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リクナビと佐藤くんとチーズケーキ②

2017.04.04 06:25

………

「東京きたの初めてかい?」

どうやら声をかけられたらしい。高木は顔を上げると少年がニヤニヤしながらこちらを見ている。

「あ、うん。」

「そうなんだ。ここは新宿っていうんだけどね、東京の中でも群を抜いて迷路だと思うね、僕は。」

ここが新宿ってことくらいわかる。バスから降り立ってバスターミナルを出たとき目の前に偉そうに構えていた駅に「JR新宿駅」と書かれているのだから。

日曜日の新宿駅は人で溢れていて、南口とのたまう改札口は一定の狭い間隔で人々が往来している。高木の故郷には「南口」なんていう概念はない。あったのはたった一つの券売機と眠そうな目をした年老いた駅員だけだ。


怪訝そうな高木の視線に気づいたのか、少年はニコリと笑って胸を張って言った。

「じゃあ、いこっか。」

「いくってどこにさ。」

「とにかくいくんだよ。」

「人を待ってるんだ。」

「知らないよ。」

「じゃあ知ってよ。」


本当は高木、人など待っていなかった。待ってくれる人も、この街にはいない。

少年が大きな目を見開いて高木に聞く。

「そういえばボク、お名前は?」

明らかに年下の少年に「ボク」と呼ばれる筋合いなどないが高木は渋々答える。

「高木、だけど。」

「高木、ね。おっけい。僕は佐藤。さ、いこっか。」

「だからどこに。」

佐藤くんは有無を言わさず高木のキャリーケースを引っ張って東南口の方へ歩いていく。

「待てって。おい。」

高木は、佐藤くんを追いかける。


……………

三題噺「リクナビと佐藤くんとチーズケーキ②」をお届けします。誰に届くんだろうね。


今のところキーワード「佐藤くん」しか使えてないからこれは長期戦になりそうな気がします。

高木くんとやたら偉そうな少年「佐藤くん」の出会いを書きました。ご査収ください。


(続く)