番外編:「先生ありがとう」
私の主治医は、心に寄り添ってくれます。
私の主治医は、不安を軽くしてくれます。
そんなこともよく聞きますが、正直なところ、私の主治医はそうじゃないです。
…と書くと、怖くて冷たい先生像が頭に浮かぶかもしれません。確かに最初、私自身も「この人とうまくやっていける自信がない」と思いました。
尾田平先生は、「つらかったね、苦しかったね」とか「きっと良くなるよ」と、弱っている心にどこまでも寄り添ったり、光や希望を与えてくれたりするようなタイプの先生ではありません。
しかし、いまでは先生のことをこの上なく頼もしい存在だと感じ、信頼しています。そのように確信するきっかけになったのは、先生の「私は何よりも患者の命を優先する」という一言でした。
自然の力の前に人はどうにもならないことを悟り、精神論よりも実証を重んじ、ただ淡々と、粛々と、するべきことをする。なぐさめの言葉だけでは「命」を助けることはできないからです。
ほんとうにそのとおりだと思います。
そんな先生との関係を4コママンガにしたのですが、つい、デフォルメしてしまいました(笑)。
先生への尊敬、愛情表現の裏返しだと思っていただけるとうれしいです。
もちろん先生のことを信じているのですが、言い方にのまれて、それ以上は何も言えなくなっちゃうんですよね…。
「そういう不安はみんなも同じだよ」と、サラッと言ってほしいだけなのですが(笑)。
このときのことを夫や家族から聞きました。先生は疲労困憊していたはずですが、タッパー片手にすごく丁寧に(そして少し誇らしげに)患部や手術のことを説明してくれたそうです。
そのタッパーに入った細胞を先生が「見る?」と言った時、夫は間髪入れずに「先生、もう見えてますやん」と思わずツッコんだそうです。
実は、先生がチラッとバルーンを見たとき、何か照れくさそうな表情がよぎったのを見逃しませんでした!
「気持ちはカバーできないけど、事実のみを言う」というスタイルがこんなところにも…。尾田平先生らしいな、と思いました。
でも小児科は向いていないかも…。
先生としては「信じてついてきなさい」ということだったのだと思いますが、やっぱりもう少し解説がほしいし、やわらかい言い方をしてくれてもいいのにな~、なんて思ってしまう杏莉です。
私、ちょっとしたことですぐ不安になるんですよね。お忙しい尾田平先生が神様のようにすべてを完璧に覚えているとは思っていませんが…せめて、聞こえないところで確認するとかさ…。