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発車メロディの音楽的要素

2021.10.05 08:42

1.はじめに

 こんにちは。中学3年の〇〇です。今回は、発車メロディの音楽的要素について、具体的な例を挙げながら研究していきます。久しぶりの研究で至らない点も多々あるかと思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。では始めさせていただきます。

2.和音と調

 調には長調と短調の2つの種類が存在します。長調は明るい雰囲気、短調は暗い雰囲気であるのが一般的です。童謡「小さい秋」などは、曲全体を通して暗い雰囲気であるので、こちらは短調となるわけです。また和音には協和音と不協和音という2つの種類が存在します。協和音とは、音を発したときに和音を作っているそれぞれの音が調和している状態の和音のことです。

 それに対し不協和音は音が調和せず、場合によっては不快な響きを奏でる和音です。日常的な例で言うと、地震が発生したときにテレビなどで放送される「緊急地震速報」が有名です。あの音を聞くと、強い恐怖心や不安を感じる方がほとんどでしょう。

今回は発車メロディに存在する調や和音の種類を研究したいと思います。

3.メロディとその特徴

①Water crown

 1つ目は「Water crown」です。多くの駅で使用され、有名なのでご存知の方も多いのではないでしょうか。浅野の最寄り駅、JR新子安駅の2番線でも使用されている発車メロディです。聞いたことのある方はわかると思いますが、かなり明るい曲です。ハ長調という調であり、またテンポも速いので、明るく軽快なメロディとなっています。

②緑の車窓

 2つ目は「緑の車窓」です。1つ目の「Water crown」と違い、こちらは検見川浜駅(京葉線)の1番線のみでしか使用されていない、マイナーなメロディです。嬰ハ短調(嬰ハ、つまりド#を主音とする短調)であるため、ミステリアスな暗い雰囲気の曲です。

③スプリングボックス

 3つ目は「スプリングボックス」です。池袋駅7番線、浜松町駅1番線など、都内で多く使われている発車メロディの1つです。ハ長調の旋律ですが、1小節目4拍目の「レファソ♯」や3小節目3拍目の「ラ♭ドミ」の和音などは不協和音となっていて、長調で美しく明るいメロディの中に少し怪しげで不思議な雰囲気のある曲です。

④Gota del Vient

 4つ目は、横浜駅10番線や新橋駅4・5番線などで使用されている「Gota del Vient」という曲です。ハ長調の軽快な6連符(この場合、1拍を六等分した音符の一群)のメロディと、最後の駆け上がるようなところが魅力的な曲です。聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。

4.発車メロディが人に与える効果

 ここまで4つ、楽譜を使って発車メロディを紹介しましたが、自分が楽譜を見た中で不協和音が含まれているものは少なく、また長調が多い印象でした。では発車メロディには、ホームに立っているお客様にどのような効果を与えるのでしょうか。

①BPM

 まずBPMについてです。そもそもBPMとはBeat Per Minuteの略であり、1分間に刻まれる拍の回数の値のことで、曲のテンポを表しています。

 先に出した3つの発車メロディのBPMを調べてみました。

 ここで人間の歩く速さをBPMにしてみると、4分音符=100~130となっています。よって「Gota del Vient」は少し遅いものの、他の3つはこの人間の歩く速さに一致していることがわかりました。この4つ以外の発車メロディも調べてみましたが、ほとんどの曲がこの範囲と一致しています。つまり発車メロディは駆け込み乗車を心理的に防ぐ働きがあるのではないでしょうか。

②最後の音

 続いて、メロディの最後の音に注目してみたいと思います。前述した通り、協和音は比較的安心感を与え、不協和音は不安感を掻き立てる和音です。例に挙げた4つのメロディはどうでしょう。「緑の車窓」を除き、他の3つのメロディの最後の音は協和音と呼べる和音で、少なくとも暗い印象を与える音ではありません。他を調べてみても、不安感を与える音で終わるメロディは少なく、今回紹介したものの中で「緑の車窓」は例外となるメロディだと思います。

③ラスト2小節の動き

 「スプリングボックス」、「Gota del Vient」のラスト2小節を見てみてください。

 まずは「スプリングボックス」について、3小節目の「ラ♭ドファ」という暗い響きから4小節目の「ドミソシド」という明るい響きへ移行しています。暗い響きで人に緊張感を与えてから、明るい響きに移ることでさらに安心感を与え、事故防止・駆け込み乗車防止を図っているわけです。

 また「Gota del Vient」について、4小節目で「ラミレドレミ」という響きが繰り返されてから、5小節目で駆け上がっています。2つをピアノなどの楽器で奏で比べてみると、前者の方が不安感を感じるのではないでしょうか。やはりこちらも緊張感・不安感→安心感という流れを作ることで駆け込み乗車などの防止を図っているわけです。

5.さいごに

 いかがでしたでしょうか。自分の好きな音楽と鉄道を掛け合わせた題材で研究を書いてみました。発車メロディの存在意味を裏付ける事を知ることができてよかったです。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

6.参考文献

・ベル音楽の構造とその心理的効果に関する考察

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/33/5/33_5_281/_pdf/-char/en

・鉄のバイエル 鉄道発車メロディ楽譜集 JR東日本編 松澤健 ダイヤモンド社


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。