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HAPPY Y-style

突撃イン!ジュエリーデザイナー津田珠子さんvol.5

2017.03.19 13:00

vol.4の続き)

💍宝飾品を具現化する、オーダージュエリーの世界💍 

石井▶︎ホームページにまとめられている

「HAUTE COUTURE ただ一人のための宝物-クチュールジュエリーの世界-」

これはオーダージュエリーの一部をご紹介されていますね? 

津田🍀ホームページに掲載されているものはお客様から掲載OKをいただいたものです。 

大切な方からの御見分けであったり、またご結婚指輪の場合ですと、出会ったきっかけからプロポーズのエピソードまでお聞かせいただいたり。その後お子様が生まれたので新たにベビーリングをお仕立てしたりと、それぞれにストーリーがあって、幸せな気分になりますね。

石井▶︎テーマが二つ。

 「Awake your Heritage(アウェイク・ユア・ヘリテージ)」=リデザインと

 「The Shape of LOVE(ザ・シェイプ・オブ・ラブ)」=愛のかたち。 

これはあえてこのように分類なさったんですか? 

津田🍀一般的にはリフォームとウエディングというくくりになると思うのですが。

例えば、「アウェイク・ユア・ヘリテージ」はリフォームの単に形を変えるというより、眠らせているお客様の財産を目覚めさせるイメージです。

「ザ・シェイプ・オブ・ラブ」は、ウエディングやマリッジというくくりに入らない記念のジュエリー、感謝や愛情の表現で贈られるジュエリー全てを形容したいと思い名付けました。 

石井▶︎津田ワールドですね。確かに印象が変わります。

「ザ・シェイプ・オブ・ラブ」に掲載されているモーニングリングが気になったのですが。よろしければどのようなご依頼か教えていただけますか?

津田🍀顧客様のお知り合いの方をご紹介いただきました。

大切な方が急逝されてしまって心の整理がつかない、でもこれではダメだとご自身が覆われて、お気持ちを切り替える為にリングを作りその内部にご遺骨を納めたいと。

そういった用途専用のペンダントなども市場でご覧になられたようですが、温泉に入ると変色してしまったり、隙間から水が入る可能性もあるらしくて、何があっても絶対外さないので温泉に入っても変色しない、水も絶対入らないものってできませんか?というご注文でした。

職人さんと相談しましたら、やったことないけどできると思う、理論上は可能です。ただそんなことやってもいいのかな?っていう状態でした。

そこからサイズ感やご予算的なことを伺い、デザインと、あと大切な御形見なので、どの様に扱いどうやって収めようなどいろいろ考えてご提案をして製作することになりました。 

石井▶︎かなりお時間かかられましたよね? 

津田🍀作り的には、隙間が開かないように作ることが大変でしたが、職人さんが頑張ってくれました。お客様にもお喜びいただきました。

石井▶︎オーダーですとデザイン画とかもありますね。

津田🍀これはホームページにもあるガーランド様式のダイヤモンドペンダントトップの図面です。

お持ち込みのダイヤモンドでお仕立てしました。

先にラフスケッチをいくつかお客様にお見せして(残念ですがそちらは非公開)。採用されなかったスケッチデザインはお蔵入りです。 

石井▶︎図面はいろんな角度から描かれて、職人さんへしっかり伝えたい感じがわかります。 ラフスケッチ掲載できないのが残念ですが、どれも丁寧に描かれていますが、大きなダイヤを止める爪も、丸い爪だったり、あえてデザインされた爪だったり、見栄えが変わりますね。 オーダーならではですね。この他にも何か教えていただけるものはありますか?


💍宝飾品を支える職人たちチーム津田?! 

津田🍀これもお見せできないのですがエメラルドジュエリーです。

ブローチとペンダントトップにして使えます。今はコンピュータを使いCADや3Dで図面を書くこともできますが、私はアナログ人間なので、立体感を職人さんに伝えるのに、影の入り方などいろんな角度で描いて話をします。

石井▶︎お見せできないのが本当に残念ですが、大きなエメラルドのカボションカットのお石を使ったもので、大ぶりですがとても繊細なデザインで、まさにセレブな、コンサバティブなパーティーにも着けられる宝飾品ですね。 ただカラーストーンの場合、石も1度留めると、外す時に割れる可能性があります。仕立ててしまうと外してメンテナンスするということはほとんど難しいと思うのですが、メンテナンスする前提でデザインもお仕立てもしていくのですか? 

津田🍀はい。これはリフォームでしたので、エメラルドの周りをダイヤで取り巻いたデザインのジュエリーをお預かりしました。まず石をお外しする時に万一割れているかもしれないという了承はいただきました。エメラルドで厚みのあるカボションカットですから慎重に進めました。

石井▶︎内包物があって当たり前のエメラルドです。もちろんこれだけの大きさですし高額のジュエリーだったでしょうから、初めてジュエリーになった時にも注意して留められているとは思いますが。石留め職人さんによっては圧が強くて実はヒビが入ったり、使っていくうちに入ってしまったというがありますし、怖い!

津田🍀怖かったですね。無事お外ししてから最初にこの石の模型を作りました。まずゴムで型取りし、そこから石膏にして。地金のパーツを一本ずつ作り、石膏の模型を使って組み立ててみて調整し、大丈夫だとなってからもう一度分解して。ダイヤモンドを留めて途中まで組み上げてから、最後にエメラルドを留めていきました。エメラルドが割れないように職人さんのテクニックで留めていく。6ヶ月ほどかかりました。

石井▶︎このデザインにはエメラルドの一部に地金がかぶっているデザインになっていますが。

津田🍀もちろんデザイン的な美しさもありますが、このパーツがあることでエメラルドをガード、いわゆる保護しています。さすがにこれだけのエメラルドを露出させるのは怖いので。

石井▶︎細部まで考えられている。それにしてもこれも割れないように留めたのですが、また何かあれば、なくても石を外してメンテナンスできる構造になっているのですか? 

津田🍀はい、それも考えて設計をし、パーツも組み立ててあります。

石井▶︎はあ、ため息が出てきます。

そして、プローチにもペンダントトップにもご自身でチェンジさせ身に着けることができる。

まさしく津田さんが作りたかった宝飾品ですね。6ヶ月かかるはず。お客様は気に入られたでしょうね。

津田🍀とても気に入っていただけて、早速つけたわ!とおっしゃって。

すごく映えてつけこなしていらっしゃったので、職人さんたちと皆で、やりきったねとほっとしました。 

石井▶︎デザインや設計図も全て手書きですか?

津田🍀同じものを増殖させるデザイン画ですとか、パールの連組みなど並べたりするものは、時折部分的にコンピュータを使うこともありますが、ほぼ手描きです。

職人さんは手描きの方が深く理解できるみたいで、ニュアンスが伝わるというか。濃く描いてたところ、ここはラインが強いんだとか、そういう感じですごく微細なセンサーを持っている。 

それに、これだけ細かく描きこんであるんだからつくりも細かくやらなきゃ、とプレッシャーに思っていただけるみたいです(笑) 

石井▶︎ジュエリーを作る時には、最近は一点ものでも複数作るものでも、まずそのデザインの原型を作ります。鋳造の場合の製法ですが、日本だとほとんどこの製法が多いと思います。

このジュエリーには原型はあるのですか? 

津田🍀オートクチュールに関しては、基本手作りなので原型はありません。

構造上どうしても必要なもの以外は、全て手作りで切り出したり、叩いたりして作っていくので大変です。ただその方が地金の密度も上がり、結果強度も出せます。

石井▶︎本当に地金の板から切り出してお仕立てするんですか? 

津田🍀はい。

特にこのエメラルドジュエリーのような複雑なデザインはかなりの時間がかかります。 

石井▶︎ということは、YouTubeなどでハイブランドさんがジュエリーを仕立てる動画など最近みられたりしますが、糸鋸で板材を切ったりして仕立てる。

1つのジュエリーに数ヶ月または1年2年とかかる、まさにその世界ということですか? 

津田🍀はい、規模は違いますが、現場でやっていることは全く同じだと思っています。 

展示会などでフランスのハイブランドの職人さんが、私のコレクションを見に来てくれたことがありました。コレクションを手に取りじっくり見て、「これ、手で作ってるの?3Dで留めの爪を起こしてないの?」と聞かれたので「NonNonオールハンドメイド」というと「すごい!」と言ってもらえました。 

石井▶︎宝飾品の本場、フランスのハイブランドの職人さんがですか?

それはすごいです! まさしく宝飾品と認められたというか。100年使えるという前提のお仕立てのもので。 

まさに大切な人へ、自分へのオート・クチュール・ピース、ただ一人のための宝物ですね。

職人さんあっての宝飾品とも言えますね。すごい!チーム津田? 

津田🍀本当に、お願いしている職人さんの技術に関しては誇らしいです。 

石井▶︎日本の職人さんって素晴らしいのに、直接消費者に見えない部分ですから、メーカーだとついコストダウンを要求してしまう。そうなると向上心を保つことも難しくなる。後継者も育たない。ジュエリーに限らず職人さんの世界はそうやって良い職人さんがいなくなることが多いです。 

こういったこだわり尽くしたジュエリーは、職人さんの技術に対する正当な評価ともいえると思います。職人さんにとっても津田さんとの仕事はとてもいい環境なのかもしれませんね。

津田🍀手作りだからできるところまで、限界まで、毎回毎回1点ずつ突き詰めていきたいなと。

逆に大きなメーカーさんだったら、そこまでの自由はきかなかったと思います。 私がわがままを通せていますから。

金額的なことも交渉はしません。その代わり納得するまでやってねといっています。 最初はそういうことを理解してもらうまで大変だったんですけど、今は私のチェックの厳しさを察して、工房内で事前にチェックしてから見せてくれるようになりました。

石井▶︎それは嬉しいですね。津田さんの姿勢に賛同されているからでしょう。 

津田🍀ものすごく細かい人だと思われているみたいです(笑) 

石井▶︎私もそうですが、ジュエリーが好きな人や思い入れがあるものだと、隅々まで見てしまいます。見なかったとしてもそれは、実はつけ心地だとか、使いやすさになっていて、知らないうちに体感しているはずです。

津田🍀お客様を育てるというとおこがましいですけど、シルバーとプラチナって一緒でしょという方もいらっしゃいます。それを徐々にダイヤってこうなんだなとか、知る楽しみを得ていただけるきっかけになるといいなと思っていて、そこからジュエリーに対する思いも変わっていかれるような気がします。 

石井▶︎シルバーとプラチナ見た目は同じ白金ですから、確かに同じと思ってらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。私も接客しているとそういった方にたくさん会います。お話しすると、あらそうだったの?だったら大切にしなくちゃ、なんてよく言われますね。  

以前個展で拝見した時、動くとか回るとかそんなジュエリーがありましたね。こういった作りも職人さんの腕の見せ所?

津田🍀ギミックオタクというか構造を考えたりするのが好きなので。

他にも素材の配合とか、自分で実作業はしないわりに、そういうマニアックな部分が好きです。

職人さんもめんどくさいなぁと思っているかも(笑)

ほんのわずかの部分を削って欲しいとか言いますから怒られるんですけど、最後は納得して聞いてくれます。

Vol.6オリジナルコレクションへ続く>

参考までに、ヴァンクリーフ&アーペルの動画がありました。仕立てが少し拝見できます。