映画鑑賞「家族の肖像」
2021.10.11 05:35
『家族の肖像』(1974)
写真の無かった時代、金持ち達は画家に家族が幸せに佇む肖像画(カンヴァセイション・ピース)を描かせていたそうで
教授はそうした絵を集めるコレクターでした
家政婦に家の事は任せて、趣味と学問に勤しむ独り暮らしに慣れきっていた彼でしたが
この日、画商たちと同じ時刻に訪ねて来たビアンカという婦人の図々しさと粘り腰に
教授は空けてある階上の屋根裏部屋に一人の男性が住む事に承諾してしまいます
コンラッドと名乗る青年はビアンカの若い恋人だろうと見当はつくものの
部屋を貸す以外の関わりを避けて、教授は多くを問うつもりはありませんでした
けれど、一人と付き合いが始まると
不思議に関わりは膨らんで
ビアンカの娘と婚約者、そしてコンラッドの周りにいる(誰か)も感じて
教授の身辺から静寂と安寧が失われ始めてゆくのでした
1978年の晩秋、突如起きた(ビスコンティ)ブームの発火点が本作です
公開前、渋谷のプレイガイドで本作の前売り券に魅了された私は同行のオジサンを説得して購入
11月下旬の公開日翌日の日曜日に見に行き
感じました
(押さえつけられるような感覚で鑑賞する映画というものもあるのだな)と
芸術を感じ、芝居を感じ、打ち震える胸の高鳴りを感じた2時間は
私を映画ファンとして仲間入りをさせてくれた
ホンモノを与えてくれる出会いでした
美しき母の笑み
悲しき妻の涙
自分にとっての家族の肖像をいつしか求めてしまった老いを哀しみ愛する
私、生涯の一本
それが
「家族の肖像」です