(ニュースアーカイブ) 外国人との子どもら対象に永住権付与を検討、法務人権省と国会が審議。(2011年01月15日)
父系血統主義から両系主義に変わり、父親が外国人の子どもでも二十一歳まで二重国籍を認めると改定した新国籍法(二〇〇六年八月施行)を受け、法務人権省と国会は、入管法(一九九二年)の十九年ぶりの改正審議を本格化させている。改正案では、二十一歳で外国籍を選択した場合に永住権を付与することなどを検討。国籍法と同様、グローバル化に対応するとともに、外国人やその子どもが置かれた立場に配慮した法改革を目指している。
インドネシアは長年父系血統主義を採用し、インドネシアで出生した子どもは父親の国籍となったが、二〇〇六年八月に施行された新国籍法では、外国人男性と結婚するインドネシア人女性やその子どもへの差別を撤廃し、留保期間を含め、子どもは実質二十一歳までの二重国籍を認められた。
しかし、子どもがインドネシア国籍を取得しない場合、二十一歳以降は父親の国籍となる。このため改正入管法案では、労働法などで専門技術を持つ外国人労働者に限定して労働許可と滞在許可をセットで発行する現行制度を抜本的に改変。インドネシアで生まれた子どもの立場を尊重し、永住権(永久滞在許可、KITAP)を付与する条項案が盛り込まれた。
政府が国会に提出した改正案によると、永住権が付与されるのは(1)外国人の父親とインドネシア人の母親を持ち、インドネシアで生まれた子ども(2)永住権を持つ外国人の父親か母親を持ち、インドネシアで生まれた子ども(3)暫定滞在許可証(KITAS)保持者で、永住権取得の許可を得た外国人―と規定された。
対象となる子どもや外国人の保証人の説明として、「入国や滞在、労働や就学、家族との居住といったインドネシア国内での活動を保証する個人もしくは企業」とし、現在、一定の条件を満たした外国人配偶者などに発行している永住権の取得条件を大幅に緩和。
KITAS発行条件として、外国人を専門職の労働者と位置付け、保証人を企業に限定していた現行規定と比べても、根本的に見直した条項案となっている。
法務人権省は法案について、一九九二年以来、十九年ぶりとなる入管法の改正は、インドネシアがすべての分野で変革を遂げ、人権を尊重し、全国民の平等を実現する必要性が強まったからだと説明。またグローバル時代を迎え、産業、貿易、運輸、労働力、人的交流や物流の円滑化を図り、国際社会との関係を強化するためには、投資家への入管手続きの簡素化、滞在許可の条件の緩和化などが不可欠になっているとの認識を示している。
同法案を審議している国会第三委員会作業部会のファフリ・ハムザ代表(福祉正義党)は「人権を尊重した法案を策定している。この法案は、われわれインドネシア人が国際社会に開かれていくためのステップになる」と語った。
ガユス・ランブウン同委員(闘争民主党)は「外国人が就労しているかどうかで永住権付与について判断を下すのは適切でない」と主張。一方、全ての外国人が良心的というわけでなく、偽装結婚などのリスクもあるため、安易に付与するのは危険だと警告した。
■市民団体と協議 市民の声を法案に反映させるため、国会第三委はこのほど市民団体との討論会を開催。外国人と結婚したインドネシア人の市民団体、プランギ・アンタル・バンサ連盟(APAB)とインドネシア国際結婚市民(PerCA)は法案に対する提案書を提出した。
提案書では、政府はこれまで外国人を専門職の労働力とみなすだけで、インドネシア人と婚姻関係を持ったり、血縁関係のある外国人の人権には配慮してこなかったと批判。ビジネスや投資を目的にした入国者と、インドネシア人と結婚した外国人の滞在許可を明確に区別すべきと主張した。
現状を変えるためには、外国人の滞在許可やその発行条件は労働法だけでなく、入管法で明確に規定し、人権を尊重した上で法的保護の体制を確立すべきと訴えた。
例として二重国籍の子どもを挙げ、国籍選択が迫られる二十一歳で外国籍を取得し、外国の大学に進学した後、インドネシアへ戻ろうとしても、身元を引き受ける企業が保証人となり、労働許可を取得しなければ滞在許可も得られないと強調。企業に限定した保証人制度を撤廃し、インドネシア人の家族が保証人となり、永住権を付与することを認めなければ、人権は保護できないと訴えている。
(2011年01月15日付 じゃかるた新聞)