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選択制夫婦別姓について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

2021.10.07 07:03

 夏はもう秋秋。夏はおしマイタケ。秋はうれシイタケ。よろこビール。

 選択制夫婦別姓について考えてみます。この件については既に四半世紀にわたり課題になっているようです。男性は婚姻によって氏が変わらない人が多いので、特に男性が議論に前向きに応じて来なかったのではないかというのは私の偏った思い込みでしょうか。現状の日本の民法(第750条)においては夫婦同氏であることが定められています。婚姻届けを提出するにあたり夫または妻の氏を称することになります。

 そもそも、江戸時代までは氏を使用することが許されたのは公家や武士や同心などの役人に限られていましたので町民や農民には氏はありませんでした。確かに時代劇を思い出すと、暴れん坊将軍に出演していた北島三郎さんはめ組の辰五郎でしたし、必殺仕事人に出ていた京本正樹さんは組紐屋の竜、村上正明さんが演じるのは花屋の政でした。同心である藤田まことさんが演じる中村主水以外は氏の使用が見当たりません。氏の使用が皆に許されたのは明治に入ってからです。当初、明治政府は夫婦の氏について、妻の氏は実家の氏を名乗らせる夫婦別氏制をとっていました。しかし、政府の意向に背き多くの妻は夫の氏を名乗っている状態でした。夫婦同氏制は多くの国民のニーズによるものだったのです。その実情に合わせて明治政府は「家」制度を導入し、夫婦が同じ家を名乗ることによって夫婦同氏制としました。そして、昭和22年には旧来の「家」制度を維持しつつ、男女平等を旨とした現在の夫婦同氏制を制定して現在に至っています。

 明治から昭和、昭和から平成、平成から令和と時代が移り変わると共に氏に対する国民の捉え方も多様化しています。戦後70年以上が経過し日本に平和が根付いてきました。産業界は多分に労働力を買われる農業や漁業等の第一次産業から、鉄鋼や建設などの第二次産業を経て、流通や小売りなどの第三次産業に隆盛が移ろいました。それに合わせて女性の社会参画も目覚ましく、男性を大黒柱だとして依存する家制度的な感覚や発想も急速に薄れてきていると思います。

 日本において男性が夫婦間であっても主導しているような印象が強いのは鎌倉時代からの家父長制や家督制度の延長上にある思想の影響が残っているのかもしれません。20世紀後半までは日本に限らず世界中でジェンダー格差はありました。産業的な革命が世界に普及することで女性の社会参画は進み、参画した社会で役割や賃金などのジェンダー差別が明らかとなるにつれて克服と改善が諮られてきました。

 社会の変革に伴い男女格差の解消も進む中、家庭においても家父長的な家制度を主とする思想に影響されることは少なくなっています。いよいよ家庭内においても男女間の優劣の区別が解消されることが正しいことであると理解されるようになりました。そうすると必然的に氏の問題も取り沙汰されます。

 現状の婚姻では96%が夫の氏で届けられています。よって、夫婦同氏制に不満をはじめ問題意識を持っている人たちのほとんどが女性です。婚姻届けを提出する女性の約90%以上は夫の氏となることに対して否定的ではありません。しかし、少数派ではありますが結婚を契機に氏の変更を否応なく強いられたと感じて不満を抱く女性が存在することも事実です。そのような女性たちは自身の固有の氏で育ってきたアイデンティティを損なっただとか、人権を毀損することであり憲法に違反するだとか、氏の変更には大変な労力を強いられるだとか、マイノリティの切り捨てだという主張をしているようです。中には氏の変更が嫌だから結婚する決心がつかないだとか、氏の変更が嫌だから事実婚しか選択できず法的扶助等で不利益を被っただとか、氏の変更が伴うので結婚に前向きになれない若者が多く少子化が進む原因となっているとまで主張する人がいます。

 上記のような氏の変更に関する不利益を唱えているのはほとんどが女性です。ですが、現状の民法には婚姻によって氏の変更が伴うのは女性に限定はしていません。民法では夫または妻の氏を称するとしています。民法上は男女平等なのです。問題の第一段階としてはまず婚姻時に夫婦のどちらの氏にするのかを夫婦できちんと話し合うことです。妻が夫の氏に変えるという綿々と続いてきた一連の指向に流されず、当事者である各夫婦がお互いの心内を協議することが大切だと思います。その上で夫婦のいずれもが同氏制に反対である場合には現在の民法には適いませんから、どうしても言う場合は、確かに事実婚という選択を強いられます。

 事実婚というのは私の勝手な古い思い込みでは同性カップルがほとんどだと思っていました。現在では法律婚の枠にとらわれない男女の関係を望んで選択する夫婦もいるようです。日本の法律上の夫婦の組数は約3200万組ありますが、事実婚も約60万組存在するようです。約1.8%が事実婚です。多いとも少ないとも言えない数字だと思います。しかも、事実婚を選択した夫婦のすべてが同氏制に反対しているとは限りません。事実婚のメリットには夫婦別姓が可能になるほか、氏の変更手続きがないこと、離婚の概念がないことなどがあります。一方、事実婚のデメリットとして、遺産相続が容易ではない、遺族年金が受けられない可能性がある、子供の親権を夫婦で持てない、医療行為の同意書にサインできない、などがあります。単純に比較するとメリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きいように私には感じます。叙事的なものではなく、氏に対するアイデンティティや思い入れ、家系の存続など自余の理由があるのでしょう。

 では、この夫婦の氏の問題をどのように解決できるのか具体的に考えてみます。民主主義は多数決に代表されるので、マイノリティは切り捨てればよいという考え方もありますが、多数派の意見が少数派の意見と対立しない場合はその限りではないはずです。つまり、自分は夫婦同氏制でよいと思っているが、夫婦別氏の人が存在しても構わないという多数派に属する人も多くいるのではないかということです。選択肢としては、

① 夫婦同氏制を維持し、夫または妻のいずれかの氏を称する(現状)

② 夫婦同氏制を廃し、夫婦で同氏か別氏かをそれぞれが選択する(選択制夫婦別氏制)

③ 夫婦同氏制を維持し、夫または妻は旧姓の使用を可能とするが、旧制に使用においても同氏時と同様の法的且つ社会的な責任を負う(夫婦同氏別氏並立制)

④ 夫婦同氏制を廃し、婚姻によって夫婦の氏に影響は及ばない(夫婦別氏制)

の4つが想定されると思います。③を補足すると戸籍上は夫婦同氏であっても通称として旧姓を名乗ることが法律で認められるということを意味しています。上記の①から④について戸籍制度を基準に分けると①と③は夫婦同氏制の維持を支持していると考えられ、②と④は基本的には夫婦別氏制を支持していると考えられます。

 最近のメディアによる夫婦別姓に関する世論についての報道はどのようか見てみます。

下記:Google検索結果「夫婦別姓 世論」

早稲田大学の調査でも日経新聞の夫婦別姓もしくは選択制夫婦別姓が全体の7割だと報じており圧倒的に夫婦別姓が国民に支持されているような論調のようです。しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。よく見るとこれにはカラクリあります。

下記は法務省民事局による調査結果です。

 左の青い部分が法律を改める必要がないとする比率で29.3%となっています。それ以外が法改正を望む比率だとするとメディアの報道通りで7割の人が法改正を望んでいることになります。しかし、よく見てみると右から2番目の緑の部分の24.4%の人は夫婦同氏維持した上で旧姓を通称として使用できるように法律を改正すること指示しているのであり、決して夫婦別姓を望んでいるわけではありません。前述の選択肢の③を指します。マスコミはこの緑色部分の24.4%を恰も夫婦別姓を望んでいるように報道しています。

 世論を正確に把握すると、夫婦同氏制維持を支持する者は53.7%、夫婦別氏制を支持する者は42.5%ということです。マスコミの誘導とは怖いものです。見出しの付け方で印象操作を行っているように思えます。

 私の意見はどうかと申しますと②および③のどちらかが良いと考えています。もっというと③に賛成で②は要検討ということです。ただし、現状が殊更に女性が夫婦同氏制で不利益を被っていると私は考えていません。民法上はあくまで夫婦平等な条項となっているからです。法律に変更があっても良いのではと考えたのは、日本において氏制度は近代国家となってから導入された比較的歴史が浅い制度だからです。明治以降の目覚ましい社会や風俗の変化の中で便宜的に取り入れられたのが氏制度です。日本固有の伝統や文化に起因する制度ではありません。明治政府が徴兵制度を管理するにあたり便宜的に氏を付けることを義務付けたに過ぎないのです。よって、時代や世相の変遷や変化に伴い、夫婦同氏制を変更する必要に迫られるのは当然の成り行きかもしれません。

 では、②か③かどちらが良いかということですが、まずは③に変更して旧姓の使用を法的に認めることから始めてはどうでしょうか。それでしたら現状の社会システムや国や市町村のシステム(戸籍など)を維持したままで対応できるのではないでしょうか。戸籍制度に影響が及ぶような法改正を検討する場合はマイナンバー制度の高次的活用など並行して対策を練る必要があると思います。諸外国に戸籍制度がないとしても、例えば米国にはソーシャルセキュリティーナンバー制度が存在することで社会サービスが行き届くようになっています。また、戸籍制度が異国民の流入を防ぐ一因にもなっているという説もあります。よって、②は戸籍を複雑化する要因にも成りかねませんし、軽はずみな戸籍不要論が唱えられることに繋がりかねませんので軽々に進めることは危険だと思います。

 また、この問題をジェンダーレスやジェンダーフリーの問題にすり替えるのは違うと思います。夫婦の氏に関する法改正論は男女差別や格差を解消するためではありません。人と人が出会って愛し合い結婚することは素晴らしいことですが、それによって夫婦のどちらかが改姓を強いられるとすれば、男女共同参画が進む現代社会において不都合なことも多いであろうということを慮っての意見です。あくまでも都合上を考慮して法改正が検討されても良いのではという考えです。

 ちなみに行政文書などでは既に旧姓使用が認められているケースが多いです。今後、より広く旧姓使用が認められるには法律による規定が必要になると思います。現在は公での旧姓の使用には本名に併記するという形式の使用であることも多いと思います。

 夫婦別姓が保守的な論客に国体に関わる暴論だと批判されているのを散見します。私もどちらかというと保守的な思考を持っていると思いますが、夫婦別姓と国体論とは関係性が薄いと思います。夫婦別姓反対派(保守派)は夫婦別姓によって家族制度、家制度が弱体化することは国家の不利益だと言います。しかし、氏制度より家制度の方が、よほど歴史があるし、思想や信仰があります。氏を義務付けられたのは明治政府によってです。歴史的背景は脆弱なのです。夫婦別姓によって氏での繋がりは細分化されることも予想されますが、日本の国民としての民族意識の低下にまで至るとは思えません。家制度よりもさらに現実的な繋がりとして墓制度を通じて夫婦や家族や親族の結びつきが存在します。

 また、夫婦別姓が認められると、氏を変えられることが嫌で結婚しなかった人が結婚するようになり少子化対策になるという意見を言う推進派(賛成)の論客がいます。なにを言っているか理解できません。さすがにそのような人がいるとは思えません。もしいたとしても個別案件として与えられたルール(民法)の中で個人的な解決方法を探してもらえばよいでしょう。少子化問題はもっと根深い問題です。氏の問題と安易に関連付けるべきではないと思います。

 更に夫婦別姓が家族制度を崩壊させ、後に国体意識を低下させ、果ては皇室制度の瓦解を狙っているのではないかという陰謀説のようなことを唱える人もいます。政治家やタレント、実業家の中には相当多くの外国籍からの帰化人が存在します。中には日本の歴史や愛国心を阻害するような行為や主張を繰り返したり、自虐史観を推し進めたりする人も少なからず存在します。随分と巣食われた日本の各方面での指導者層が存在するものの、依然として国民の皇室の支持率は75%以上、皇室を廃止すべきだと主張するものは7%に留まっています。象徴天皇に仰ぐ日本人の国家観は氏の細分化によって揺らぐようなものではないと私は思っています。奥ゆかしく温厚で寛容で真面目で勤勉で誠実な日本はそう易々と毒されません。

 最後に現在の政界の状況です。岸田総理は賛否を明らかにせず議論するべき課題であると言うに留まっています。ですが、岸田総理は以前、自民党内の推進派の議連の呼びかけ人の一人になっていました。自民党では推進派は稲田朋美氏や橋本聖子氏、野田聖子氏など100名ほどです。自民党議員のほとんどが中立的な立場です。反対派は高市早苗氏や片山さつき氏、丸川珠代氏、西田昌司氏ら50名ほどです。一方、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、共産党、社民党、れいわ新選組は押しなべて推進派です。つまり、自民党の中立を装い是非を明らかにしない人たちに否応なく判断する機会を岸田総理がリーダーシップをとって設ければ、実は障壁なく民法第750条は改正できる状況にあります。この問題を先送りしているのは自民党に外なりません。

下記:日テレNEWS24より

 司法では2015年と2021年に憲法違反を問われましたが二度共に夫婦同氏制は合憲であるという判断が下されています。最高裁の決定主旨の中で下記のように記されています。

 「本来、法制度の合理性に関わる国民の意識の変化や社会の変化などは、立法機関である国会が不断に目を配り、対応すべきだ。選択的夫婦別姓制度導入に関する議論の高まりについても、まずは国会で受け止めるべきだ。15年の大法廷判決の判断は、国会で立法政策に関して検討し、結論を出すことを何ら妨げるものではない。」(2021年6月23日最高裁判決の裁判官補足意見)

 選択制夫婦別姓の問題に関しては国会で論じられるべきものだということは明らかです。民意を反映するには国会での採択においてしかないのです。先送りして結論が変わるような性質の問題ではないと思います。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:法務省、民事に関する法令の立案関係

   https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html