無メッキ反射鏡による太陽写真(6)
写真は、伊達英太郎氏の雲雀ヶ丘観測台と11cm反射赤道儀です。観測台の周囲の棒は、暗幕を巡らすための支柱だと思われます。
伊達氏は健康上の理由から、1932年(昭和7)から兵庫県の雲雀ヶ丘に転地をしていました。
小反射望遠鏡による太陽写真 伊達英太郎 1938年(昭和13)5月6日
7.密着、引伸、印画法
これも原板の露出同様、普通写真の焼付引伸に比し非常に難しい。特に密着焼付は困難で、余り硬調の印画紙ではディテールが出ないし、軟調すぎる印画紙では像全面が薄汚く、冴えた印画が出来ない。アゾ2号か3号(普通調)に焼付て美しい写真が出来るのが略正しい。焼きすぎては中央部のみが良く出て周辺部は真黒になり、不足だと周辺は美しいが中央部が真白で中央部にある黒点はアンブラの存在しか分からぬ様なノッペラボーな印画紙になる。像全体を良い調子に焼付けるには相当の熟練を要する。「銀河」第2巻第2号の口画に添付した清水氏の太陽写真は略適度の露出と焼付を示している。一般にあまり硬い調子の印画紙は、どぎつい写真となるから、寧ろ軟調の方がディテールが良く出て良い。
米粒組織を鮮明に出すには引伸法によるが良く、密着焼きではどんなにうまく処理しても米粒組織を綺麗に出すことは難しい。引伸も像全体を大きく伸ばすのではなく、一部分を伸ばすのが容易で、米粒組織なら太陽面の中央部に良く現れているから、この部分を約5~8倍位に引伸し、少し焼込むと、原板さえ良ければ天文雑誌に出ているような見事な米粒組織の写真が出来る。プロセス乾板は微粒子だから10倍位の引伸も案外楽に出来る。原板を微粒子現像するのも良い方法である。
8.撮影の実際
前後しますが、撮影の方法を順に記しますと、シャッターをT(タイム)にして開け、ピントグラスをはめ込み、ラック・ピニオンで微動して綿密にピントを合わせ、次に太陽像を原板の中央に来るようにすると、ファインダーではどの辺に来るのかという位置を良く見ておき、ピントグラスを取り、シャッターを閉じて瞬間露出(1/50なり1/100なりに)に指針を合わせ、乾板を入れた原板をはめ込み引き蓋を抜き(全部抜き取ってしまわぬ事)、経緯台ならばファインダーの先程見ておいた位置に太陽が来るのを待ってレリーズによりシャッターを切り、すぐ引き蓋を収めて撮影を終わります。強風、衝撃による振動が収まってからシャッターを切る事を忘れぬ様、いくら気流状態が良くても、振動があれば像ばブレて鋭い像が得られない。
(写真・資料は伊達英太郎氏保管)