持ち味を活かす
私たちの祖先が生活に火を使うようになったのは、約50万年前のことだと言われています。その後、1万年前頃には火を使って土器を作るようになりました。
その後、鉱石から金属を取り出す技術が発見され、金属を使って生活の道具を作るようになったと考えられています。
最初に出会った金属は、おそらく金だったと考えられます。金は、自然界では、化合物がほとんど無いために砂金として川砂の中で見つけられ、その川を上流に遡っていくことで見つけることが出来たと思われます。
次に使われたのは銅や鉄だったようです。鉱石を砕いて、加熱することで銅を取り出す製錬の技術が発見されたのはペルシャだと言われています。その後、メソポタミア地方南部に都市国家を作ったシュメール人が銅よりも溶かしやすくて、強度も強い青銅(銅と錫の合金)を発見して、青銅が武器や生活の道具として取り入れられるようになりました。
鉄鉱石から鉄を作り出す技術は、さらにその後、メソポタミア地方で発見され、ヒッタイト民族が鉄を使った武器や戦車を作り、ヒッタイト王国を築いたと言われています。 ヒッタイトの遺跡からは、製鉄の関連した遺跡や製鉄について書かれた粘土板文書も発掘されています。
銅の場合は、銅鉱石を溶かして酸素を吹き付けると銅が取り出せるのですが、鉄の場合は、同じ方法では、錆が出来るだけで鉄は取り出せません。そのため初期の製鉄方法は、隕石の中で鉄をたくさん含んだ隕鉄と呼ばれるものを叩いて加工したり、砂鉄を集めて鉄を作り出すタタラ製鉄のようなものだったと考えられます。
金も銅も鉄も同じように自然から得られる金属ではありますが、鉱物を砕いたり、加熱して空気を吹き込んだりすることで製錬する事が出きるものもあれば、さらに高い温度で加熱し、コークスを使って還元しなければ製錬できないものもあります。
鉱石の持つ性質や特質をよく見極め、その本来の姿を見つけだし、世の中で役に立つものにするためには、様々な技術や知識だけでなく、時間と努力が必要だったようです。