Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

新型コロナに対する中国の伝統医療のアプローチ

2018.09.27 03:28

https://mediva.co.jp/blog/2020/05/post-4195.html 【新型コロナに対する中国の伝統医療のアプローチ、日本でも漢方という選択肢│GLOBAL】より

前回の記事では、新型コロナウイルスに係る中国のオンライン診療事情について、紹介しました。今回は、新型コロナウイルスに対する、中国の伝統医療を取り上げます。中国では感染拡大の早い段階から、西洋医学だけでなく「中医」と呼ばれる伝統医学も活用しています。

中医というもの

中医は、中国の伝統医学として、2700年以上の歴史があります。“中医”は、西洋医学と区別するものですが、西洋医学が入るまでは、主要な医療手法として使われていました。中医は、現在でも根強く人々の生活に密着しています。中国国民の大半は、「養生」に気をつけながら生活をしています。「養生」は、医食同源の考えの元に食べ物や飲み物に気をつけながら、規則正しく生活することも含まれます。

近年、「養生女子」が流行し、中医の手法を用いた美容や、代謝に良い食事や生活習慣を取り入れるほか、中医デトックス鍼灸を受けている人もいます。冬は中医学でいう「進補」の季節にあたり、中医薬の生薬で煎じた高濃度の薬「膏方」を処方してもらい、毎日お湯に溶かして飲む人も増えています。そして、水分補給にクコの実やナツメなどを入れるのも定番です。

中医は、医療機関だけでなく、中医薬局や針灸などが実施される養生施設でも提供されています。2018年末までに、中医薬局の大手北京同仁堂のみでも、店舗数2,227軒があり(海外149軒を含む)1 、中国人からすると、中医薬にアクセスしやすい環境があります。また、中医の従事者は2017年までに66.3万人、うち医師の人数は52.7万人となっています。

近年、中医に関する国家政策も次々と出され、中医のサービス拡大と質の向上、中医養生保健サービスの推奨、中医薬伝承と革新の注力、中医文化の普及、中医のインバウンドとアウトバウンドなどの方針が出されています2 。

中医は、今回の新型コロナウイルスの対策の一環として、大きな役割を果たしました。

感染症に対する中医活用の歴史

中国の長い歴史の中で、記録されている感染症の流行は少なくとも500回以上ありました3。後漢末期(日本は弥生時代、卑弥呼が国を治めていた頃)、張仲景の著作「傷寒雑病論」に、伝染性のある病気に対する治療法が397法、113方4が記載されています。西洋医学を取り入れるまでに、中医による感染症の治療法は確立されてきました。近代において、2002年のSARS流行の際にも、中医が役割を果しました。中国科学技術部の主導研究「中西医結合によるSARS治療の臨床研究」において、222症例から、中医は解熱、呼吸困難・倦怠感などの症状の改善、臓器機能の保護、SpO2の安定、抗生物質の使用の減少に有効であると証明されました5。2009年の新型インフルエンザでも関わりました。

新型コロナウイルスにおける中西医結合のアプローチの介入

武漢での発症後、早い段階から中医が介入していました。全国から4,900名の中医関係専門職が河北省に支援に向かいました。また、臨床でのアプローチと観察に基づいて、国の「新型コロナウイルス治療ガイドライン」が次々と更新されていきました。

国家衛生委員会2020年1月22日に発表された「新型コロナウイルス治療ガイドライン(第3版)」から、治療法に中医のアプローチが加えられました。

1月28日に発表される、「新型コロナウイルス治療ガイドライン(第4版)」に、患者を「観察期、治療期(初期、中期、重症期、回復期)」に分けて、それぞれ適する中医薬を明示しています。

2020年2月7日に、臨床での観察効果に基づき、国家中医薬管理局は清肺排毒湯の臨床での使用を推奨しました。

最後の更新になる3月3日に公開になった「新型コロナウイルス治療ガイドライン(第7版)」にも、中医の治療法が追加されています。詳細は、日本医師会のページに、中日友好病院から情報提供された日本語訳がありますので、こちらより閲覧できます。

武漢市では、素早く患者を要観察、軽症から、重症患者で区分けし、医療施設や臨時病院に隔離しました。臨時病院は、体育館などの施設を活用し、患者を収容し治療を行いました。西洋医学による治療薬がない中で、中医薬の投与は早くから行われていました。

*メディヴァ作成

また2月14日に、中医治療中心の臨時病院として、江夏方艙病院が運営されました。江夏方艙病院では、清肺排毒湯と宣肺敗毒方を投与し、太極や鍼灸、ツボ療法も並行して実施しました。多くの患者で咳、発熱、倦怠感や息苦しさなどの臨床的症状が緩和されました。江夏方艙病院は、3月10日に閉鎖し、運営期間26日で、564名患者を収容しました。そのうち軽症患者71%、中等症29%です。患者の年齢からみると、20〜40歳は29.5%、40〜59歳は49.3%、60歳以上は17.7%でした。閉鎖時に、482名が治癒し、82名の患者は持病があるなど退院の基準に満たせていないため転院しましたが、重症化の患者が見られませんでした。また、医療従事者の感染事例も見られませんでした6。

今回は、全国新型コロナウイルス感染者のうち、74,187人(全体の91.5%)に中医薬を投与しました。それらのデータから、中医は症状の緩和、重症化の予防、機能回復に効果があると証明されています7。

日本での漢方によるアプローチの可能性

中国は、今回の新型コロナウイルスの対応において、政府主導により中医の介入を早い段階から実施していました。一方、日本にも漢方の伝統があります。日本での新型コロナウイルスに対する漢方医学の運用ついて、以下のページも参考になります。

https://www.jmedj.co.jp/journal/aper/detail.php?id=14426

中国での新型コロナウイルス対策として、オンライン診療と中医学のアプローチについて紹介しました。新型コロナウイルスは深刻な危機ですが、医療イノベーションのきっかけにもなるのではないかと期待しています。中国の手法全てをそのまま日本に適用することはできませんが、有効だった施策は日本でも一考の価値があるのではないかと思います。

執筆者:鮑 柯含 Kehan BAO

株式会社メディヴァ コンサルタント。中国上海出身。中国華東理工大学ソーシャルワーク学科卒業後に来日。日本女子大学、精神科ソーシャルワーカーについて研究。医療と社会福祉の円滑な仕組みを構築し、高齢者事業を中心に中国と日本の双方に貢献したく、2015年に入社。 入社後、日本の経験を活かした海外での健診センター、高齢者事業の設立などを担当。