松下幸之助経営回想録 📖
●この人には、多くの著作が出ておりますが、中でも、初期に出されたこの本は、松下幸之助の半生の経営回想録ですが、半生とは言え、考え方なり・この人なりを知る事が出来るでしょう。
今事業を経営されている人にとって、これだけを読んでも、会社の経営に携わるとはどういうことかという事を思い起こさざるを得ないとも言えるのではないでしょうか。
得てして創業者と言うのは、手探りで事業を始めていくことが多く、まるで冒険者です。
しかも、創業者と言うのは、誰もが、苦労ばかりの積み重ねの中に、自分なりの何かしらの経営理念をつかみ取っていきます。
だから、普通のサラリーマン人間を、良しとしない人は多いのです。
権利と義務を事業の中で秤にかけながら進めていくとしたら、権利は二の次、三の次であって、また計る事などしないのです。
それは、個人事業者にみられる特徴と言えるかもしれません。
とは言え、事業拡大する中では、変化・進化もしていくので、権利も幅を利かしていきます。
それは」「組織」という集団が形作られる過程では自然であると同時に、必然でしょう。
そして、それは、経営者の資質が問われる事にもなっていきます。
「経営の神様」と言われるには、それらを手中に収める能力も備わっているのでしょうか。
それとも、努力の成せる技なのでしょうか。
●俗に、「サラリーマン」と言われる人は、8時間労働なら8時間は働きますが、9時間・10時間働くことは、ほとんどしません。(ここには、権利を権利として捉えるのか、仕事はそのようなものではないと捉えるのかの違いがあります)
といって、昨今の【労働改革】に代表されるように、働く者の権利を主張するなというわけではありません。
経営者と(雇用される)労働者とは、「考え方」が違うのだと言う事が前提にあると言う事です。
それが経営者の悩みにも繋がります。
●もう一つ思うところとして、多くの著名な経営者は、どこかしらのお寺の住職と談話している話が出て来ます。
松下幸之助のこの本にも、その談話が出て来ます。
昔から、お寺の住職と言うのは、色々な相談相手でもあったのは、歴代の武将を見ればわかります。
他に類似した話としては、徳川家康が、風水を基にして江戸を作った有名な話があります。
各企業においても、本社ビルの一角には、小さな神社仏閣を安置していると言う事もよく見聞きするところです。
何かにすがると言う事も、一般人のみならず、経営者ならではの話です。
トップに立つ人は孤独だとは言い古された言葉ですが、傍に相談者が常に居る事の強みは、お分かりの事です。
個人事業はは、特に一匹狼だとそうです。奥さんをはじめとする家族が居れば、家族に頼ると言うより、家族の支えが得られることも多いわけです。
しかし、会社が大きくなるにつれ、そばに信頼できる相談相手がいるとは限りません。
例えば同族会社が大きくなるにしたがって、他人が経営者側に多くなって来れば、その不安要素が出てくるストレスにトップは悩まされ続けます。
それでも、信頼しやすい家族が傍に居ればまだよいのですが。今時は、承継者問題が多くあります。
企業が安定期に入ったら(もっと以前からでも)、事業承継者に値する人をはじめ、相談者を常に傍に置く体制を固める必要があります。
※「松下幸之助経営回想録」(プレジデント社)