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リニア中央新幹線開業について

2021.10.03 03:18

1.はじめに

 こんにちは。高一の**です。今回は、リニア中央新幹線(以降”リニア”と省略することがあります。)について、主に開業後について執筆していこうと思います。

2.リニア中央新幹線とは

 リニア中央新幹線とは、2027年の品川駅~名古屋駅間開業、そして2027年以降の品川駅~大阪駅間開業予定で、超電導(特定の物質を混ぜ合わせて作った材料を冷やすと、電気抵抗がなくなるというもの)という技術を用いた次世代の新幹線です。2027年の開業が予定されていますが、

 南アルプストンネル静岡工区において、大井川の水資源の影響について、静岡県、流域市町等の理解が得られず、実質的に工事が進捗しない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています              
(リニア中央新幹線公式HPより引用)

 とあるうえ、新型コロナウイルス感染症の影響もあるため予定通りの開業は厳しそうです。

3.リニア中央新幹線の利点

①所要時間の短さ

 リニア中央新幹線の一番の利点は、所要時間の短さにあると思います。2021年4月17日時点では、最高速度時速603㌔を誇っており、東京から名古屋まで約40分、東京から大阪まで約67分というとても短い時間で移動することが可能です。東京から大阪までほぼ一時間となると、普段の通勤に利用することでさえ無理はない所要時間です。

②老朽化の進む既存の鉄道の代替としての役割

 東海道新幹線は開業から半世紀ほど経過しているため、設備等の経年劣化が進んでいます。また、今後数十年以内に発生すると言われている東海地震および南海トラフ地震に向けた最新の災害対策設備の導入が必要です。そのため、リニア中央新幹線に一新することでこれらの問題を多少解決することができると思われます。

③料金

 リニア中央新幹線の乗車料金は未発表ですが、JR東海が出した試算によると、東京~名古屋間の料金は同じ区間を走行する「のぞみ号」の指定席の価格から700円高くなった14750円程になると想定されています。これは、「のぞみ号」のグリーン料金の7790円よりも追加しなければいけない額ははるかに少なく、抵抗なくリニア中央新幹線を利用することができる額なのではないかと思います。

④リニア中央新幹線による東海道新幹線の利便性向上

 リニア中央新幹線開業に伴い、JR東海は東海道新幹線の中でも停車駅数が最も少ない「のぞみ号」の列車本数を減らし、停車駅数が多い「ひかり号」や「こだま号」の本数を増やすことで、「ひかり号」や「こだま号」の停車駅において、さらなる経済的利益が見込めます。また、東海道新幹線全体のダイヤに余裕が生まれるため、東海道新幹線での路線の工事や新駅の設置などの大規模工事による電車運行への大規模なダイヤ乱れなどの問題が軽減されます。

4.リニア中央新幹線の欠点

①災害時の安全性

 リニア中央新幹線は基本的にトンネルの中を走行します。東海道新幹線は走行区間中のトンネルの割合が17%ですが、リニア中央新幹線はトンネルの割合が86%となっており、非常に多くの区間をトンネルが占めます。そのため、災害時の避難は非常に困難になるのではないでしょうか。

Ⅰ.火災発生時

 リニアモーターカーにおいて火災が発生した場合、トンネル内で停車をすると避難がより困難になるため、次の停車駅またはトンネル外での停車が原則となっています。

Ⅱ.地震発生時

 リニア中央新幹線は地下を通る割合が多いです。地震は高架の上よりも地下の方が揺れは小さいため、地震には強いとされています。また、リニアモーターカーの超電導という仕組みは、地震に強い仕組みになっています。その理由は、浮上・案内コイルの磁力の作用により、車両を常にガイドウェイの上下左右の中心に位置させようとする力が働くことからで、地震時に車両が脱線することはないようです。

②騒音

 リニア中央新幹線は、トンネル外の高架通過時の騒音を軽減するため、フードの設置が検討されています。実際、山梨のリニア中央新幹線の試験走行区間内では、フードを設置して4両編成での時速500㌔走行を行い、67.5デシベルという結果が出ています。一般的な新幹線は75デシベル(一般的なパチンコ店内レベル)で、リニア中央新幹線は16両編成がフードがある区間を時速500㌔で走行した場合75デシベル程度と先ほどの結果から予測されており、さほど新幹線との騒音の差はありません。

③乗り換えに必要な時間

 利用する交通手段の乗り換え所要時間も、その手段で移動するかどうかを左右する重要なものになってきます。リニア中央新幹線の駅において、乗り換えをする可能性がある品川駅、そして名古屋駅はどちらも大深度地下における停車駅となり、乗り換え所要時間の増大が懸念されます。JRの試算によると、名古屋駅における乗り換え所要時間は、リニア中央新幹線から東海道新幹線に乗り換えした場合、「リニア中央新幹線のホーム上の移動」、「地上に出るためのエスカレータ利用時間」、「東海道新幹線のホーム上の移動」のすべての時間を合算すると3分から9分程度と見込まれていて、15分ほどあれば乗り遅れない程度になっています。これに比べて、東海道新幹線から東海道本線への乗り換え所要時間は最大7分となっており、リニア中央新幹線は二倍弱の時間を要します。さらに、リニア中央新幹線では空港のような保安検査場での手荷物検査が行われる案が出ており、もしも手荷物検査が行われるとなると、東海道新幹線よりも非常に大きなタイムロスを生むことになります。しかしながら、リニア中央新幹線は東海道新幹線に比べて所要時間がとても短いため、乗り換えによるタイムロスのせいでリニア中央新幹線に乗らない、ということはなさそうです。

 しかし、品川駅や名古屋駅、新大阪駅などのターミナル駅での乗換にはあまり不便はないかもしれませんが、長野県駅、岐阜県駅はそれぞれ飯田、美乃坂本付近に建設予定のため、これら途中駅での乗換は不便になってしまいます。

5.他の交通手段との比較


交通手段別の条件比較(東京ー大阪)

※ANAでの飛行機のチケットはビジネスきっぷで予約したとする

※飛行機は羽田空港から関西国際空港とする

※自動車(高速道路利用)の所要時間は、一般道路の利用も含むものとする

①料金

 やはり飛行機による移動が一番高くなりました。自動車は家族(3人以上)による移動がコストパフォーマンスの良さがうかがえます。ビジネスによる出張などの一人での利用の場合は、リニア中央新幹線や東海道新幹線が丁度よい値段帯だという印象を受けます。

②所要時間

 所要時間としては、リニア中央新幹線が最短になりました。飛行機がリニア中央新幹線に負けてしまった理由としては、飛行機が滑走路に入るための準備時間の長さや、予め出発ロビーで待たなければならないということ、国内線の保安検査場は搭乗機の出発20分前以前の通過が求められているということで、そのため飛行機のほうがリニア中央新幹線に比べて最高速度は速いものの、大阪までの所要時間では結果的にリニア中央新幹線のほうが短くなってしまったということです。これにより、大阪へ向かう際には飛行機の利用よりもリニア中央新幹線の利用の方がいいということになります。

③輸送効率

 輸送効率(一時間ごとに輸送できる人数とする)が一番高くなったものは、リニア中央新幹線となりました。やはり飛行機は鉄道に比べ一度に輸送することのできる人数が少ないので、輸送効率が悪くなってしまいました。また、意外にも東京から大阪まで9時間ほどかかる普通列車の方が、飛行機に比べて輸送効率が約1.4倍という結果になりました。しかし、普通列車は常に定員ちょうどで東京から大阪まで輸送するように計算してあるので、実際には席が決まっていて比較的満員になりやすい飛行機の方が輸送効率はいいものであると思われます。

⑤移動手段としての安定性

 表には書かれていませんが、移動手段としての安定性に関しても考えていきたいと思います。リニア中央新幹線の到着時刻の正確性としては、東海道新幹線と同じく、多少の気候の変化には左右されにくく、非常に正確であるといえるでしょう。それに比べ、飛行機は、気候の変化に左右されやすいうえ、滑走路の混雑や、整備の時間が長引いたりすることがあり、遅れて到着することが多いです。そして、自動車の利用は高速道路における事故による渋滞や、交通集中による渋滞により遅れやすいです。そのため、移動手段としての安定性としても、リニア中央新幹線や東海道新幹線などの鉄道を利用する方がいいのではないかと思われます。

⑥利用者の負担

 次は、利用者の負担についてです。3人ほどの利用において圧倒的なコストパフォーマンスを誇っている自動車による移動ですが、問題は利用者にかかる疲労についてです。自動車を長時間(2時間以上)利用した場合、運転している人だけでなく同乗している人にも長時間同じ体勢でいることが強いられ、これによる疲労が生じます。それに対して、新幹線及びリニア、航空機は同じ体勢でいる時間が短いため、身体への負担がかかりにくいです。また、リニアと新幹線は、走行中いつでも車内を立ち歩くことができるうえ、お手洗いの利用もできます。このような快適性においては、自動車による移動よりもリニア、新幹線による移動が快適であるといえます。

6.リニア中央新幹線は本当に開業するのか

 もともとは2027年に開業予定であったリニア中央新幹線ではありますが、現在はさまざまな問題が発生し、さらなる開業予定日の延期が見込まれてしまっています。ここでは、リニア中央新幹線が本当に開業するのかどうかということについて話していこうと思います。

①静岡県との対立

 一つ目の懸念すべき点としては、2章で先述した静岡県とのトンネル工事を巡る対立です。


大井川と交差するリニア中央新幹線予定ルート(JR東海HP、国土地理院HPをもとに作成)

 上の図のように、リニア中央新幹線の予定されているルートは大井川と交わることになります。この大井川の水をめぐって、対立が起きています。

 JR東海と静岡県との間で起きている対立の内容としては、大井川の地下のトンネル工事をJR東海が行うことにより、大井川の水が2トン/秒減り、山梨県側に湧出することによる周囲の環境への影響や、工事による水質の悪化、そして流域に住む県民の生活用水の減少があります。

 静岡県はJR東海に対して、トンネル工事によって流出した水のすべてを大井川に戻すことを要求しています。また、周囲の環境の保全についても要求していて、周辺住民からも不安の声があがっています。しかしながら、大井川はもともと氾濫の多い川として有名で、常に水が自然流出しているため、もしも工事によって流出したすべての水量を戻した場合、工事前よりも流量が多くなってしまうなどという情報も出ています。また、リニア中央新幹線が静岡県内を通過する場所はほんの少しであるため、ネット上では、静岡県に対する批判の声もあがっています。これらの論争により、さらなる開業の遅れの可能性も出てきています。

②コロナによる鉄道業界全体の収益の悪化

 新型コロナウイルスの感染爆発による国の緊急事態宣言により、国民は県境をまたぐ移動を自粛したことで、旅行目的の鉄道の利用は大幅に減少しました。これによる健全な経営状況の悪化による工事の遅れなどが生じた場合、さらに開業が遅れる可能性があります。

③工事費の増加

 最近、リニア中央新幹線は工事費用の増加が見込まれています。たとえば、名古屋駅の地下水の増加が原因の地盤強化費用の増加や、地震などの災害時における橋脚部分の安全性を高めるための費用、そしてターミナル駅建設の複雑化による費用の増加が見込まれています。これに対しJR東海は、費用の増加が直接工事の遅れにつながることはないと言っています。

7.リニア開業後について

①利用人数

 東京~名古屋、東京~大阪間においての交通機関としては主に航空機の利用、新幹線の利用、自動車の利用などの選択肢はありますが、5章の「他の交通手段との比較」において話したように、少人数による利用においてはリニアが一番利便性は高く、料金はさほど高くはないため、リニアの利用人数は高いものであると推測されます。

②経済効果

 リニア中央新幹線の開業による利益は、リニア中央新幹線の利用による収益の増加だけではありません。リニア中央新幹線開通による停車駅周辺の商業、観光面での利益の創出も見込まれています。そのため、リニア中央新幹線によって東京、名古屋、大阪の日本の中心都市が結ばれることによる「スーパー・メガリージョン構想」というものが作られ、リニア中央新幹線沿線の再開発が進んでいます。

8.まとめ

・リニアの利用は良いのか悪いのか

 東京から大阪もしくは名古屋への少人数による移動はリニアがもっとも好条件となります。所要時間を考慮した場合、値段的にも一番いい条件になります。しかし途中駅までの利用は、途中駅で降車後の行動が多少不便になってしまうため、途中駅での降車を目的とした場合は、東海道新幹線などの他の路線を利用したほうがいいのではないかと思います。

・リニア開業年について

 現段階での目標は2027年ですが、静岡県との対立などにより少なくとも2027年以降になると見込まれます。

・リニア開業による影響について

停車駅近辺の経済的な好影響や、人流が加速することによる影響が見込まれます。しかし、建設による自然環境の破壊による影響は多少ありますが、リカバリーすることはできます。

9.参考文献

・JR東海公式ホームページ(2021/6/5アクセス)

https://jr-central.co.jp/

・国土交通省公式ホームページ(2021/6/5アクセス)

https://www.mlit.go.jp/

・東洋経済オンライン(2021/7/9アクセス)

https://toyokeizai.net/

・国土地理院公式HP(2021/7/13アクセス)

https://www.gsi.go.jp/

・リニア中央新幹線公式ホームページ(2021/7/13アクセス)

https://linear-chuo-shinkansen.jr-central.co.jp/

・国際超伝導産業技術研究センター(2021/7/20アクセス)

http://www.istec.or.jp/


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。