お客さまの声を載せないわけ
よく お客さまの声的なものを HPやブログに掲載した方がいいですよ とアドバイスを頂くことがあります。
でも それは毎度 お断りしています。
なぜかというと セッションの時間のことは 私とクライアントさんが知っていればいいことだから。
敢えて ここやHPに私が書くものではない というのが理由です。
お互いが知っていればいいし 誰かが知っていてくれれば必要な人には伝わるとも思うので。
これは 私の きつねのメディスンの使い方です。
なので 今日は きつねとクマの親子のお話を紹介しますね。
きつねのメディスンは 観察者 風景の一部になる です。
クマの親子ときつねのはなし
今日も森は 朝から弱い雨が降っています。
高い木の枝で 鳥たちが羽を休めておっしゃべりをしています。
ねえ? この前ね きつねが狩りを失敗してたのよ。
あの子 ホントに要領悪いよね。
大きく張り出した枝の茂みで きつねは自分のうわさ話を黙って聞いていました。
鳥たちに抗議することもなく 逃げ出すでもなく ただ黙って聞いていました。
雨が上がると 鳥たちはまた飛び立っていきました。
静かになった森のなかで きつねは考えています。
ぼくは要領がよくないって あの子たちには見えてるんだなあ。
そうじゃない子たちもいるのに なんだかおもしろい!
きつねはいつも 黙って森の様子を見ています。
うわさ話の仲間に入ることもなく 誰かに干渉することもなく ただ見ているだけ。
でも 誰もきつねに見られていることには 気づいていませんでした。
森のことなら何でも知っていても きつねは誰かに話すことはありません。
ただ 知っている それだけです。
きつね自身も知ったことが 何の役に立つのかわかりませんでした。
ある月のない夜 誰にも会わない静かな夜更けに きつねは散歩をしています。
カラスの巣がある木の下を通って うさぎの家の前を通って 遠くにワシの巣がある山を眺めて クマの親子の巣穴を通り過ぎて サケのいる川で水を飲もうと脚を止めました。
川岸までくると 誰かが しくしく泣いている声が聞こえます。
え? こんな時間に誰だろう? 声がする方に きつねは歩いて行きました。
そこには まだ小さい子熊が ひとりで座って泣いています。
きみは何をしているの? お母さんは? きつねは声をかけました。
子熊は急に声をかけられたことと 初めて見るきつねにおびえて答えられません。
怖がることないさ。ぼくは きみを食べようと思ってはいないよ。
ただ 水を飲みに川まで来ただけさ。
クマはこんな時間に出歩かないだろ? お母さんはどうしたの?
安心した子熊は やっと声を出しました。
あのね お母さんと おにいちゃんと一緒に寝てたの。
そしたら お外から出ておいてって 誰かが呼んだの。
お母さんを起こそうとしたら ダメだよ ひとりでおいでって。
それでね お外にでたら こっちだよ って ここまで呼ばれてきたの。
子熊は泣きながら 一生懸命に説明してくれました。
きつねは うんうん 丁寧に子熊の話を聞いてあげました。
子熊が話し終わると きつねはこんな話をしてくれました。
それはね 夜の世界に住んでる魔物だよ。月のない夜しか動けないのさ。
そうやって いたずらして みんなを困らせるやつなんだ。
きみがまだ起きてたことに気づいて いたずらされたのさ。
子熊は怯えて また泣いてしまいました。
ああ ごめんよ。怖がらせちゃったね。
でも だいじょうぶさ。ぼくが川にくるのが分かってて きみをここまで連れてきただけさ。 きみのお母さんを困らせようとしたんだよ。
きみのお母さんは 森のみんなに慕われてるだろ?
それが悔しいのさ。きみの命を取ってしまうことはできないよ。
じゃあ おうちまで送っていくよ。お母さんが気づく前にね。
そういうと 子熊をなだめながら クマの巣穴にむかいます。
遠くに巣穴が見えてくると 大きな影と小さな影が佇んでいます。
お母さんとおにいちゃんだ! そういうと子熊は元気よく走りだしました。
きつねは その姿を見ると もう大丈夫だな。さあ 散歩の続きだ。
そう つぶやいてクマの巣穴に背中を向けました。
きつねの背中に 優しい声が響きます。
きつねくん ちょっと待って。
お母さんが きつねを呼び止めたのでした。
きつねは歩くのを止めて お母さんの方を振り返ります。
クマの一家が近づいてきました。
きつねは 身体をクマたちの方に向けて座ります。
やあ クマのお母さん。こんばんは。
なんでもないように お母さんに挨拶しました。
お母さんは きつねに丁寧にお礼を言いました。
子どもを助けてくれて 本当にありがとうございました。
でも どうして黙って帰ってしまうの? もし 私が誤解していたら あなたが子どもを連れだした悪者になってしまうじゃない?
きつねは その子が本当のことを知ってるし あなたは子どもを信じてるでしょ?
だから何も心配なんてしてないさ。
そういって笑います。
いつも ぼくは森の中を黙って見てるだけだけど 初めてそれが役に立って嬉しいよ。
子熊は きつねに駆け寄ると 改めてお礼を言いました。
きつねのおにいさん 助けてくれて ありがとう。
ぼくを信じてくれて ありがとう。
お母さんを知っていてくれて ありがとう。
きつねは こちらこそ。 誰かと話すのは久しぶりだし かわいい友だちができて
今日はいい夜だったよ。
そういうと また散歩に戻っていきました。