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HAPPY Y-style

突撃イン!ジュエリーデザイナー津田珠子さんvol.6

2017.03.20 06:00

(Vol.5オーダージュエリーの世界に続く)

💍オリジナルコレクション💍

石井▶︎そんな職人さん達と生み出す、コレクションはまさに津田さんが発する世界です。 ホームページの「COLLECTIONS」がそうですね。 

最近ですと、2015年秋の個展の新作「ナイトパレード」がありますね。

津田🍀深海の生き物と百鬼夜行をミックスさせました。 

石井▶︎百鬼夜行?あの、日本の昔話に登場する鬼や妖怪が登場する...

津田🍀根底にあるのは、未知のものに対する畏怖だったり、探究心。

深海生物のドキュメンタリーなどに興味を引かれるのと同じで、知らないものを知りたい。

自分の日常の世界以外のところにも「なにか」がいるというワクワク感。百鬼夜行も元々そういったイメージで描かれたんだろうなと。その、もやもやっとした柔らかい感じをジュエリーでできないかと思いました。

デザインでフォーカスしたかったのは揺らぎ感になるんですけれど、最初に思ったのは曖昧なものを形にしたいという欲求だったんですね。

石井▶︎確かにカットボールチェーンで仕立てられた、金魚の尾鰭のような繊細さです。

フリルのような、布のたわみのような柔らかさが、硬い地金なのに見える。

職人さん大変でしたでしょうね。 確かにもやもやっとしてるかも。 

津田🍀このネックレスは先端を引っ掛ける場所次第で、ツーウェイでつけられます。このフリルのパターンは、他には出さないという約束で共同製作をしています。

石井▶︎企業秘密ですね。あ、でもお顔とか、目は綺麗なエメラルド?どこかキュートですね。

津田🍀動物とかこういったモチーフは、どこかユーモラスさがあるとよいかなと思っています。 

妖怪絵巻もそんな雰囲気かと。ちょっとふざけたみたいな、どこかヘニョっとしてたりとか。

石井▶︎なるほど、こちらは蝶?または昆虫とかですか? 

津田🍀ヴァニシングワールドのシリーズで「うさぎコウモリ」です。 

石井▶︎コウモリ?綺麗な色のコウモリなんですね。蛾でも蝶に負けない美しいものがいますし。 

津田🍀いいえ、実際の色は茶色いコウモリなんですが、華やかにしてみました。

本当はグラデーションで石を並べるつもりだったんですけど、職人さんが混ぜてしまって(笑)

でも結果綺麗なのでそのままにしました。 

石井▶︎ハプニングも楽しいですね。ネックレス部分はパールですが、これはどうしてですか? 

津田🍀優しい雰囲気にしたかったので、チェーンだと硬質感が出るのでベビーあこやを2連にしました。

石井▶︎わぁこんなところまでダイヤが留まっている。小さいですがとても繊細に作られていますよね。

このモチーフは?

津田🍀「ミノムシ」です。

アトリエではご好評頂いているデザインで、おかげさまでバリエーションがかなり増えました。 

石井▶︎ミノムシ!私もたくさんジュエリーを見てきましたが、ミノムシモチーフのジュエリーなんて初めて見たかもしれません。

これミノムシってわかる方は着けている方しか知らないでしょう。 組み立てているんですか? 

津田🍀これはパーツをキャスト(鋳造)製法で作っています。

ダイヤやルビーなどスリリングな留めになっていますから。 

石井▶︎触っても痛いところがない。あたりが優しい。

確かに触っていると愛着が湧いてきますね。 

津田🍀これ、起立します。外した時に自立したら楽しいなと思って。 

石井▶︎えー!このサイズで立ってしまう。 

でも、そこまで計算して作るなんて凄すぎます!またキャストなのに。 

でも手にしている自分は誇らしいというか嬉しいですよね。 


 これは個展で拝見しました。モチーフは細胞でしたよね?それとギミックがあって...

それにしても石が綺麗で瑞々しい!トルマリンと伺った記憶がありますが、輝きがグロッシュラーガーネットみたい。

津田🍀はい、ボルボックスという細胞のモチーフです。 

グリーントルマリンはダイヤモンドと同じカットをしてもらっているので煌めきますね。 

ギミックは、ボルボックスの動きを見て、これ回ったらいいねと思って。 

石井▶︎これが回る!でもカラクリは企業秘密でしたね。撮れない!残念。 

それにしても、二段になった下の部分も一般的にはもっと細く薄くしますが、しっかりしていますし、裏も綺麗! 

津田🍀石座を絞ってもらっています。

これは帯留めとかにも使えるようになっているんです。


石井▶︎細部までさすがですね。 この他にも「アダプション」も卵のようなモチーフでした。発想はどこからきたのでしょう。 

津田🍀パールに手足が生えてかわいいキャラクターになったら面白い。 

さらにネックレスが首に巻きついたら子供みたい。 赤ちゃんがこう首にしがみついている感じをうまくネックレスにできたらいいかな。 と、いろんなイメージの断片が重なって立体的になっていったデザインです。 

ジュエリーはきちんとメンテナンスをすれば100年使えるものとお話ししましたが、

日本の言い伝えで100年使うと魂が宿るという、そんな言葉もどこかにあって、そこからジュエリーを生き物のような形に作っておいたら魂が宿るかもしれないという想像をし、そんなふうに想像出来ると愛着も湧くかなと。 

自分の感情をジュエリーに投影できるようになるとそれは単なる物ではなくなりますし、ただ美しいモノとして使うだけでなく、そこに自分が感情移入できるものを作りたい、という思いかもしれないです。 


石井▶︎確かに拝見していると、生き物が多いですね。 また細胞だったり、卵から手足が出てきたり視点が面白いです。 

一般的なジュエリーというと、誰もが美しいと思えるようなモチーフが多い。 お花や蝶、妖精、昆虫に動物も、リアルな美しさか可愛らしさをデザインする。 

でも、津田さんのコレクションには、そのものが美しいモチーフはないですね?

津田🍀動物だと、絶滅危惧種とかですね(笑)

おこがましいですが、そこにフォーカスする意味を感じて欲しいなと思っています。自分も考えたいですし。

ただモチーフをうつして綺麗ということではなく。 なぜこの魚なんだろうとか、絶滅しそうだからジュエリーで作っておきたい。ジュエリーをみてこれは絶滅危惧種だと気づいてもらえるかもしれない。 

そういえばミノムシいなくなりましたよね、というところから会話が生まれて、ノスタルジーを共有出来たりとか。

石井▶︎確かにこれがどんなジュエリーなのか知っていて身に着けると、感情移入できますね。 

単に蝶が綺麗とそれを具現化されていると選ぶのではなくて。 

ボルボックスも知らずにみていると、サークルモチーフで石も綺麗で美しいジュエリーだといえますが、実はこれって細胞なんですとか言われると、印象も変わり意識も変わります。さらに大切になっていきますね。 


そんな中で唯一綺麗なモチーフ「デ・スクレリーズ」はお菓子の世界ですね。

津田🍀最初のコレクションで、ジュエリーで味覚を刺激できないかなと思ったんです。 

デザインモチーフはお菓子です。展示の時に実際の砂糖菓子と一緒に展示して、チョコレートを敷いてベリーのようにアメジストを並べたりしました。 

でもそれはちょっとやり過ぎてしまって(笑)お客様が石を口に入れちゃうという事件が発生しちゃって、今後は安全面に配慮して演出しなくてはと思っています。 

石井▶︎口に入れちゃう?間違いなく味覚を刺激するジュエリー、なるほど。 

確かに綺麗だけじゃないところにフォーカスされていますね。 

津田🍀ジュエリープラス感覚的なアプローチ、何かわからないけどもやっとするというところを手がけていきたいですね。

石井▶︎「ジャポニズム-浜千鳥」はわかりやすいデザインのように感じますね。 

津田🍀日本文化は入れていきたいというかフォーカスしていきたいテーマです。 

デザインにあまり入れてしまうとジュエリーとして使いづらいのでさじ加減は難しいのですが、日本的なものの考え方だったり、エッセンスは入れていきたい。

石井▶︎可愛いですね。実は個人的にかなり気になっています。 私も日本文化や着物の文様など大好きです。

千鳥ってモチーフとしてジュエリーであったとしても、それを宝石で表現しているものって見たことがない。地金だったりエナメルだったり、あっても白蝶貝とか。そのせいなのかとても新鮮です。

津田🍀石で千鳥をやってみたくて。石が大きい方が立体感があって好みです。

アメシストとプルートパーズとガーネット。 石に高さがあるので、地金の部分もモチーフも合わせて高さを出しています。 

石井▶︎これもアメシストですか?これはガーネット、すごく綺麗ですね。 

またメレダイヤもよく輝いています。クラリティなどは石に合わせていますか? 

津田🍀紫を帯びたガーネットはロードライトガーネット、こちらはインド産なのでピンクっぽい色です。メレダイヤは自分で見て綺麗なものだけ選んでいます。

石井▶︎千鳥の石を留める爪が、くちばしと足になっていますよね? わあ、爪がギミックになってます。可愛い・・・ ちょっと持たせていただきますね。

あ、重いですね。見た目でなんとなく重さってイメージできるのですが、Ptですか? 

津田🍀これはK18です。手作りの場合、作っていく過程で叩かれ密になりますから、見た目より重くなりますね。 

石井▶︎裏も拝見。すごい、地金部分も全て磨いてありますね。 石のカットは後ろファセット入っています。だから瑞々しいのかしら。 


津田🍀上はカボションなのでパフトップというカットです。 

石井▶︎このカットは津田さんのオリジナルで、オーダーカットですよね。 

もしかして、「チドリカット」なんて言ったりして? 

津田🍀そうチドリって呼んでいます。 

これはある程度の色で選んだ原石をチドリにカットしてもらい、その中からデザインに合わせ石の組み合わせを選んでいます。 実は削ってみるまで色の出方はわからないんです。

青い色の千鳥が欲しくて、アイオライトの原石を買い削ってみたら断層が入っていて、コレクションとしては使い物にならなかったこともありました。

アイオライトの原石、すごく高かったのに(笑)なので、自分用のサンプルリングに仕立てました。

石井▶︎そっか原石を買ってカットしてもらうんですね。大変ですね。 

津田🍀最初の原石からオーバルに削り出して、その段階では問題なかったんですけど、そこからさらにチドリカットにしたら断層が出てきてしまったという。 

留めとしては三点留めという小さいデザイン爪ですからとてもスリリングです。リングにした時の使い方も確かめたくて自分用のリングにしたのですが、ちょっと何かにぶつけたりすると千鳥が逃げて行っちゃう。 

露出部分が多いので、当たりどころが悪いとコロコロコロッと飛んで行く可能性があります。これはお客様にもお伝えしています。 

石井▶︎千鳥が逃げる?生き物みたいですね(笑) 

でもこの繊細な留め方だからこそ、この雰囲気が出ているし、美しい石も堪能できます。 高さもありますから、大切なシーンで着ける。または所作を美しくしましょう(笑) 

津田🍀この千鳥シリーズは人気をいただいていて、リングは色違いでたくさんオーダーいただいています。

淡いアメシストとブルートパーズの組み合わせや濃いめのトルマリンとブルートパーズにされたり、好みの色の組み合わせでお仕立てしました。 

石井▶︎これはブローチですね。これはとても日本を感じるデザインです。 

ブローチの裏は…面のつや消し部分が、裏まで全部つや消しちゃうんですね、さすがです。 

津田🍀嬉しい!ありがとうございます。 

リングは当たってしまうこともありますが、ピアスやブローチなどは安心です。

もちろんチドリが逃げた時はお持ちください。

<Vol.7へ続く>