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NPO法人YouToo

緑色の箸

2021.09.29 06:56

 最近、よく母と夕食を共にする。父が亡くなり、母がひとりになったからだ。

 仕事を終え、簡単にさっと作った一品の皿を持ち、息子と一緒に母の食卓に並ぶようになった。専業主婦歴の長い母が、しっかり主菜を用意してくれているから、という理由も大いにある。

 ある日、人数分の取り皿と箸を出す母からそれを受け取り、それぞれの席に並べた。息子の座る席に赤い箸、自分の前に緑色の箸を置く。能登で買ってきた輪島塗の大好きな箸だ。すると、母がわざわざ手を伸ばして、「あら、ゆうたくんが緑でしょう。男の子なんだから」と、赤い箸と入れ替えた。「え・・・?」男の子だから「緑色」、という理由はどこにあるのだろう。心の中で苦笑するしかない。


 思えば、母は男の子が女の子っぽい恰好をすることをとても嫌っていた。男の子は男の子らしくするものだと思っていたようだ。妹と二人姉妹で育った私は、男の子との比較をされることなく育ったが、もしも兄弟がいたら、相当、違う育て方をされたのだろうと想像がつく。

 

 食事をしながら、テレビで息子の好きなヨーロッパサッカーの試合を見る。すると、「あら、あの人、女の子みたいね」と、母。画面は、髪の長い選手がボールを片足で止めた瞬間を映していた。外国のサッカー選手は、髪が長ければ、頭のてっぺんで髪をお団子にしたり、ヘアバンドで止めていたり、ゴムで結んでいたりする。カラーを入れたヘアは当たり前だ。女子サッカーなら当たり前のその髪のカタチは、男子だってやっている。マッチョで筋肉質なプロサッカー選手をつかまえて、髪の長さだけで女の子みたいとは・・


 21世紀のグローバル社会において、ふるびた女と男の「らしさ」に縛られる人は、まだ日本のお茶の間に厳然と存在していることを知った気がする。