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ZIPANG-5 TOKIO 2020 色彩デザイン実践講座 事例2 世界デザイン博覧会景観演出計画 ~カラフルデザイン・色パレットの勧め~【寄稿文】林 英光

2021.10.11 15:25


1: 世界デザイン博覧会景観演出計画

WORLD DESIGN XPO 89 はデザイン都市を目指す名古屋の白鳥会場、名古屋城会場、名古屋港会場の3会場で開催。未来の都市の景観演出の実験の場とした。まずこれは実践例の白鳥会場の色彩構成パレットである。


色彩パレットの会場全体との応用関連がハッキリと分かる 


全体を100%にして、色彩のテーマや機能でイメージを面積で表し、客観視することが出来る。そして関係者皆にも理解と共有意識を得ることが出来る。これは建築やインテリアやモノでも、個と全体との関係、取り巻く環境はデザインを進める不可欠条件である。


色彩構成パレットによる実践例 白鳥会場夜景


景観の演出計画は、場所性・コンセプト・デザインコード、そして色彩を含む音、香り、サイン、看板、バナー、照明、ストリートファニチャー建築物などが景観演出計画の要素にある。この複雑性を色彩に準じて他の要素も整理コントロール出来る。


イベントデザイン・色彩空間を構成するには、対象となる空間やモノの景観全体を「色パレット」で一目瞭然に整理しよう。  


「白鳥会場」

テーマカラーは日本の「赤」、主カラーはハイテクを表す「白」、それを支える「5色のグラデーション」形は中央を表すマルである。


中央の白鳥会場はヤマトタケルの命が白鳥となって飛び去った悲しい物語の断夫山古墳や、三種の神器草薙剣が祀られている熱田神宮に接し、古代都市伝説と新しき未来・ハイテクの大空間である。


まず取り巻く周辺地域景観をよく見渡し理解し、全体景観の支配的となるドミナンスをイメージし、敷地の中の方針を練る。


敷地全体を100として色彩の割合を決める。ドミナンスカラーとなるベースカラーは面積を広く、テーマカラーは色面積の1/20以下に抑える。問題となる参加企業のコーポレートカラーも極力少ない面積にすると品良く効果も上がるとし、そして細部になる配合色は、ハイテクイメージのグラデーションが似合うとした。


中央広場俯瞰画像
ハイテクイメージとは言え和の伝統色彩を表現 企業パビリオンは大分不満


取り巻く環境構成への色彩適用


「名古屋城会場」

形の四角とテーマカラーの緑を全体が引き立てあっている


景観演出は夜間がとても大切である 灯りも香りも音も当然色彩も


実は三会場とも周辺アクセス道路環境にもバナーを配置し高揚感を演出した


日本は城郭・神社仏閣・文化財や古き良き街並み、建築物の周囲の電柱・看板・建築・植栽も含めその他を整理整頓し美しき文明国にしよう。そうすれば国全体が徐々に江戸時代のように、浮世絵の世界のように、人の心も穏やかになり、いじめも犯罪も子供の自殺も無くなってくるだろう。

環境が人を育てる。

爆撃で炎上消失した城郭国宝第一号指定の名古屋城復元は、今から周辺環境をもそれらしく調和をさせよう。


規模は違うが市民の瓦一枚運動から復元した、明智光秀の亀山城のように優しく城の姿が蘇り、市民の心の拠り所となるだろう。


「名古屋港会場」

海の爽やかさを表現…世界デザイン博覧会 名古屋港会場の通路に立つ筆者


世界への展開、発展と船や波やセールから形は「三角」、色彩はテーマカラー「ネービーブルー」と「白と無彩色」、「変化する海の色」、そして「希望の虹の色」とした。


今や名古屋港は大型船舶寄港日本一で、優しい生き物スナメリも何千頭もいる伊勢湾だが、商工業港湾であっても景観もさらに美しく大切に進めよう。

色彩基準表とテーマカラーと三角形の明快な応用事例


三角形と虹と海の色であるが 極力テーマカラーのネイビーブルーは少なく効果的に


日本の都市環境は日本人が美しく見える色彩環境にしたい。それには風土と伝統に磨かれた色彩の活用方法をもっと真剣に考慮し、無秩序な現状を政治家も国民も恥と思い、景観を大切にすればエコノミックアニマルを卒業し文明国になるだろう。


1989年名古屋にて開催された「世界デザイン博覧会」から32年……会場となった、名古屋城・白鳥(しろとり)・名古屋港の現在(いま)を見てみよう!!!


名古屋城会場の現在!

本格的木造建築へと建て替えを待つ名古屋城天守閣と、名古屋城本丸御殿


白鳥会場の現在!

名古屋国際会議場と市民の癒し空間「和風・白鳥庭園」。堀川に架かる白い橋を渡ると愛知県最大規模の断夫山古墳へと続き、さらに南へ向かうと三種の神器の1つ、「草薙剣(くさなぎのつるぎ、天叢雲剣)」を祀る熱田の森「熱田神宮」へ・・・


名古屋港会場の現在!

子供たちに人気のスポットへと大変身!名古屋港水族館や大観覧車、レゴランドなども…
さらに、中部地方最大規模の国際展示場では一年を通じイベントが行われている…


徳川家康に学ぶ未来の都市計画

デザイン博覧会の3会場は、徳川家康の名古屋城建設と町割の基本をつくった運河である堀川で繋がっている。太平洋から伊勢湾を、そして堀川経て、諸大名が城建設の物資を運び、また城の南側の町割も戦国の後の世の商業の中心になることを考え、水運での商業の発展にも尽くしたと考える。

江戸も日光東照宮も天海大僧正となった明智光秀に都市計画を委ねたという説もあり、家康という武将は大きな視点で未来を考えられる総合デザインプロデューサーでもあったことが、この三会場を見ただけで、260年の平和を見通したその片隣に触れることが出来る。


名古屋市内見どころ(白鳥庭園、名古屋市庁舎ほか多数…)

ZIPANG TOKIO 2020「(一社)日本色彩学会 平成29年度研究会《NAGOYA》大会及びLOJ&LC 大会前日(11月24日・金)プレ企画(見学・懇親会)のご案内(第一報)」

https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3213274/


巻末に徳川家康が、名古屋城の鎮護として定めた尾張四観音掲載。

ZIPANG-4 TOKIO 2020 令和二年 七福即生 八方円満「大和七福八宝巡り」

https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7519569/



読者代表コメント

とても緻密なレベルの高い 環境色彩構成計画の手法の一端に触れさせて頂きました。
たいへん勉強させて頂きました。

デザイン博各会場の色パレットが整理されつつも明快で力強いと感じました。
表面的な色並べではなく日本の風土や文化・歴史に根ざした色彩計画です。

風土の環境(景観)をないがしろにする国の未来は・・・、

ドキッとする林 英光氏のお言葉です。参考にさせて頂きながら、
風土に合ったデザインを考え、少しずつでも実践していけたらと思います。

タカセドローイングアトリエ
たかせデザイン  高瀬俊輔   



テーマとゾーンによる色彩計画の組み立て方

2:「フェスティバルゲート」プロジェクト

雑多な都市環境の大阪市交通局のバスターミナルのプロジェクト。隣は通天閣と西成地区に挟まれた、とんでもいない処に立体的遊園施設と世界のお風呂である。テーマコンセプト「地中海世界」の色彩環境を担当した。


先ず思い浮かんだ発想イメージは、海底に沈んだアトランティス大陸の残骸と言われる断崖絶壁のサントリーニ島で、地中海クルーズ船上から見上げた真っ白な美しき街並の記憶が甦った。


「紫外線からマグマまで 天空から海と地下までの色彩」である。このような発想が色彩に取り組むにはとても大切であり、説得力を発揮する。

日経アーキテクチャー掲載の表紙から ジェットコースターが基幹道路まではみ出すのは前代未聞の大阪らしさ


当時ロスオリンピックのデザイナーたちはバリ島の色に大きく影響され、アメリカのモールのデザインもその延長であり、その当時の商業建築の最先端を現地で視察した感動の色が下の表左上にある。実際は少し色っぽい肌色と複雑な幸せ感のグリーンの2色が強く印象に残った。その影響も下の色彩構成にある。


4つの大まかなゾーン設定と、左の薄緑の縦ラインが、上から外壁、次が内壁、その次はストリートファニチャー、そしてサイン、最後がバナーの色に設定した。全体も使い方も分かり易いと自負している。


西洋人でも思いつかないだろう地底から天空までの古代のイメージ世界の色彩


動的な造形と色彩とした


地中海を制覇した古代のフェニキアの軍船が橋になった


色彩に表現する元の設計デザイン担当の事務所では、複雑怪奇な空間の図面もパースも色彩表現も手描きであったのには流石に畏敬の思いがあった。


デザイン・色彩 環境づくりの余話

こんな処に通り抜け自由なあそび空間を作ったら、ホームレスの人達が寝転んだり悪さをしたらどうする、などと懸念があったが、出来上がると、なんと、小綺麗にした彼らが率先して案内するようなことまでになった。この事実に環境デザインの最も重要な役割を再確認した思いであった。


日本国中の大半が、電柱看板その他バックヤードに隠すのが常識の、プロパン・エアコンの吹き出し、プラスチックのプランターなどが雑然と溢れ、世界から見たらスラムである。国民も政府も経済優先で、混濁した現状を真剣に改善しようともしないのは、明治以降とさらに敗戦後に心の拠り所を失った結果である。


これでは何のための教育か、おしゃれか、幸せな人生か。自分の専門と楽しく生きるのに精一杯で、全体のことなど考えることも、政治家も研究者も日本らしい独自のデザイン都市計画もしない不思議の国になった。


また世界の知見は日本が2050年には世界で最も悲惨な国になると警告している。現状の我が国を見るまでもない事実だろう。先日の報道で小中高の子供たちのいじめ件数は毎年60万件を超えて増加し続けているという。 太平洋戦争の戦勝連合国の某リーダー曰く「環境が人をつくる」と。



前号の復習

ZIPANG-5 TOKIO 2020
色彩デザイン実践講座 事例1 JR岐阜駅前再開発 森羅万象との融和【寄稿文】林 英光

https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/21261952



次回は風土と伝統を活かし、地味で大切なインフラストラクチャーの色彩デザインの取り組み事例ー3


【寄稿文】林 英光



環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授
東京藝術大学卒業



協力(敬称略)

名古屋市役所 〒460-8508 愛知県名古屋市中区三の丸三丁目1番1号 電話:052-961-1111



※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



名古屋関連 アーカイブ リンク記事ご覧ください。


名古屋城本丸御殿


ZIPANG TOKIO 2020「千年先へ、語り継ぐために。ものづくりの技と知恵を結集!名古屋城本丸御殿完成 6月8日(金)~ 公開」

https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/4312637/ 


徳川美術館 源氏物語絵巻 橋姫


王朝の華

国宝「源氏物語絵巻」は徳川美術館を代表する収蔵品のひとつですが、原本は保存のため、年間の展示日数はきわめて短期間に制限しています。 そこで、多少なりとも来館される方々のご期待にそえるよう、名品コレクション展示室(第6展示室)を設け、映像システム、複製(レプリカ)を中心にご鑑賞になれるようにしています。


ZIPANG TOKIO 2020「 最高の魅力『日本文化伝統の薫り』徳川御三家筆頭尾張徳川家の徳川美術館 」

https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/2570027/


徳川美術館 尾張徳川家の雛まつり


尾張名古屋の春 徳川美術館 外観


ZIPANG TOKIO 2020「特別展 尾張徳川家の雛まつり と 徳川美術館の建築」

https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3742766/


熱田神宮の森


安藤広重 東海道五拾三次之内 宮 熱田神事


ZIPANG TOKIO 2020
「初詣 神と人 千古の杜に仰ぎみる悠遠のとき 熱田神宮」

https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/1840360/


ZIPANG TOKIO 2020「日本遺産 伊賀忍者の史跡 そのⅠ (参の巻)」

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ZIPANG-5 TOKIO 2020「日本のたてもの ―自然素材を活かす伝統の技と知恵」の開催について【文化庁】

https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/14157255 


ZIPANG-5 TOKIO 2020 工匠と近代化―大工技術の継承と展開―【文化庁】

https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/14244322/


ZIPANG TOKIO 2020「世界記憶遺産認定  朝鮮通信使 日韓友好の共同登録!」

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ZIPANG-4 TOKIO 2020 (VOL-4)

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ZIPANG-2 TOKIO 2020(VOL-2)

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