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この家 その店 あの日の昼餉 2景

2015.10.08 09:41

いつの日か、手の届かぬものとなるだろか。

江戸前と、庶民に馴染んだあの味よ。

鰻めし、おいしや惜しやと噛みしめる。

今や、夏の風物詩となっている鰻。

暑さが増すと宣伝も増え、気付くと「うな丼」に手が伸びる。


鰻のかば焼きは、歌人の茂吉さんも大好物だったそう。

戦時中にも鰻の缶詰を蓄え、惜しみ惜しみ食べていたという。


美味さのみならず、蒲焼作りの技だって見事。

後世に残したいものだ。

となれば、卵から養う技の成るように願うばかりだ。


ちなみに、蒲焼を飯に乗せる鰻飯は、江戸の文化期に始まったとのこと。

蒲焼は前からあったが、江戸時代には工夫が加えられ、格段に美味くなった。


江戸時代の鰻は、立ち食いなら一串16文、店でなら一皿150~200文だったらしい。

裏長屋の店賃は、月300文が相場だというから、店の鰻は一皿でひと月の家賃半分ほどになる。

庶民にとって立ち食いなら気楽だが、店に行くのはちょいと覚悟がいるか。


鰻は庶民にとって、たまに奮発して食べるご馳走といった感覚なのは、江戸も今も変わらぬのかもしれない。

来年も、夏の土用の丑の日には、うなぎうなぎと賑わうか。

蒲焼の香ばしさは、どれくらい広がるだろか。


参考:日本銀行貨幣博物館  

   深川江戸資料館  

   大江戸ものしり図鑑(主婦と生活社)

   一日江戸人(新潮文庫)  

   母の影(新潮文庫)