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みなとみらい線の行く末

2021.10.05 07:49

1.はじめに

 皆様こんにちは。浅野学園打越祭、そして鉃道研究部へお越しいただき誠にありがとうございます。高校一年の〇〇です。時間の流れというものは早いですね。今回を含めて研究を執筆するのもあと4回となってしまいました。高校生になっても中学生のころと大して変わらないだろう、と勝手に思っていましたが、実際はそんなことありませんでした。正直きついですが、なんとか頑張っていきたいと思います。

 さて、今回は知られてそうであまり知られていない、横浜高速鉄道みなとみらい線について研究していきたいと思います。

2.みなとみらい線とは

 横浜高速鉄道みなとみらい線は、2004年2月1日に開業した、神奈川県の横浜駅と元町・中華街駅の間を結ぶ全長4.1kmの比較的新しい路線です。横浜駅からほぼすべての列車が東急東横線・東京メトロ副都心線・東武東上線・西武池袋線との相互直通運転を実施しています。

 S-TRAIN・特急・通勤特急・急行・各駅停車の5つの種別が運転されていて、基本的にS-TRAIN・特急・通勤特急・一部の急行は10両編成、残りの急行と各駅停車は8両編成で運転されています。

 車両は自社所有のY500系、東急電鉄の5000系、5050系、東京メトロの7000系、10000系、17000系、東武鉄道の9000系、50070系、西武鉄道の6000系、40000系が使用されています。

みなとみらい線の路線図

S-TRAINはみなとみらい線内のみの乗車は不可

みなとみらい線のY500系

3.みなとみらい線車両留置場計画

 そんなみなとみらい線ですが、現在進行中の計画として元町・中華街駅に留置線を設置するというものがあります。これは、元町・中華街駅の終端部の先にトンネルを延長して、そのスペースに10両編成を4本停泊させることができる留置線を建設する、といったものです。

 なぜ、この場所に留置線を建設するのでしょうか。今まで、横浜高速鉄道は東急電鉄所有の元住吉検車区の一部を借り上げ、車両を留置させてきました。しかし、その契約が平成31年までとなっており、東急電鉄側としても、相鉄・東急直通線に伴う編成数・量数の増加などの理由から、借用期限をこれ以上延長するのは厳しいという見解を示しました。そこで、従来行き止まりとなっている元町・中華街駅の終端部から「港の見える丘公園」付近まで線路を延伸し、その延長部に車両を停泊させることができる留置線を設けることになったのです。

元町・中華街駅付近の配線図

破線で囲まれた部分が新設される留置線

 この計画の最大の目的は車両の留置場所確保ですが、他の目的もあります。

①運転の柔軟化

 現在の元町・中華街駅は島式ホーム1面2線の駅であり、ホームの容量不足により短時間での折り返しを強いられています。

 しかしながら、この留置線を設置することで、現在は到着して2分後に折り返している列車を留置線に収容し、17分後に発車する列車に充当させる、ということが可能になり、遅延等の影響が折り返し列車にまで響くといったことを減らせると考えられます。

 また、東横線が運転見合わせになる等のトラブルが発生した際にも、一時的に10両編成を留置線に収容し、8両編成・各駅停車だけの運転などにすぐに変更でき、ダイヤ乱れなどの被害を抑えることができるようになると思われます。

②S-TRAINなどの有料座席指定列車の運転が容易になる

 みなとみらい線で運転されている有料座席指定列車「S-TRAIN」は、元町・中華街駅まで回送され、車内点検を実施した後に客扱いをしていますが、この間ずっと片側のホームを占有している影響で、残りの1線だけで折り返しを行っている状態です。

 そこで、留置線を設置すると、車内点検等の作業を留置線に引き上げている時に実施できるようになるため、ダイヤがより柔軟に組めるようになるうえ、さらなる増発もできると思います。

 また、その場合、元町・中華街駅までの回送列車を営業列車にすることも可能になり、今まで現実的でなかった平日の通勤目的での座席指定列車を設定することもできるようになるでしょう。実際、直通先である東急東横線では座席指定列車の増発が検討されており、実現された時にはこの設備が役立つことになるでしょう。

 用地確保や建設コストなどの課題もありますが、この計画はメリットのほうが大きく、これ以外にみなとみらい線用の留置線を設置することができる方法はないので、この計画は実施されるべきだと思います。

4.問題点

①新型コロナ感染症に伴う収益の減少

 2020年からの新型コロナ感染症の世界的な蔓延の影響で、首都圏の鉄道各社は大幅な減収となっており、みなとみらい線も例外ではありません。

 2019年度には経常利益が911万円だったのが2020年度には770万円、2021年度には3508万円の経常赤字を出しています。いまだ感染の終息が見えない中、どのような対策を打つのが適当なのでしょうか。

②JR根岸線との競合

 みなとみらい線と同様に横浜駅からみなとみらい地区を通り、元町方面に向かう路線としてJR根岸線(以降根岸線)があります。根岸線の石川町駅は元町・中華街駅から850mほどしか離れておらず、石川町の副駅名が元町・中華街となっていることから、みなとみらい線と根岸線はこの区間で競合しているといえるでしょう。それでは、この区間ではどちらの路線が優勢なのでしょうか。

 この表は、みなとみらい線の横浜~元町・中華街間と根岸線の横浜駅~石川町駅間の所要時間と料金を比較したものです。所要時間においてはそこまでの差はついていないものの、料金では根岸線のほうが60円も安くなっており、非常にみなとみらい線が不利です。また、根岸線は横浜駅からJR各線からの乗り継ぎが可能で、湘南地域や山手線の東側から来た乗客はほぼ根岸線に流れています。どうすればみなとみらい線に乗客を誘導することができるでしょうか。

5.対応策

①新型コロナ感染症に伴う収益の減少

 この問題を完全に解決するには新型コロナ感染症が終息するのを待つほかないと思います。みなとみらい線はパシフィコ横浜のようなイベント施設の需要や、中華街の観光需要が収入源となっており、これらの需要が回復するには新型コロナ感染症が終息するのを待つ必要があるからです。そのため、ここでは新型コロナ感染症が日本国内で収束された後の対策を考えていこうと思います。

 収益の増加に対して一番効果的な方法は、おトクなきっぷの販売を促進することでしょう。すでに、みなとみらい線の直通先である東急電鉄・東京メトロ・東武鉄道・西武鉄道では、始発駅から横浜駅までの往復切符にみなとみらい線の乗り放題と中華街の指定店舗でのお食事券をセットにした切符を販売しており、これらの切符の販売を促進することは直通先各社の経営を改善することができるだけでなく、中華街の店舗の経営改善もすることが可能であり、中華街の活気を取り戻すことにもつながると思います。また、ただおトクなきっぷの販売を促進するだけでなく、これらの切符を使用する外国人向けのツアーも計画するといいと思います。

 みなとみらい線自体のアピールとして、車両全体に沿線観光地のラッピングを施す、といったものも良いでしょう。みなとみらい線のY500系は直通先各社の路線で日常的に運転されており、ラッピングした車両を運転したときの宣伝効果は絶大でしょう。

②JR根岸線との競合

 先ほど、みなとみらい線と根岸線では根岸線のほうが有利であるといいましたが、みなとみらい線にも強みはあります。それは、西東京・埼玉地区からの利便性沿線の集客スポットの数、そして圧倒的な知名度です。

 東武東上線・西武池袋線からみなとみらい線にはそれぞれ毎時2本ずつ、「Fライナー」と呼ばれる最速種別が運転されています。また、東武東上線や西武池袋線の沿線にはJR線がほぼ存在せず、JR線が存在する区間でもみなとみらい地区に一本で来ることはできません。そのため、この区間からみなとみらい地区への輸送はみなとみらい線の独占状態となっているのです。

 2つ目の集客スポットの数についてですが、みなとみらい線の沿線にはパシフィコ横浜やランドマークタワーといった名だたる施設が存在しており、新型コロナ感染症の感染拡大が収まった後で、もし中華街に向かう人の大半が根岸線を利用するようになったとしても最低限の収益を確保できるのです。

 また、中華街への交通手段としての知名度はみなとみらい線のほうが高いといっていいでしょう。根岸線の石川町駅はあくまで副駅名を元町・中華街にしているだけですが、みなとみらい線の元町・中華街駅は中華街そのものを駅名となっています。観光客の人が中華街に行きたいとき、多少高くても元町・中華街駅に向かうのは予想できます。

 いっそ石川町駅の副駅名を廃止するべきと考える人がいるかもしれません。しかし、石川町駅の副駅名は2016年に制定されたばかりで、副駅名なしの状態に戻すとなると駅名標や車内ディスプレイの画面を更新する必要があるため、かつての状態に戻すとは考えづらいです。

 これら3つの強みより、私はみなとみらい線が現在のままでも根岸線に対抗できると思います。

 また、近年のJR東日本は根岸線の横浜駅~新杉田駅、みなとみらい線の全線が乗り放題の「ヨコハマ・みなとみらいパス」というものを販売しており、競合というよりはむしろ協調の姿勢を見せています。しかし、この切符は現状JR線の駅でしか購入することができないため、みなとみらい線の駅でも購入できるようにするといいと思います。

6.総括


・新型コロナ感染症の感染拡大による収益減少については、直通先の路線や横浜駅で連絡している路線から、みなとみらい線を経由して中華街を訪れるためのおトクなきっぷの販売を促進する。また、保有する車両に中華街等の沿線観光地についてのラッピングを施す。

・根岸線との競合に関しては、あえて対策をうつべきではなく、むしろ協調していくべきである。ただし、現在販売されている「ヨコハマ・みなとみらいパス」という切符は根岸線の駅でしか購入できないため、みなとみらい線の駅でも購入できるようにする。


7.おわりに

 いかがだったでしょうか。いつになってもよい研究が書けたという自信は生まれないものですね。他の方の研究を読む合間の息抜きとして、読みやすいものになっていれば幸いです。

 当初はJR横浜線と直通運転をする予定が国鉄の経営難によって実現せず、東急東横線という直通先を見つけたものの数々の難工事によって開業予定が大幅に遅延、開業後も巨額の利息返済や東京メトロ副都心線・東武東上線・西武池袋線との相互直通運転による各駅のホーム10両化工事(新高島駅は緊急時用の簡易ホームのみ)、元住吉駅脱線事故による車両損傷など様々な難題に突き当たってきたみなとみらい線ですが、先程述べた元町・中華街駅留置線計画に、事実上の休止になっている本牧方面延伸計画、更なる未来を見据えれば横浜市の人口減少等、まだまだやらなければならないことはたくさんあります。みなとみらい線の未来が良いものであるように願い、この研究を締めさせていただきます。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

8.参考資料

・国土交通省

https://www.mlit.go.jp/

・みなとみらい線 | 横浜高速鉄道株式会社

https://www.mm21railway.co.jp/

・JR東日本:東日本旅客鉄道株式会社

https://www.jreast.co.jp/

・京急電鉄(KEIKYU/京浜急行電鉄)

https://www.keikyu.co.jp/

・東武鉄道公式サイト

https://www.tobu.co.jp/

・西武鉄道Webサイト

https://www.seiburailway.jp/

・相鉄グループ

https://www.sotetsu.co.jp/

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。