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首都圏普通列車グリーン車について

2021.10.03 10:31

1.はじめに

 鉃道研究部にお越しいただきありがとうございます。この文化祭が終わると私はあと1年間最高学年として部活動生活を送ることとなります。残りの部活動も暖かい目で見守っていただけると幸いです。

 ところで皆さんはお出かけの帰りなどにグリーン車を使われたことはありますか?特に首都圏の東海道線などに連結されているグリーン車は特になじみ深いと思います。今回はそんなグリーン車についてみていきたいと思います。

 この文章の中ではグリーン車のことを首都圏の普通列車に連結されているグリーン車とさせていただきます。また、この研究は2020年7月に執筆したものです。

2.概要

 まずはグリーン車について軽く説明していきます。

 グリーン車とはJR東日本が2004年から開始したサービスのことで2021年6月現在下記の路線図の範囲にて運行されています。列車の運行形態としては10両または11両の編成の4号車と5号車を2階建て車両として、その2両を丸々グリーン車として運行しています。この2両はグリーン券がないと原則立ち入り不可であるため、乗車券のみだとグリーン車を通り抜けることはできません。


↑グリーン車の運行範囲

 グリーン券の料金は下図の通りで条件によって多岐に渡ります。ホリデーとは平日でない土休日祝日のことで平日はホリデーに比べ200円高くなります。また、事前料金はグリーン券の乗車駅で購入した場合の料金で、車内料金はその名の通りグリーン券を買わずに乗り込み車内で精算した時の値段で、車内料金のほうが事前料金よりも260円高くなります。


3.グリーン車の課題

3-1 設備の老朽化

 現在使用されている車両は横須賀線に導入されているE235系を除いてほとんどの車両が15年以上経過しています。それだけであれば大きな問題にはなりえないのですが、先述したE235系のグリーン車が導入されている横須賀・総武快速線とそれ以外の線区においてグリーン車の格差が生じてしまっているのです。具体的にはE235系のグリーン車にはフリーWi-Fiやコンセントが装備されていますが、それ以外の車種には装備されていません。これらのサービスは現代においては重要なサービスであるといえるためこの差は大きいでしょう。


横須賀線に導入されているE235系1000番台

3-2 50kmまでの時の料金

 グリーン券の50kmまでの料金は平日の事前料金でも780円です。しかしながら一部線区、具体的には常磐線、東海道本線の特急の特急券は50kmまで料金は現在760円でありグリーン車よりも安くなっています。

 特急のほうが、速達性があり、シートピッチが広くとられていて、今あげた線区のうち常磐線系統の特急は全席にコンセントがついていてフリーWi-Fiもあり、東海道線系統の特急にも窓側にはコンセント付きと車内での快適さはやはりグリーン車が劣っています。これらの線区のグリーン車には現在そういった設備がなく、特急料金+20円の価値があるかといわれると微妙でしょう。

 無論グリーン車連結列車のほうが運行本数が多く、特急よりも利用が容易であるなどの利点はあります。さらに常磐線、東海道線の特急では50km以内の区間はそう多くありません。乗車時間もそれほど長くないため悪くないかのように見えますが、やはりこの設備で指定席ある特急より高くなってしまっているというのは改善すべきなのではないでしょうか。

4.課題に対する改善点

4-1

① グリーン車を新造する

 これは設備をバージョンアップさせたグリーン車を新造し、既存のグリーン車を置き換えるという案です。おそらく新造するグリーン車はE235系に連結されているものと同じものになるでしょう。

② 既存の車両を改造する

 こちらは既存の車両に対し順次改造を施し設備をバージョンアップするというものです。こちらも改造後の設備はE235系のものに準じた設備になると思われます。また、この場合改造する間運用ができないことから予備車が必要になるという可能性もあります。

 筆者はこの中で②のほうがよいと思います。理由としては現在15年以上使用されているE231系1000番台は置き換えの激しい首都圏であれば、置き換えの話がいつ出てもおかしくありません。

 そうなった場合のグリーン車は用途がなく廃車になる可能性が高く、新車をわざわざ製造するというのは割が合わないからです。

4-2

① 料金を下げる

 この案は平日50km以内のグリーン券の料金を下げるというものです。具体的にどれだけ下げるのかというと現在よりも100円から150円程度の値下げが良いと思います。これによって、現在よりもサービスの差と値段の差がよくなるでしょう。

② 割引きっぷの企画

 これは割引きっぷの作成によってグリーン券の料金を下げるというものです。例えば回数券のように何枚かつづりで販売するものがよいのではないかと思います。しかしグリーン車の利用状況では曜日によって偏りがあることから10枚つづりなどの枚数が多い回数券よりも2枚つづりなどの少ない枚数での販売を行ったほうが良いかもしれません。


東海道線夜の下り品川駅から川崎駅のグリーン車利用状況

凡例:〇…空席あり、△…空席わずか 左から月曜、火曜、水曜、木曜、金曜

 私はこの中では②のほうがよいと思います。理由としてグリーン車の主な客層にサラリーマンが多いということです。土休日ならば家族などレジャー目的での利用者が多いため一度限りしか利用しないという人々が多いと思われますが、サラリーマンであれば何回も利用する機会が多く、全体としての利用回数を増やすことにも貢献するということが挙げられます。また、平日50km以内のグリーン券の料金を下げるとグリーン券全体の値段に統一感がなくなってしまい利用者の混乱を招く可能性もあるからです。

5.中央線のグリーン車導入について

 そんなグリーン車ですが新しく導入される線区があります。山手線の真ん中を通り、真西に伸びる中央線です。中央線では現在の6両と10両の編成に新たに4号車と5号車を組み込み、それぞれ8両と12両にします。ここで導入されるグリーン車はこれまでのグリーン車にはなかった両開きのドアを採用し、スムーズな乗降を実現します。これに際してホームを12両にするための対応工事などが中央線の各駅で始まっており、またトイレを6号車(旧4号車)と、新しく組み込んだグリーン車の4号車に設置する工事が進められています。

 元々は2020年度のサービス開始を目標としていましたが調整の遅れから現在は2023年度末のサービス開始に向けて事業が進んでいるとのことです。トイレに関しては既に導入が始まっており、現在の4号車に設置され、利用できる状態になっています。

 導入区間は中央快速線の東京駅から大月駅までと青梅線の立川駅から青梅駅となっていて青梅線の場合は該当区間の中央快速線に直通する列車すべてがグリーン車付きで運転されます。

 そんな中央線へのグリーン車導入ですが懸念事項があります。

1 特急列車

 先述した通り現在のグリーン車の値段では50km以内の料金は常磐線系統などで採用されている料金体系の50km以内の料金よりも高くなってしまいます。そして中央線特急は、この料金体系を使用しているため中央線においてもグリーン車のほうが高いということになってしまいます。

 さらに東京駅から八王子駅の距離は50kmを超えません。先ほどの常磐線系統や東海道線系統などでは50km以内の区間というのはそう多くなく、多くの通勤客はさらに遠い場所へ行く人が多かったのですが、この場合、東京駅から八王子駅や新宿駅から青梅駅は50km以内でありこれらの区間をカバーする通勤用の特急「はちおうじ」「おうめ」があります。

 ですから、先ほど提案した案のようにグリーン券の値下げをしたほうがよいと思います。

中央線系統の特急に使用されるE353系

2 遅延

 先の中央線のグリーン車の導入についての概要を話していた際、ドアを両開きにして乗降をスムーズに行うと言いましたが、筆者はそれだけだとやはり遅延対策としては心もとないと思います。

 理由としては前提としてグリーン車は2つしか乗降口がなく、乗降に時間のかかる車両だからです。両開きドアを採用して開口幅を広げてドアの開閉時間を短縮させても乗降口が少ないという欠点は変わらないためやはり乗降に時間がかかってしまうと思います。

 また、中央線は元来遅れやすい路線であるので、それによって人が多く乗り降りをするため遅れが広がるということも考えられます。

 これの対策としてはグリーン車の乗降口を増やすのが効果的ですが導入予定のグリーン車は2ドアであることを踏まえるとグリーン車側でとることのできる対策はあまり効果がないと思われます。それよりも余裕のあるダイヤを作ることなどの面で対策を行うほうが効果的であると思われます。

6.まとめ


・東海道線、宇都宮線、高崎線、常磐線のグリーン車はコンセントやフリーWi-Fiなどの設備を搭載する改造を行うべきである。

・料金に関しては細かい枚数での回数券を販売すべきである。

・中央線のグリーン車導入に関してはダイヤなど別の部分での遅延対策を強化すべきである。


7.おわりに

 どれだけたっても研究の順序というか枠組みというかが全然変わらないですね。それを良しとするかどうかはわからないですが、残りの研究のどこかでは新しい書き方をやってみたいと思います。

 この研究を書いている最中、鉄研では次期役員の選挙など引継ぎがすでに行われようとしていて私が最高学年になるのかということを感じさせました。1年間後輩を引っ張ることができるのか、自分のやりたいことがやれるのか、鉄研をより良いものにできるのかとあれこれ考えてしまいます。

 しかし1年後どうなっているのかは誰にもわかりません。

 まあこれからの不安などはここまでにしてひとまずはここまで読んでくださった方々、提出遅れによって迷惑をすごくかけた班員達、校閲をしてくださった顧問の方々にお礼を申し上げたいとおもいます。

 ここまでお読みいただきありがとうございました!!

8.参考文献

・JR東日本

https://www.jreast.co.jp/

・日経XTECH

https://xtech.nikkei.com/

・NAVITIME

https://www.navitime.co.jp/


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。