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この絵本1冊の中に人生のすべてが描かれています。 2016.05.24

2017.04.28 11:49

いいことなんかひとつもない……

そんな風に自分の人生を悲観してはいませんか?

人生そんなに悪い事ばかりではありません。

そうとわかっていても、一度悲観モードに入ってしまうと、何もかも悪く思えてきてしまうということもありますよね。

そんなときには、この絵本の扉を開いてみてはいかがでしょうか?


出典筆者所有書籍撮影

Copyright(C)2012 by Jeff Mack


『でもだいじょうぶ!』

帯には、「ポジティブなうさぎと、ネガティブなねずみとのドタバタ劇」と記されています。

中を読み進めていくと、何があっても「でもだいじょうぶ!」と言ううさぎ。

その反対に何があっても悪い事ばかり自分に巡ってくると悲しい気持ちになっていくねずみ。そんな様子を可愛らしい絵と短い言葉の繰り返しで描かれています。

最後は温かいシーンで終わるのですが、思わずよかったと涙が出そうになります。

とてもシンプルだけど深い絵本なのです。

実は、この本の存在を知ったのは、奈良橋陽子さんのおかげでした。奈良橋陽子さんは、演出家・映画監督・作詞家・キャスティングディレクターと日本と海外を行き来しながら幅広いご活躍をされています。別件でインタビューをさせていただいているときに、その朝にあった可愛らしい出来事を聞かせてくださったのです。


出典 http://www.doclasse.com

ドゥクラッセ


それは、こんなお話です……


「幼稚園へ行きたくない」というお孫さん。

もうすぐ出かけなくてはいけない時間なのに、その場所から動こうとしません。

そこで奈良橋さんは、お孫さんが大好きな絵本を読み聞かせてあげました。

さっきまで泣きそうだった顔がすっかりニコニコ顔のお孫さん。

そしてその絵本のお話の続きのように奈良橋さんとお孫さんは、こんなやりとりをし始めました。


「これで幼稚園へ行けるね!」

「グッド!」

「あっカバンがない……」

「バッド……」

「ほらあった!」

「グッド!」

「もうこんな時間!バスに乗れるかな……」

「バッド……」

「大丈夫!間に合った!」

「グッド!」

「じゃあ寂しいけど、いってらっしゃい!」

「バッド……」

「帰りを待っているよ!」

「グッド!!」


そしてお孫さんはご機嫌なままで幼稚園へ行ったのだそうです。

お孫さんの笑顔を見れた奈良橋さんも嬉しくて「グッド!」な一日になったと笑っていました。


このお話を聞いているだけでも、二人の可愛らしいやりとりに心が打たれました。


これは、人生そのもので、悪いこともあればいいこともあって、その繰り返しだというシンプルなことが描かれている絵本なのです。そして、もう一つ大切なこと、いいときも悪いときもそれを分かち合う友や愛する人がいる幸せがあるのだということも。


奈良橋さんは大きく頷きながら言いました。

「そう、まさにこれはお芝居そのものなんですよ。アップスアカデミーの講師たちにもこの本を読んで聞かせたことがあるんですよ」


アップスアカデミーは、奈良橋さんが代表を務める俳優養成所。小手先の技術ではなく、お芝居の本質をこうして絵本でも教える側に伝えているのは、とても素敵だと思いました。


最初に紹介した『でもだいじょうぶ!』は、実は日本語版で、もともとは英語で書かれた絵本なのです。奈良橋さんは、海外へ行ったときには時間の許す限り書店へ立ち寄り、いい本との出会いを求めているのだそうです。そんなときに見つけた1冊が英語版『GOOD NEWS BAD NEWS』だったのです。


出典筆者所有書籍撮影

Copyright(C)2012 by Jeff Mack


私はこの絵本を実際に読みたくてインターネットで探し注文をしました。

日本語版はすぐに入手することができたのですが、英語版は海外からの取り寄せとなり数週間ほど時間がかかりました。

というわけで最初に読んだのが日本語版の『でもだいじょうぶ!』でした。

シンプルだけど、山あり谷ありのストーリー。うさぎとねずみの表情に、ラストは思わず涙を流してしまいました。

そして先日ようやく届いた英語版の『GOOD NEWS BAD NEWS』を読みました。奈良橋さんがお孫さんに読んで聞かせたのは英語版の方ですね。

日本語版では、少し状況がわかるセリフになっていますが、英語版はもっとシンプルで、最初から最後まで「GOOD NEWS」と「BAD NEWS」の繰り返しです。本の大きさも創りもイラストも全ておんなじですが、私には、この英語版の方が心にグッと入ってきました。

英語版を読んでみて、奈良橋さんの

「まさにこれはお芝居の基本で、人生そのものですね」

という言葉がぴったりはまりました。

たった二つの「いい」と「悪い」という状況と言葉が繰り返されて、日々が繋がって一つの人生となります。そのシンプルな人生の中に、愛や感動が生まれます。


人生とは一体何だろう……、悪いことばかりでやりきれない……などと、頭を悩ませている大人にもぜひ読んでいただきたい絵本です。

奈良橋さんのように、小さなお子さんを元気づけながらも、何気なく人生を伝えることもできます。

さらには、親と子、大人と子供、大人同士であっても、この絵本を一緒に読むことで、シンプルな世界を共有しラストは感動しあえる喜びの瞬間も味わえるのではないかと思います。


役者さんはもちろんのこと、誰にとっても共感のできる素晴らしい1冊です。こんな素敵な絵本を可愛いエピソードを交えて紹介してくださった奈良橋陽子さんへ心からの感謝を申し上げます。


出典 http://www.doclasse.com

ドゥクラッセ


◆絵本について

日本語版

『でもだいじょうぶ!』

 作・絵 ジェフ・マック

 訳 石津ちひろ


英語版

『GOOD NEWS BAD NEWS』

 Copyright(C)2012 by Jeff Mack


◆奈良橋陽子さん プロフィール

演出家・映画監督・作詞家・キャスティングディレクター

アップスアカデミー芸術監督

ロックグループ「ゴダイゴ」の一連のヒット曲の作詞を手がける。

ニューヨークのネイバーフッド・プレイハウスで演技を学び、1980年ミュージカル「HAIR」の演出で本格的な演出業を開始する。

86年よりアップスアカデミーの前身「UPSアクティング・セミナー」を開設。演出した舞台「THE WINDS OF GOD」は国内のみならず、ロサンゼルスやニューヨークでも上演。

現在はキャスティングディレクターとしても活躍しており、スティーブン・スピルバーグ監督作「太陽の帝国」を皮切りに主な作品では「ラストサムライ」、「SAYURI」、「バベル」、そして「ウルヴァリン:SAMURAI」、「パシフィック・リム」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」での日本人キャスティング、アンジェリーナ・ジョリー監督「不屈の男 アンブロークン」では、日本人のキャスティングとアクティングコーチを務めた。また、NHK朝ドラ「マッサン」のアメリカキャスティングに協力。全米からシャーロット・ケイト・フォックスを発掘しNHKに推薦した。

公式ブログ http://gree.jp/narahashi_yoko

アップスアカデミー http://www.upsnews.co.jp/

手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~ http://www.teotsunaidekaerouyo.com/



記事:あなたの物語応援ライター ささきまりこ