ナポレオン4-アルコレ橋の神話誕生
2021.09.23 11:30
ミラノで英気を養ったナポレオン軍は、東に軍を進め、マントヴァ要塞を包囲する。スペイン継承戦争でオーストリア領となった町は、316門の大砲で守られていた。ナポレオンは、1796年6月からロンバルディアに侵攻し、トスカナ等各公国を降伏させて巨額の賠償金を取り、大砲を徴発して179門の大砲を得た。
8月3日、救援に来た墺軍を、カスティリオーネの戦いで終結する前に各個撃破して敗北させる。そして11月15日、ヴェローナの近くのアルコレ橋の戦いでは、今度はナポレオン自ら先頭に立って橋を渡ろうとしたという。この突撃は、部下に止められたが、またしても格好の伝説ができた。
実はそれを伝説に仕上げたのは妻ジョゼフィーヌである。彼女は夫の熱烈な手紙によって7月にミラノを訪問した。このときに連れてきたのが、画家アントワーヌ=ジャン・グロで、従軍させた。そして格好のシーンを見つけたというわけだ。11月29日からナポレオンにポーズを取らせてミラノで制作した。
翌年完成した絵は邸宅に飾られ、フランスの要人達が見物し、夫の評価はどんどん高まってゆく。ナポレオンはミラノ入城で、自分は軍人以上のことができるのではないかと思ったと「セントヘレナ回想録」で書いているが、それをジョゼフィーヌはパリで準備していたのである。