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「カビール」を観た!

2017.03.20 08:31

シェーカル・セーンさんの2時間の一人芝居「カビール」を観た。この作品は、45曲の歌が入った2時間の一人舞台で、シェーカルさんの超人気レパートリーの一つだ。インド国内、海外で350回以上も上演されている。

カビールといえば、15世紀頃の伝説の詩人として有名だ。ヒンドゥー教の家に生まれ、イスラーム教徒に育てられ、ヒンドゥー教の宗教指導者に影響を受けたという宗教的に複雑な背景を持ち、その後、15~17世紀に盛んになったヒンドゥー教を中心とした信仰運動(バクティー運動)にも影響を与えたと言われている。

シェーカル・セーンさんについては、以前にもご紹介したが、元々歌手で、現在は役者としてもご活躍され、サンギート・ナータク・アカデミー(インド演劇協会)のチェアマンも務められている。これまでに多数のCDアルバムをリリースされたほか、「カビール」はじめ、ヴィヴェーク・アーナンド、トゥルスィー・ダースなど、歴史上の人物をテーマにした作品の一人芝居で有名だ。一言で彼を形容するなら「生きる芸術、歩くステージ」という感じで、普段のトークも声使いを変えたり、歌を取り入れたりされて、非常におもしろい。

(写真:サンギート・ナータク・アカデミーFBより。)

この上演は、インドの宝石と言われたシェへナーイー奏者、ビスミッラー・ハーンの聖誕祭「プーラブ・ラング」(東の色)の一環として行われた。「プーラブ」は、ヒンディー語で東を意味するが、インド古典音楽や舞踊の世界では、ヴァーナーラスィーを意味することが多い。「カビール」は、カビールがカーシー(ヴァーナーラスィー)で育ったことから、セレクトされた演目だと思われる。主催者は、ソーン・チライヤーという文化団体で、会場はRIMPA。

クラスがあり、インターバルの少し前から観た。言語は、ヒンディー語とその方言、たまにウルドゥー語で、英語の字幕がスクリーンに映し出されていた。到着した時点で、文字通り超満員だったので、前半は最後列からの観劇となった。また一緒に観に行ったヒンディー語ができない外国人留学生に字幕のためのメガネを貸してしまったので、耳だけを頼りにストーリーを追うことになった。

・・・なので、ストーリーを完全には理解できなかったが、全体的にカビールと周りの人との会話を通して、彼の宗教観や世界観が伝えられていた(と理解した)。私が見始めた部分は、カビールが結婚したばかりで、お嫁さんのローイーとの間のちょっとロマンティックでコメディーな会話のやりとりが繰り広げられるシーンだった。それから、彼らの家にやってくる人々、身の周りで起こる宗教的な衝突などを、カビールがどのように見ていたのかが描かれた。ヒンドゥー教の家に生まれ、ムスリムに育てられたカビール。彼の残したメッセージは、宗教というよりも、人としての正道を訴えていた(ようだった)。

演出は、シェーカルさんの多彩な声色で、様々なキャラクターが鮮やかに演じられただけでなく、2時間の舞台に45曲の挿入歌、という噂通り、2分に1回は歌が入っていた!その殆どは、バジャン(宗教賛歌)で、恐らくカビールの詩にのせたものだった。有名なバジャンは、客席で一緒に口ずさんでいる人もいた。また、カビールの詩が台詞になっていると思われる箇所もいくつかあり、詩の部分を一緒に唱える観客もいた。バジャンばかりとはいえ、音楽的にもバラエティーに富んでいて、全く飽きることがなかった。

長時間の一人舞台にも関わらず、歴史的にミステリアスなキャラクターがテーマになっていることと、シェーカルさんの類稀なる声使いと圧倒的な歌唱力が、何よりも観客を魅了していた。もっと勉強して、最初からフルで観れる機会があれば、次はもっと楽しめるだろう。益々、シェーカルさんのファンになりました♡ ♥