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Extra8:呼び方

2021.10.10 08:30

家族。

それの価値観や意味合いはそれぞれだが、基本的に血の繋がった者同士で意味を成す言葉だ。

そしてそれは永遠の絆を結んだ者同士でも意味を成す。

血の繋がらないパートナーは、血の繋がったパートナーに兄弟がいると基本的に義兄弟として呼びあったりするだろう。

だが目の前でアップルパイを頬張ってる男…アリスは未だにパートナーの姉であるガウラを義姉と呼んだことはなかった。



「お前はいつになったら、私を義姉さんと呼んでくれるんだい?」



ふと投げかけた言葉に不意をつかれたようで、アリスは腑抜けた声で反応した。



─────



「ヘリオの呼び方はパートナーになって以降変わったのに、私だけ変わらないのは何でだと思ってね」



アリスの反応が面白かったのか、にやりとしながら応えるガウラ。

ヘリオはこのガウラの表情を何度も見ている。

からかっている。

苦笑しながらアリスの方を見てどう答えるのか様子を伺った。



「いや、なんか今更感が凄くて呼べなかったんですけど…、呼んで良いんですか?」



少し恥ずかしそうにそう言うアリス。



「あぁ、呼べ呼べ」



それを聞いて堂々とした表情でいるガウラ。



「じ、じゃぁ…。

ね…義姉さん…」



顔真っ赤で恥ずかしがるアリスを見て、釣られて顔を赤くするガウラ。

ヘリオは若干笑っている。



「お前っ…!呼ぶならもっと堂々と呼びなっ!

こっちまで照れくさくなるだろうっ!?」

「ええーっ!?

だ、だって、改まって呼ぶと…なんか照れくさくてっ!!」

「……くくっ」

「ヘリオ!お前は何笑ってんだいっ!」

「っつ!?」



くつくつと笑っていたヘリオにデコピンを食らわせるガウラ。



「ガ…ッ、義姉さんっ!

ヘリオに八つ当たりしないでくださいっ!!」

「八つ当たりなもんか!!

笑ってるこいつが悪いっ!!」



ヘリオの赤くなった額にケアルをかけながらアリスはギャーギャー騒ぎ始める。

それにまたも釣られて騒ぐガウラ。

ヘリオは2人を宥めながら残りの午後を過ごした。



一見なんの変哲もない日常だが、家族としての絆はまた少し強くなった気がした。