと思います。異常気象は地球規模で起きていることで温暖化の影響だとも言われています。よって、今後も集中豪雨などは繰り返し起きることが予想される中、それに即して林地開発許可の基準を見直すことは必至だと思います。
また、現行法では一度許可をされるとその許可を取り消す規定がないということです。それでは許可制度自体が形骸化してしまいます。陳情書にあるように許可の取り消しを可能とする規定は確かに必要だと思います。
また、昨今の異常気象に合わせて林地開発の許可基準を見直した場合は、従前に許可を受けている事業者に対しても一定の改善期間を設けた上で、その基準を満たす対応を義務付けることも規定した方が良いのかもしれません。
(3)環境アセス法の改正についてです。
環境影響評価法では環境評価の対象となった事業に関して事業者が行った環境調査の評価書に対して都道府県知事は意見を述べる機会を得ます。事業者は都道府県知事の意見を勘案した後に環境大臣に意見を求め、環境大臣は意見を述べる機会を得ます。つまり、環境影響評価法というのは事業に瑕疵があった場合に罰則することを規定した法律ではなく、国、都道府県および事業者の環境に対する適正な配慮を確保するために制定されていると理解しました。法の趣旨から考えて、罰則規定はそぐわないと思います。また、必ずしも太陽光発電は環境評価法の対象ではないのかもしれません。(資料:環境アセス法wiki)
1997年に制定、最終改正が2014年であることから現状に沿った対象事業となっていないのかもしれません。
以上、陳述書を拝見して思ったことはメガソーラー事業が必ずしも大規模山林開発とは限らないということです。仮に山林の大規模開発の許可申請がメガソーラー事業であることが多いとしても、事業内容と開発行為を一体として論じるべきではないように感じます。太陽光発電と山林の開発は同一ではありません。行っている事業ではなく、あくまでも開発行為そのものが諸処の問題を引き起こしています。太陽光発電の事業の性質が問題を引き起こしているのではないということです。太陽光発電は一般家庭の屋根にも長年取り付けられて来ましたし、工場やビルの壁面や屋上にも設置されることも多いです。空き地に設置した太陽光発電も多くみられました。空き地にある野立てタイプは自家消費がないので今後はFITの対象ではなくなるようですが。小規模発電設備とメガソーラーを一緒にするなと言われそうですが、私が申し上げたいのは太陽光発電という事業は推進するべき事業だと考えているということです。山林の開発行為は別問題だと思います。
その中で、当該陳情書に関して同意できることは大規模開発行為に対する許可基準の見直しについてです。気候変動に対して往々に対処することは急務です。太陽光発電事業であれ、宅地造成事業であれ、林業であれそれは同じです。伐採や造成によって自然の生態系の破壊や災害被害の拡大を招くことの無いように都道府県の知事の開発許可に関しては努めて厳正に取り扱われないといけないということです。
思えば30年か40年くらい前にも山林の開発行為が非難されていた時期があったような記憶があります。その時はメガソーラーではなくゴルフ場の乱開発でした。森林の伐採による水源の涵養機能への弊害や水源の汚染などが取沙汰されていました。再生エネルギー施設の設置が促進された昨今の開発行為も、結局はゴルフ場の乱開発問題の延長上にあるのかもしれません。
もし、陳情者がメガソーラーなど再生エネルギー施設を取り立てて問題視しているのでしたら、その開発ラッシュはFIT単価の急激な下落によって下火になるような気もします。
同時に売電権に関しては容認して良いと考えます。2012年当初の産業用の売電単価は40円でした。それが今では11円です。今の単価が安すぎるというよりも、9年前の単価は産業用再生エネルギーへの投資は黎明期であったのでしょう。売電を事業化すること自体が投機的な時代であったのだと思います。そうであれば、単価40円で20年契約という先行者利益を得ることも、その利益を確定するために売電権を売却することも否定しなくてもよいのではないでしょうか。事業者の持つ売電権と山林の開発行為は直接的に結びつくことはないと思います。設置物を問わず開発はあくまで開発なのです。
とはいえ、各地で発生している台風や豪雨による再生エネルギー施設の崩落事故も問題です。土石流が発生したり、土砂崩れが発生すると近隣エリアに被害が及ぶ可能性もあります。メガソーラーに起因するとは言い切れませんが、先日、熱海で発生した土石流災害は上部でのお粗末な盛土事業に起因するのではないかと言われています。熱海での事故の場合は開発許可による事業ではなく、届出制での盛土行為ですので、乱開発とは言えないとは思いますが、人為的災害であった可能性も否定できません。熱海の災害を切っ掛けに、この際ですから、山林の伐採や造成などの開発行為のみならず、盛土や切土に関しても届出制ではなく許可制に変更してはいかがでしょうか。もしかしたら、山地開発行為より盛土や切土の方が危険な行為なのかもしれません。届出制だと事業者が安全性や環境配慮に関して安易に考えている可能性があるからです。
最後に、私は再生エネルギーの促進は今後も振興されるべきだと考えています。それは山地開発を進めることとイコールではありません。ビルや工場、倉庫などの壁面や屋根面への設置の更なる促進や耕作放棄地の有効利用が進めば良いと思っています。維持費が高いと言われている風力発電も日進月歩でコストダウンと故障の改善が進んでいると思います。地熱発電もコストダウンが可能になれば安定したエネルギー源となるはずですし、環境への影響も少ないです。
自民党の総裁候補である高市早苗氏は小型核融合炉開発を国家プロジェクトとすると発言しています。これが成功すれば海の中の重水素だけで莫大なエネルギーを生み出すことができます。太陽光発電での発電量は、日本は世界で既に4位に達しています。それでも再生エネルギーは日本国内の電気消費量の36%程度です。原子力発電の20%を維持しても、残りは火力発電に頼るしかありません。今後、電気自動車の普及やデジタル機器の浸透によって更に電気消費量は増していくことが予想されます。日本は既にITERが建設するフランスの国際熱核融合実験炉のプロジェクトにEUやアメリカと共に参加しています。高市氏はこのプロジェクトの国産化に集中して予算を配分することを明言しています。
山林の開発は都道府県行政の判断の問題です。瑕疵のないように最善を尽くして許可の可否を判断しなければなりません。その判断の基準に関しても異常気象による被害の拡大を念頭に改正も検討すべきでしょう。そして、地球規模の気象変動の悪影響を食い止めるべく世界各国が取り組んでいる脱炭素化に日本も国家として結果を出すことが求められていると思います。スーパーコンピューターの富岳の開発で世界を制したように国際熱核融合実験炉の国産化にぜひとも成功して日本が世界に先駆けて核融合による電力の安定供給を達成して欲しいと思います。それが山林の乱開発の歯止めに繋がれば尚更良いと思います。
以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。
資料:資源エネルギー庁 納得再生エネルギーより
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html