Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

河北新報社 記者と駆けるインターン

つながる場、ぽんぽこ 東北大2年 石澤脩

2014.04.03 00:00

 



「みかん、ひとつ取っておいてくださいね、今、財布持ってないのよ」



散歩中の常連客の言葉にハンチング帽の店主、渡辺智之さん(34)は、顔をほころばせながらうなずく。



仙台市若林区の荒町商店街で、酒屋前を借り、毎週水曜と土曜の日中に青果物露店「産直ぽんぽこ」を開いている。



午前9時頃、準備をしている渡辺さんに「久しぶりじゃない、寒いのにご苦労様」と通りすがりのお年寄りが言葉を掛ける。



 



「ある時、何も言わずに買おうとした子どもがいてね。買い物をするとき、会話がないのはつまらないよね。人と人とがつながる場でありたい」と渡辺さん。



 




曲がりネギを持ち笑顔の渡辺智之さん



 



 



六畳ほどの簡易テントの露店。



青果かごの上には、渡辺さんの出身地、荒浜地区周辺の提携農家がその日の朝に収穫した野菜や、果物類。



値札には、「大内さんの曲がりネギ」など生産者の名前が手書きされ、おこわやおにぎりなど農家の味も並ぶ。



 



「震災の影響で買い物に不便を感じている人たちに、地元の新鮮な野菜類を届けたい」



自身も津波で被災し、実家の全ての農地を傷つけられた渡辺さん。



毎週木曜には仮設住宅で店を開く。



荒浜出身の佐藤智恵子さん(77)は「スーパーは遠く、自転車はかごが小さいから2往復しなくちゃいけない時もあるの。だから、とても助かるのよ」とありがたそうに話す。



 



今年2月、仙台は記録的な大雪に見舞われた。



外出さえ難しい中でも、渡辺さんは店を開いた。



多くの客が「野菜が売り切れれば、早く帰れるでしょう」と身を案じて来店した。



 



寡黙ながら熱心に販売に取り組む姿が認められ、請われる形で荒町商店街の青年部会に入った。



商店街の行事に積極的に参加している。



「『ホウレン草一把からでも直接届けに行きます』って、気持ちでやっています」



取れたてだと一目で分かる土がついたままの野菜類のそばに立ち、訥々と話す。



 



ぽんぽこにあるのは、渡辺さんを含め地元農家が精魂込めて育てた野菜類と、売り手と買い手の顔の見える温かい関係性。



「小さいお店だからこそ、地域に根ざしていける強みがある。お年寄りへの御用聞きなんていうのもいいかもしれないなあ...」



露店を始めてから2年、「地域密着」の思いが、カタチになりつつある。



 



--------