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河北新報社 記者と駆けるインターン

長谷部漆工 「思い込めて漆重ねる」

2015.03.14 01:00

D班

明治大3年 若井琢水

東北学院大2年 村山翔

東北芸術工科大2年 佐久間楓

東北大1年 高橋直道



 



3種類の自作した木ベラを巧みに使い分け、漆を木地に広げていく。

ボロボロだった仙台箪笥にツヤがよみがえった。



仙台市青葉区の長谷部漆工は創業150年を超える。

代表の長谷部嘉勝さん(62)は、2011年の東日本大震災で津波を被った仙台箪笥の修理を、

2人の弟子と引き受けてきた。




【木ベラを手に取り、仕事への思いを語る長谷部さん】



 



震災の年の7月、宮城県亘理町で自宅が津波を被った50代女性から「おばあちゃんの形見の箪笥を直してほしい」と電話があった。

ほかの家財道具は処分したが、仙台箪笥だけは捨てたくないのだという。



津波の痕跡が残る女性の家の中で、泥にまみれた箪笥を解体すると、

カビで真っ黒になった家族の着物や写真が出てきた。



長谷部さんは、悲しそうに思い出の品を片付ける女性の背中を見ながら

「せめて箪笥はきれいにしてお返ししたい」と決意した。



泥、汚れ、においを落とす。

乾燥、上塗り、研ぎを丹念に繰り返す。

修復が完了したのは、実に1年4カ月後だった。

通常の修理よりも1年以上長い月日を要した。



弟子の菅野裕喜さん(31)と一緒にリフォームを終えたばかりの女性の家に届けに行った。

箪笥の大きさに合わせられた一画に運ぶと、ピッタリはまった。



「こんなに時間が掛かって申し訳ない」

「やっとお返しできた」という思いが、

長谷部さんと菅野さんにはあった。

だが、女性から「これからも大切に使います」と感謝され、

仕事をやり遂げた充実感が込み上げてきた。



津波を被った箪笥の修理依頼は20件に上った。

震災から4年が過ぎたいま、最後の1棹に取り掛かっている。



使う人それぞれの思いが込められた仙台箪笥。

菅野さんは「嫁入り道具などとして大切に使い続けられてきた仙台箪笥の重みを、

あらためて感じている」と力を込めた。



師匠の長谷部さんも「脈々と続く伝統を途絶えさせてはいけない」。

弟子が箪笥と向き合う姿を見守りながら、

最高の仕上がりを求めて、木ベラの手入れを静かに始めた。



(了)



 



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